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授業が終わった午後の休憩時間。
若井は職員室のデスクに肘をついて、こめかみに手を当てたまま、目を閉じた。
さっきの感触が、未だに皮膚の奥に残っている気がしてならなかった。
保健室で、大森の柔らかな唇に触れたあの一瞬。
小さく震える体を抱き寄せたときの、儚くも確かな重み。
その後――
『……藤澤先生とやったこと、俺にもして』
――その言葉に、反射的に体が動いた。
あんなこと、絶対にしてはいけなかったのに。
若井は自分の中にある衝動と罪悪感に呑まれ続けていた。
生徒に手を出すなんて、教師としてあるまじき行為だ。
それも、ほんの少しでも心が動いていたことを、自分は誰より理解している。
(……最低だ)
その一言が、脳裏でループする。
授業が終わった放課後、何気なく廊下を歩いていると――
「ねぇねぇ藤澤先生!このリズムで合ってる?」
「うん、そうそう!すごく良くなってきたじゃん!」
――音楽室前の廊下で、生徒たちと笑顔で話している藤澤の姿が目に入った。
その笑顔は相変わらず柔らかくて、無邪気で、どこまでも穏やかで。
(今日はもう…無理だ)
消化しきれていないこの気持ち。
気づけば、若井の脚は勝手に動いていた。
「……藤澤先生、ちょっといいですか」
静かに、けれど確かに抑えきれない声が漏れる。
驚いたように顔を上げた藤澤と目が合い、そのまま手招きするように促す。
「え?……う、うん。なに?」
音楽準備室へ入るなり、若井は無言で扉を閉め、そのまま鍵をかけた。
「……え? ちょっと、なに、どうし——」
「……うるさい」
背を向けて戸惑う藤澤を、強引に引き寄せる。
そのまま、何も言わず唇を塞いだ。
「んっ……!」
言葉を遮るように、唇を塞ぐ。
無言のまま、荒々しくキスを重ねた。
「……んっ、ちょ……なに、滉斗……っ!」
戸惑う声が、次第に吐息に変わっていく。
衝動だった。
ただ、触れたくて、確かめたくて。
自分の理性が崩れる音を聞きながら、それでもキスをやめられなかった。
藤澤が少しだけ抗うように体を引こうとしたが、
すぐに力を抜いて、逆に若井の首へ腕を回す。
「……急にどうしたのさ。…もうやめてって勝手に決めたクセに……」
「……ごめん。今日だけは…」
シャツのボタンを引きちぎるように外し、身体を抱き寄せる。
そのまま準備室の机に押しつけ、後ろから、深く、貫いた。
「っ……あ、あぁ……っ、く……っ!」
声を漏らす藤澤の喉元を噛む。
深く、深く。
押し寄せるように求め合い、果てるまで続けた。