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「…英語?」
微かに歌っているのが聞こえる
敵も歌っているのだ 自分達のように、仲間と一緒に
「よしっ!俺たちも歌うぞ!!」
仲間達が負けるまいとさらに大きな声で歌い始めた
相手の声もさらに大きくなっていく
(つらいのは自分達だけじゃない、相手だって同じ気持ちなんだ…戦争なんて…)
仲間の1人が敵軍の方向に大きく手を広げた
「何してる!?早く逃げろ!!!!!!」
仲間が全員唖然とした
撃たれるッッ!
…
いくら待っても銃声が聞こえなかった
「撃たれていない…?」
仲間はみんな呆然と立ち尽くしていた
「あの…」
振り返ると自分達とは違う軍服を着ている青年がいた
敵軍だ
「これ、よかったら」
カタコトなドイツ語で彼がくれたものは小さなオリゴールだった
「ありがとう…」
そう言うと、彼は嬉しそうに微笑んでくれた
少し照れくさかった
「おーい!」
仲間の呼ぶ声がした
そこではドイツ兵とイギリス兵が戦争とは思えないような光景が広がっていた
仲良く会話したり、小さなボールを使って遊んでいたりした
ドイツ兵の中には英語が話せる人が多く、とても交流がしやすかった
自分もその中に入って少しだけ戦争を忘れる事ができた
「それじゃあ、またいつか…」
多くの兵は涙を流し、抱き合っていた
もし、これが戦争ではなかったら…
戦争から多くの月日が流れた
あのクリスマスの日の後、イギリス兵を見る事はなく、第二次世界大戦が幕を閉じた
もう二度と、彼に会う事はないだろう
名前も知らないイギリス人の青年
そのイギリス人の青年がくれた小さなオルゴール…
昔、とある記者に質問された事がある
「もし、1日だけ過去に戻れたら、いつに戻りたいですか?」
「そうですね、もしももう一度だけ、過去に戻れるとしたら…」