テラーノベル
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買い物袋を提げたすちが、玄関の方に立っていた。 白いシャツの袖をラフにまくり、肩にかけたバッグが揺れている。
柔らかい目が、泣きはらしたらんと、その手を握るみことに向けられた。
🎼🍵「……ごめんね、邪魔しちゃった?」
その声音は、本当におだやかで、責める色なんてひとつもなかった。
みことは胸が不思議に温かくなるのを感じた。
🎼👑「あ、あの……」
言葉が出てこない。
けれど、らんが小さく首を振った。
🎼🌸「……なんでここに?」
🎼🍵「あ、うち隣だから。スーパー帰りに電気ついてるの見えて、なんとなく……。心配で」
さらりと言う。
その自然さに、らんは言葉をなくす。
“心配だから”――家族以外にそんなことを言われるのは、いつ以来だったろう。
沈黙を破ったのは、みことだった。
🎼👑「……ありがとう」
🎼🍵「うん?」
🎼👑「らんらんのこと、気にかけてくれて……ありがとう」
自分でも驚くほど、素直に言葉が出た。
すちは少しだけ目を丸くしてから、ふんわりと笑った。
🎼🍵「そっか。……じゃあ俺、これからも勝手に気にかけていい?」
みことの心臓が、どきん、と跳ねる。
それは決して“らんの兄としての自分”に向けられた言葉じゃない。
まっすぐに“みこと”自身へ届いていた。
不思議だった。
目が離せなかった。
その人の声も、仕草も、どこか心をくすぐってくる。
🎼👑「……はい」
小さくうなずいた瞬間、胸の奥に芽生えた感情を、みことはまだ名前で呼べなかった。
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