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柔太朗 side
「勇ちゃんまた告白?」
休み時間、女子に呼ばれ、少し経ってから戻ってきた勇ちゃんにそう問いかける。
まぁ、勇ちゃんのこと呼び出した女の子は顔を赤くして緊張していたから告白で間違いないだろうけど。
「まぁな。告白だったわ」
「で?また断ったんか?」
「うん。あんま知らない子だったしなぁ。俺好きな子としか付き合わないって決めてるからさ」
「はー、モテる男はすげぇな。俺には一生無理だ」
仁ちゃんは頬杖をつきながらため息をついた。
仁ちゃんは今までモテてこなかったらしい。
これは本人がそう言っているし、小学生の頃から一緒にいるだいちゃんも言っている。
俺たち5人は高校で初めて出会った。
けれど、仁ちゃんとだいちゃんは小学生の頃からの幼馴染である。
そのため、高校以前の仁ちゃんのことはだいちゃんしか分からないのだ。
高校から出会った俺たちは今の仁ちゃんのことしか分からない。
確かに、別に告白されるのが皆無な訳では無いが、この5人の中で回数は圧倒的に少ない。
けれど、女子が仁ちゃんをかっこいいと言っているのをよく耳にするし、仁ちゃんとすれ違うと振り向いて仁ちゃんを見て顔を赤くする女子も見たことがある。
なのに何故だ?
「逆になんで仁人モテないの?俺仁人の顔が1番好きだけど」
「そりゃどーも、モテ男に言われてもなぁ」
「女子とか仁ちゃんのことかっこいいって言ってるよね?」
「えー、人違いじゃね?そんなん俺聞いた事ないわ」
仁ちゃんはないない、と手を顔の前で横に振る。
「あれ?でもこの前ラブレター貰ってなかったっけ?」
舜太は思い出したようで、仁ちゃんに問いかける。
「ラブレター?もらってないけど……」
「嘘だぁ。この前女の子に手紙を仁ちゃんに渡して欲しいって頼まれて、その後だいちゃんが代わりに渡しとくよって言ってくれたから、だいちゃんに仁ちゃん宛の手紙渡した気がするんやけど」
「舜太それ勇斗宛のラブレターと勘違いしてるんやない?」
「おーーい!モテ男と勘違いすんな!!傷つく!」
「えー?いや、仁ちゃん宛だったはずなんだけどな。あれ?」
舜太は頭にはてなマークを浮かべながらうーん、と唸っている。
なにか、引っかかるな。
***
「これ、仁人くんに渡して欲しくて……」
委員会が一緒の女の子に呼び止められたかと思えば、手紙を仁ちゃんに渡して欲しいと頼まれた。
おそらく、いや、絶対ラブレターだろう。
ほら、仁ちゃんはやっぱりモテないわけじゃない。
「自分で渡さないの?」
「うん、勇気無くて……ごめんね、こんなこと頼んじゃって」
女の子は申し訳なさそうに、顔を赤くしながら俺にそう言う。
まぁ、別にそんな大変な労力な訳じゃないし、恋する女の子を応援はしたいとは思うから、手紙を渡すくらいそこまで苦ではない。
「了解、渡しとくよ」
「ほんと!ありがとう!」
女の子は笑顔でお礼を言うと、その場を去っていった。
分かったことは、仁ちゃんは普通にモテるということ。
ラブレターを渡そうとしてくる女子もいる。
じゃあ、なぜモテないと本人は思っているのか。それは、俺の中で答えは出ていた。
「柔太朗、それ仁人宛?」
「うわ、!びっくりした」
頭の中でいろいろ考えていると急に後ろからだいちゃんに声をかけられる。
俺の考え。
仁ちゃんがモテないと思っている原因は、多分、だいちゃんにあると思う。いや、多分というか絶対。
「俺、この後仁人に会うから、俺が渡しとくよ」
だいちゃんはそう言って俺の手から女の子が渡してきた手紙を取ろうとする。
「この後暇だから、俺が仁ちゃんに渡しとくよ」
「いや、わざわざ大変やろ?俺が渡しとくって!」
「………だって、だいちゃん本当に仁ちゃんに渡すの?」
そう言うとさっきまで笑顔だっただいちゃんの顔が固まる。
「渡すって!信用ないんか俺は!」
笑顔でそう言ってくるけど、少し引き攣ってるよ、だいちゃん。
「ずっと疑問だったんだよね。仁ちゃんってモテてるはずなのに告白される回数が異様に少ないし、本人もモテないって言ってるのは何でだろうって。でも、今やっと理由が分かったわ」
ねぇ、だいちゃん。
「だいちゃんが裏で手回してるから仁ちゃんに告白する人が少ないんでしょ?小学生の時からそうやってるから、仁ちゃんはずっと自分はモテないって言ってるんだよね?」
「え〜?そんなことするわけないじゃーん」
「舜太が前に仁ちゃん宛の手紙貰ってそれをだいちゃんに渡したって言ってたけど、その手紙仁ちゃんに渡してないんでしょ?今日、舜太がその話して、仁ちゃんに手紙渡してないのがバレちゃうから、勇ちゃん宛の手紙だったよって誤魔化したんでしょ?」
ねぇだいちゃん。俺の推理合ってるよね?
「んー、やっぱ柔太朗は鋭いなぁ。その通りだよ、俺が裏で手回してんの」
だいちゃんはばれちゃったか、といたずらっ子みたいな笑顔でそう告げる。
「やっぱり。俺が貰った仁ちゃん宛の手紙もだいちゃんが回収して、仁ちゃんに渡さず棄てるつもりだったんだ?」
「正解。こんな手紙仁人に渡すわけないやん」
だいちゃんは俺の手から仁ちゃん宛の手紙を奪って、より一層笑顔になる。
「もーらい!」
「あーあ、取られちゃった。ゴミ箱に捨てんの?」
「差出人の女の子の名前記録したら、燃やそうかな。一生仁人に近づかせないようにしなくちゃ」
童顔で無邪気な顔からは想像できないような黒い言葉を吐く大ちゃん。
「手紙渡してきた女の子、仁人のこと気になってんだろうなって思ってたんだよね。だから今日監視してたの。そしたら柔太朗に仁人宛の手紙渡してたから、奪いに来たってわけ」
「怖。今までもそんなことしてたの?」
「そーだよ。小学生の頃から、仁人のこと好きそうな奴には裏で手回して怖がらせて近づかせないようにしたし、仁人宛のラブレターは俺が見つけ次第燃やした」
次々語られるだいちゃんの悪行。
仁ちゃんとだいちゃんはさっぱりした関係だと思っていたが、どうやら全然違かったみたいだ。
すごく、ドロドロしていて。特にだいちゃんからの仁ちゃんへの感情が黒くて、激重だ。
「前に舜太が仁人宛のラブレター貰ってた時も、俺が預かって燃やした。」
「やっぱりね」
「仁人ってモテるから、結構大変なんだよ。俺の忠告守らないで仁人に告白した奴には、柔太朗に言えないくらいちょっとやばいことしちゃってるかも」
「なんでそんなことするの?だいちゃんは仁ちゃんのことが好きなの?」
「んー、何やろ。もう好きなんて簡単な感情じゃ説明できない所まできちゃってんだよ」
もう、依存してんだよ、仁人に。
だいちゃんはそう呟く。
「仁人が誰かのものになるなんて、俺、許せへんからさ」
「俺、初めてだいちゃんのことこんなに怖いと思った」
「別に、仁人に手出さなければ全然大丈夫やで」
だいちゃんはそう言って笑う。その笑顔はいつも俺たちに向ける優しく無邪気な笑顔だった。
「ま、柔太朗でも仁人に手出そうとしたらどうなるか分からへんかもな」
だいちゃんはそう言って、じゃあね〜、と手を振って歩いて行ってしまった。
………怖。
だいちゃんって仁ちゃんの事になるとあんなに怖かったんだ。
てか、小学生の頃からだいちゃんが裏で手回してるのに気づかずに、ずっと自分はモテてないって思ってる仁ちゃんって呆れるほど鈍感なのでは。と俺は思った。
コメント
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**はる。だわ〜** 第1話読了!いや〜、これめっちゃ好きなやつだわ🔥 だいちゃんの「仁人に依存してんだよ」の台詞、ガチで刺さった。表向きは爽やか幼馴染なのに、裏では小学生の頃からずっと仁ちゃんの周りをコントロールしてたって…その執着の深さと狂気のギャップがエグい。童顔で無邪気な顔して放つ黒いセリフの温度差、震えた。 あと柔太朗の視点がいいんだよな。「呆れるほど鈍感な仁ちゃん」ってオチも含めて、読み終わった後の背筋がゾクッとする感じがたまらない。続き早く読ませてくれ〜!