ミノリ(吸血鬼)たちの元へと向かっている道中、俺は先ほど一体化したカオス様の力を使って色々調べていた。その結果、今まで分からなかったことが色々分かった。
サナエは俺の無意識を守護している俺の妹であり俺の母親『アユミ』の力の一部と彼女の愛でできていること。
ミノリ(吸血鬼)は別次元にいる元人間のキメラの遺伝子の器《うつわ》であり、モンスターチルドレンになる際、彼女だけカオス様が生み出した『はじまりシリーズ』の一体『はじまりの吸血鬼』の力をほんの少しだけ注入された存在であること。
うちのアパートの管理人さんがアイ先生が雇った座敷童子であること。先代の誕生石使いはアイ先生が作った俺のクローンであること。俺のクローンはこの世界だけでなく別世界・別次元にも存在していること。
未解放の鎖の力の一つ、第四形態のレッドフリージアを使うと副作用で誰とも性行為ができなくなること。第五形態のバイオレットフリージアを使うと副作用で自分にないものを持っている生き物全てに憧れ、それらを自分のものにするために全て吸収し始めてしまうこと。
俺がカオス様のところに向かうことをアイ先生のテレパシーで知った俺の高校時代の同級生たちは俺がいつも持っている白いお守りに力を送り、彼ら彼女らの奥義を何度使用しても死なないようにしてくれていたこと。
他にも色々分かったが、生きていくのに必要なものではなかったため見なかったことにした。特に『はじまりの吸血鬼』に関する情報は全て見なかった方がいいと思った。
おっ、そろそろみんなのところに着くな。結局、みんなの力使わなかったけど使ってたら俺は今頃ここにはいないだろうなー。よし、そろそろ鎖を体の中に戻そう。
「おかえりなさい! ナオト!!」
俺がみんなの元へ戻った直後、ミノリ(吸血鬼)は俺を強く抱きしめた。
「危ないなー、いきなり抱きつくなよ」
「うるさい! うるさい! うるさい! なんであんたはいつもいつも危ない目に遭《あ》うの!?」
「さぁ? どうしてだろうな」
「バカ! バカ! バカ! そうやって何もなかったかのように振る舞わないでよ! ラスボス戦で感じたこと全部あたしに話しなさいよ!!」
うーん、みんなミノリ(吸血鬼)の水晶に映《うつ》った俺を見てるはずなんだけどなー。
「カオス様と一体化するまでは少し怖かったよ。いつ何をされてもおかしくなかったからな。でも、一体化したら全部分かったんだよ。カオス様は俺しか見てないってことに」
「そう。分かったわ……。それじゃあ、あんたとはここでお別れね」
「待て。俺の心臓を食べないとモンスターチルドレンは元の人間には戻れないんだろ? 早く食べろよ」
「あんたの心臓は一つしかない。だから、元に戻れるのは一人だけなのよ」
「それ、嘘だぞ」
「え?」
「だろ? アイ先生」
「ええ、そうよ。まあ、ナオト自身がコピーした心臓じゃないとダメだけどね」
「え? そ、そうなの?」
「ええ、そうよ。まあ、ナオトがカオス様と一体化してなかったら不可能だったけどね」
「な、何よ! それ! じゃあ、もしナオトがカオス様に食べられてたら」
「あなたたちはずっとそのままだったわね」
「なっ! そんな恐ろしいことサラッと言わないで!!」
「な、なあ、ミノリ」
「何よ!!」
「俺の心臓のコピーできたんだけど、食べるか?」
「え? ちょ、それ、生《なま》で食べても大丈夫なの?」
「あー、どうなんだろうなー。まあ、大丈夫なんじゃないか? うーん、でもやっぱり焼いた方がいいのかなー?」
「別にいいわよ! ほら、早く渡しなさいよ!!」
「ああ、分かった。さぁ、食え。それを食えば俺とお前の旅は終わりだ」
終わり? それっておしまいってこと? あれ? じゃあ、あたしたちここでお別れなの? あんたのことはモンスターチルドレンになった日から知ってたけど、あんたと一緒に過ごしたのはたった一ヶ月なのよ? なんでおしまいなんて言うの? あたし、もっとあんたと一緒に……。
「……や」
「え?」
「嫌《いや》……嫌《いや》よ。絶対嫌。あたし、あんたともっと一緒にいたい……。でも、あたしが元の人間に戻ったらあたし、あんたのとなりに立てない」
「……ミノリ」
「それにあたし、あんたのこと大好きなのよ? それなのにお別れなんて……。辛すぎるわよ」
「そうか。そうだよな。でも、俺は元の世界に戻るつもりはないぞ」
「え?」
「ほら、服まだ未完成だろ? それに今ちょっとまずいことになってるから戻りたくないんだよ」
「まずいこと?」
「ほら、よくあるだろ? AIが暴走して人間を排除し始めるやつ」
「え? じゃあ、あんたは」
「多分もう元の世界には戻らないな。でも、ちっとも悲しくないぞ。この世界にはみんながいるからな」
「……ナオト」
「ところで何か知りたいことないか? カオス様の力を少し使えば何でも分かるぞ」
「そうね。じゃあ、二つだけ。一つ目はあんたの鎖の名前の由来。二つ目はあんたが誰と結婚するのかについて」
「分かった。えーっと、大罪ってのは心と体と魂に宿ってるんだよ。で、その三箇所に宿ってる大罪を封印というか鎖で拘束するからトリニティバインドチェインだ」
「そう。ありがとう。それで二つ目は?」
「言った方がいいのか?」
「言わないとあんたの童貞奪うわよ」
「よし、分かった。言おう。コホン。えーっと、すまん! 俺には選べない! だって、みんな魅力的すぎるんだもん!」
「あんたならそう言うと思ったわ」
「お、怒ってないのか?」
「誰かを選んだら誰かが傷つく。でも、あんたは絶対そんなことしない。だから、選ばないという選択をしたんでしょ?」
「あ、ああ、その通りだ。ところで元の人間に戻りたいやつはいないのか?」
「この場にはいないわ。だから、あんたの心臓はこの場にいないモンスターチルドレンか不適合者に渡しなさい」
「え? いいのか? そのままってことはこれからも吸血衝動がお前に襲いかかってくるってことだぞ?」
「別にいいわよ。あんたの血を毎日吸えるんだから」
「ま、毎日!?」
「なに? 嫌なの?」
「いや、別に嫌じゃないけど」
「そう。良かった」
「なあ、ミノリ」
「なに?」
「えっと、その、こ、これからもよろしくな」
「あんたは一生あたしの生き餌《え》よ。だから、何があっても死ぬんじゃないわよ」
「何があっても……か。少し不安だけど死なないように頑張るよ」
「よろしい。じゃあ、あたしとキスしなさい」
「え?」
「嫌《いや》なの?」
「いや、別にそんなことはないぞ。ただ」
「ただ?」
「み、みんなが見てるから。というか、ブラストにガーネット返さないといけないし」
「なら、今返して」
「え? あー、分かった」
「ブラストー! 今からお前のガーネット返すぞー!」
「いや、俺にはもう必要ない! ガーネットが俺からお前の体に入った時点で契約が上書きされたからな!!」
「そうか。じゃあ、このまま俺が持ってていいのか?」
「ああ! もちろんだ!!」
「分かった! 大切にするよー!」
「話、終わった?」
「あ、ああ、終わったぞ」
「じゃあ、もういいわよね」
「え? いや、まだ心の準備が」
「それ、いつ終わるの?」
「さ、さぁ? いつだろうなー」
「早くして。みんなあんたとしたがってるんだから」
「え? みんな?」
「まあ、みんなって言っても女の子だけだけどね」
「そ、そうか。えっと、どうしても今ここでしないといけないのか?」
「ええ、そうよ。さぁ、ナオト。あたしとキスしなさい」
「わ、分かった。じゃ、じゃあ、するぞ」
「うん♡」
俺がミノリ(吸血鬼)の唇《くちびる》に自分の唇を重ねた瞬間、彼女は絶頂した。俺が彼女の体に触ると彼女は再び絶頂した。どうやら俺とキスしたことで俺に触られると感度が限りなく無限に近い状態まで上昇してしまうようになってしまったようだ。しかし、彼女は何度も俺とキスをした。キスをしながら絶頂している彼女の体を俺はしっかり支えていた。
*
その後、俺はアイ先生に頼んで俺が生まれ育った世界で起きている戦争を止めてもらった。いつかみんなに俺の故郷を見せてあげたいからだ。
俺とアイの第一子は女の子だった。名前はサツキ。五月生まれだからサツキだ。ちなみにそれ以降も女の子しか生まれていない。なぜだろう。
そういえば、うちにいる女の子たちとの間にできた子どもも今のところ全員女の子だなー。なぜだろう。
ちなみにこの世界にいるモンスターチルドレンと元不適合者たち(俺の心臓を少し食べさせるとモンスターチルドレンになる。全部食べさせると元の人間に戻れる。しかし、今のところ元の人間に戻った女の子はいない。なぜだろう)との間にできた子どもも今のところ全員女の子である。
まあ、俺の種と女の子たちの卵を体外受精させて魔法で人の形になるまで成長させているから俺はまだ童貞なんだけどな。
あっ、ミノリが呼んでる。え? ナオミ(俺とミノリの第一子)が俺と遊びたがってる? はいはい、今行きますよー。
「……いいなー、私も幸せになりたいなー」
「なればいいじゃないか」
「でも、私は『はじまりの吸血鬼』なんだよ? 絶対誰かを不幸にしちゃうよ」
「お前は悪意そのものだけど、不幸そのものじゃないだろ。というか、幸せになっちゃいけない法律なんてどこにもないんだからお前のやりたいようにやればいいんだよ」
「そっか。うん、分かった。そうする!」
「ナオトー! 早く来てー!」
「ああ、分かったー!! じゃあ、またな」
「うん、またね」
おしまい。
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