ある長月のある夜 。
四五六年生はとある実習を行っている最中 、
大きな爆発に巻き込まれてしまった 。
その戦では 、ここらで大きく騒ぎをたてた
ふたつの大きな城によるものだった 。
ある城は 、火器などの石火矢を扱って 。
またある城は 、弓矢や鉄砲を使い 。
互いに熱く戦っており 、両者引けに取らずして
戦いは延長が続いていた 。
そんな中で 、我々に与えられた任務は
この合戦の戦況、勝利するであろう城の推測を
各チームごとに考察をして忍術学園へ戻った時
学園長に報告をする 。
傍から見れば 、ただ他所から
合戦を観察するだけで終了なのだが 。
今回はそう甘くは無いのだ 。
この合戦は 、この先の未来を
大きく変えてしまうかもしれない 、大きな戦で
それほど強力な両城の戦いなのだった 。
そんな戦いを盗み見するのだ 。
それほどの緊張感を持ち 、
任務にあたらなければならない 。
観察するにあたり 、我々は三つの組に別れた
観察、偵察をするのは勿論い組で 。
襲撃に巻き込まれぬよう監視するのはろ組で 。
は組は 、万が一に備え囮として構えていた 。
そして 、観察していた
六年い組潮江文次郎と立花仙蔵は気付いていた 。
こちら側に陣を固めていた
火器を扱っていた城が何かを企んでいることを 。
「…..待て 、文次郎ッあの黒色の火薬は…」
火器に詳しい仙蔵がいち早く声を上げた 。
そう、自分達がこっそり盗み見をしていた
事すら忘れてしまうほどに 。
「お前たち、撤退だ!!!
あれは、黒色火薬だッ…..あの城の奴らは 、
初めからこれが狙いだったのだ!!!!」
仙蔵の言葉を聞き 、
全員が引き返そうとした 。
その時______
「おい待てッ”」
「….離してっ… 」
「喜八郎!!!」
ひとりぽつんと逃げ遅れたのか 、
わざとそこに居たのか 。
まんまと喜八郎は城の者に捕らえられた 。
「ははッ…お前ら 、さては同職だな?」
「そう易易と返すわけにはいかねぇな」
片腕には喜八郎を 、
そしてもう片方には爆発寸前の黒色火薬を
持ったヤツがそう告げた 。
「貴様、、よくも汚らしい手で喜八郎に触れたな…」
怒りを隠せない仙蔵は 、
今にもその忍者に襲い掛かりそうだった 。
でも 、行けなかった
下手な動きを見せてしまえば 、
すぐに黒色火薬を放たれ終わってしまう 。
「….どうしよう 、綾部が、綾部がっ」
「落ち着け 、兵助…」
「….あーくそッ…敵の奴らも 、
なんで気づいてねぇんだよ!!!」
鉢屋がそう呟いた時 、
ボソッと喜八郎が何かを告げた 。
その瞬間 、カチッという音と共に
自分達忍たまの足は宙に浮いた 。
「うそ、だろっ…??」
「喜八郎ッ!!喜八郎ーー!!!!!!」
落し穴に落ち着る最中 、ふと喜八郎を見れば
彼は笑って 、何かを話していた 。
「_____よ 、滝夜叉丸 。」
ドシン 、と大きな穴に皆が落ちた時 。
とてつもなく大きな爆発音とともに 、
何かが飛び散る音 、木々が倒れる音が鳴った
幸いな事に 、喜八郎による絡繰で
我々四五六年生は全員無傷で終わった 。
ただ 、ひとりを抜いて
喜八郎が作ったトラップはとてもじゃないけど 、
脱出できそうには思えなくて
中から小平太が穴を堀り、
地上へ出ることが出来た
目の前に広がる一面は 、四年生には
とてもじゃないけど目に余るものがあった
「……おぇッ “ … 」
「おい三木ヱ門!!」
もはやどちらの城のものかも区別が出来ないほど
変形してしまったヒトの姿や 、
微かに息をしていて、辛そうに何かを話すモノ
爆発地から距離があり 、
辛うじて生きていたモノは………
元々 、この城は
勝つ気も負ける気も無かったのだろう
そんな気がしていた 。
どれだけ 、死体の山を見ても
辺りを探索したって 、
喜八郎の姿だけが見つからなかった
「…..あんな近くで被爆したんだ 。」
「きっと 、跡形も残らなかったんじゃないかな」
そんな推測を伊作が立てたとき 、
私達はやっと理解をした 。
もう 、喜八郎はいないんだ
喜八郎は 、我々を庇い死んだのだと 。
「うぁ、あぁぁぁああッ…….」
「喜八郎ッ….喜八郎、、!!!」
「あのアホ八郎がッ….」
「…………ッ!!!」
取り残された四年生達が 、次々と涙を流した
そんな姿を見た五年生達は 、
各々四年生に近ずき 、共に身を寄せあった
「……..守ってやれなかった 。」
「痛かっただろう…..っ、」
「お前達だけの責任じゃないんだ……」
「…..っ、何がいけなかったのかなぁ 。」
「…….ッ 、くそ…畜生っ…」
皆で男泣きをしている後輩達の後ろから
私達六年生は 、ただ呆然と眺めていた
「……..喜八郎は 、本当に死んだのか?」
そう 、小平太が呟いた途端
皆が揃って彼を見た
「…..何を言う小平太 。」
「だって 、死体が無いじゃないか 。」
「死んだという証拠は何処にも無いぞ」
「…は、ははっ、そうだ…そうだとも!!」
「なぁ、いるんだろう喜八郎!!!?」
「….怒らないから 、出てきておくれよ….」
小平太の言葉を信じ 、仙蔵は只々叫んだ
そんなふたりの言葉が打ち消されるような
そう思わざるを得ない事が起きた
「お前らッ..無事か!!!!」
「….ッ、、よく..よく生きたっ」
各学年の先生方 、土井先生に山田先生
そして 、何故か利吉さんも駆け付けてきた 。
安否確認していると 、ふと利吉さんが言った
「ちょっと待ってください。」
「喜八郎くんが居ないんじゃないか…?」
黙りを決める私達に 、山田先生は釘を指した
「….認めたくない事が起きたのは分かった 。」
「だが 、そのままでは先に進めまい …. 」
「私達に何があったのか教えてくれ」
そんなことを言われてしまえば 、
大人しく話すしかないじゃないか
そうして 、今一番説明力のある長次が
この短時間での出来事を全て話した
「…….そうか 、綾部が 。」
「喜八郎がそんなこと、」
「……流石 、い組の子ですね」
「実践が苦手故の決断ってとこだな…」
「全く 、お人好しが隠せてないな 。」
先生達が各々評価している最中
滝夜叉丸が口を開いた 。
「お言葉ですが、」
「まだ、喜八郎が死んだと考えるのは
あまりにも可哀想じゃないでしょうか 。」
滝夜叉丸は 、止めても止まってはくれない
「喜八郎が 、あんなっ…あんな
呆気なく亡くなるわけが無いでしょう?」
「きっと 、きっと自身の落し穴で
身を休めてるに違いありませんっ」
「滝夜叉丸」
「私の同室は 、そんな優しくなどない!!」
滝夜叉丸の言葉に 、皆が固まった
「私の同室は 、マイペースでいつだって飄々と
していて浮世離れしすぎた人で 。
人のことなど以ての外 、自分の事すら関心のない
そんなヤツなんです!!!」
「そんなやつが 、我々を助けるなんてっ…….」
「滝夜叉丸 、もう辞めないか」
滝夜叉丸を止めるかのように 、
同級の三木ヱ門が彼の肩に手を置いた 。
「だって 、三木ヱ門 。」
「お前は耐えられるかっ…….」
「これから私は 、ひとりになった部屋で教室で
残りの学園生活を送って行くんだッ
喜八郎とコンビを組めずして実践へ行くのだ 。
そして何より 、、、、もう….大好きだった
あの素っ頓狂な声が聞けぬのだ」
三木ヱ門の手が震えるのがわかる
「なぁ、三木ヱ門 …. 私は 、どうしろというのだ」
「私は 、あ奴の後輩になんと言えばいい 、
私の後輩に 、なんと知らせればいい ?」
もう 、綾部喜八郎はいないと
素直に伝えることが出来そうにないんだ
そう 、いつもとは真逆に弱々しく話す
滝夜叉丸に 、三木ヱ門も私達も何も言えず
只々 、その夜は皆で泣いた
そんな皆の姿を 、喜八郎ならきっと
「おやまぁ」で済ますのだろう
コメント
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まだ続きありますよね? ハッピーエンドですよね?( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)