「あの日…何があったんですか…?」
クルルは沈黙の中で口を開いた。
問いかけられてもグルは黙って足元を見ている。
またクルルが何かしら言おうと思ったとき
グルが重い口を開いた。
「吉木とは知り合いだ。」
「俺は警察に名が知れているが
逆にサーフィー関係でテロ組織なんかとも仲が良かった。」
「けど、人を殺めてるなんて知らなかったんだ。
大体、事件の隠蔽なんかに加担させられた
俺の気持ちを考えてはくれないか。…辛いより怖いだろう。」
足元からクルルの方をじっと見つめると、こう続けた。
「お前らは罪を犯したことがあるか?」
この問いかけにクルルとサーフィーは
顔を合わせて悩んだ。腕組みをして過去のことを
思い出していると、ある一つの結論が出る。
「はい。犯しましたよ。
…それはそれは沢山の罪を。」
「けどそれは俺たち全員じゃないでしょうか?
グルさん、貴方も俺もサーフィーでさえも
星の数ほど犯しているはずですよ。」
クルルの結論にグルは表情を緩ませた。
「あぁ…そうだな。これは紛れもない正論だ。
俺は何度も罪を犯しているし、
人類の殆どが罪を犯している。」
「なら、依頼者の母や父が失踪したのは何による罪だ。
坂本刑事の隠蔽の理由は何だと思う?」
サーフィーらはこの質問に悩ませられた。
まず、坂本刑事の根はとても良い人で
事件を隠蔽できる人ではない。何による罪だと聞かれても
分からずに言葉が詰まった。それに仕方がないと
グルは棚からファイルを出してこう言う。
「あの家族に問題がある。坂本刑事の心を動かす問題…
心を壊すほどのストレスだとしよう。」
「サーフィー、どう思う?」
突然、質問を投げられたサーフィーは
頭を整理して意外にも冷静に答えた。
「親はおそらく財産家。
金による恨みを買ったんだろうね。」
「これは一例の話だけど坂本刑事が金に釣られたとか
喧嘩なんかをして脅された…なんて考えられるよね。」
そう言うと、グルは『それも一理あるのだが』と声を上げた。
「坂本刑事に事件を少しばかり伺った。
坂本刑事はかなりのギャンブラーで、カジノに競馬。
様々なギャンブルをしていたそうだ。」
「詳しくは隠されてしまったのだが
俺はある予測をした。」
「ギャンブルによって
全額奪われた可能性だ。坂本刑事はこの頃金銭を
気にかけていたからな。」
「本人的には家族もいるし相当恨んだだろう。」
そう言うと、一生懸命にファイルを開きながら
話を聞いているクルルに話しかけた。
「クルルはどう思う。何故、この事件に坂本刑事と
吉木が関係すると思う?そもそも何故殺した。」
「…グルさんが話したことは嘘ですね。
坂本刑事は関係していません。」
答えは意外だった。
サーフィーが思わず声を上げる。
「なんで?!隠蔽したんでしょ?!」
「…坂本刑事は杉山事件担当の刑事であって
失踪事件に関係してない。グルさんの引っ掛けでしょ。」
「へぇ。何故?」
「俺の予測では吉木が関係しています。
おそらく、真織も。」
そう答えると、チラリとサーフィーの目を見た。
サーフィーが上を向いて考えると
腹を割って話そうと立ち上がった。
「依頼者と話したんだけど、真織は姉の友達。
そして吉木は彼氏だからね。」
「おそらく姉の殺害に関係している。
妙な手紙の発行主も真織。
母と父が失踪したのはおそらく数ヶ月前。
ヤクザ関係だろうし照らし合わせてみれば
真織が捕まったときだ。」
「つまり恨みを買ったのは吉木なんじゃない?」
これにグルは何も答えなかった。
ただ、了解も否定もしなかったのである。
クルルは『話を聞いていなかったから…』と断ったが
サーフィーの推測に賛成した。
(本当に坂本刑事は関係していないのだろうか…?)
そんな中、真実も分からずにサーフィーは
首を傾げてよく考えるのであった。
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