どうも、最近料理に目覚めました。
Vtuberの弐十です。
実は俺、生まれてこの方、
学生時代の調理実習以外でまともに料理をしたことがなかったりする。
キッチンに立つ母親の手伝いをしたこともなければ、今まで付き合った彼女に手料理を振る舞った記憶も、皆無!
上京して社会人になり、Vtuberになった今も、食事は基本的にテイクアウトか外食。キッチンはもはや簡単な洗い物と、歯を磨く場所になっている。
そんな俺が料理に目覚めるきっかけになったのは、今年6月の配信企画──
キルシュトルテと料理対決をした時に作った肉じゃがだった。
ぶっちゃけ、あれは奇跡みたいなもんで、まぐれで美味しいものができただけ。
達成感はあったけど、「やっぱ料理ってめんどくせぇな」が正直な感想だった。
──でも、
先月のオフコラボで、キルシュトルテにリクエストされた豚キムチ焼きそばを作ったとき。
普段少食で、やたら味にうるさいあいつが、少し目を輝かせて「うまい…!」って言いながら食って、しかも完食してくれた。
……あの時の顔が、なんかやたらと記憶に残ってて。
俺はただ、それが嬉しくて仕方なかった。
また、あいつに何か作ってやりたい。
今度は、もっとちゃんと、喜ばせてやりたい。
そう思ったのは、ほんの気まぐれだったはずなんだけど……。
気づけば俺は、夜な夜なカレーのレシピを検索したり、料理動画を見てイメトレしたりしていた。
(※実際に試作することはない。そこは断固として笑)
包丁の握り方、野菜の切り方、調理工程──
全てを頭に叩き込み、「いける!」と思った俺は、
あいつには一切アポを取らず、完全サプライズでの”カレー作戦”を決行することを決めた。
決戦は、金曜日。
(※ちなみに、明日だ😼)
⸻
翌日。
トルテさんのマンションに向かう前に、近所のスーパーで買い出しを済ませた俺は、
両手いっぱいの買い物袋を抱えて、いつものように彼の部屋を訪れた。
「え?! おい、なにごと?!」
玄関を開けた瞬間、案の定、あいつは目を剥いて驚いてくる。
それを尻目に「キッチン借りまーす」とだけ言い残して、ズカズカと部屋に上がり込む。
袋の中身をテーブルに広げ、肉や麦茶、アイスを冷蔵庫へと手早くしまっていると、
ドタドタと足音が迫り──
「は?、なに!?今から配信でもすんのか!?」
「ちがーう。ただの料理。ちょっとキッチン貸して?」
俺が軽く返すと、トルテさんは眉をしかめて混乱した様子を見せる。
「いやいやいや…、いきなり来て料理とか意味わからんって……なんかあんだろ!?」
「ないよ〜なーんにも。キルちゃんはお部屋で動画編集でもしててね〜〜」
「……は??お前…怖ッッ!マジで何作んの……」
「内緒!出来たら呼ぶから〜」
手でしっしっと追い払うようにして、
しぶしぶ部屋に引っ込もうとするトルテさんの背中を見送りながら、俺はキッチンに向き直る。
動画で覚えた手順を思い出しながら、持参したピーラーと、まな板、包丁を並べ、
袋から野菜を取り出して並べていく。
イメトレは完璧。
まずは、人参、ジャガイモ、玉ねぎの皮をむく。
(うん、たぶん……良い感じ!)
続いて野菜のカットに移る。
──そういえば、6月の料理配信では、
リスナーから「弐十くんの包丁捌き、怖すぎww」「猫の手知らないの!?」と散々な言われようだったのを思い出し、
「左手は猫の手……包丁は押して切る……」と呪文のように唱えながら、人参に刃を入れる。
レシピでは“乱切り”とあったが、
トルテさんはそもそも野菜があまり得意ではない。
食べやすいように薄めに、と思って銀杏切りを試みるも、人参は思ったより硬い。
包丁が滑りそうになったり、爪ギリギリを削りそうになったりと四苦八苦しつつ、
どうにかこうにか切り終えた人参を見下ろすと、不揃いで歪な形がまるで転がっている。
「……ま、まあ……数ヶ月前よりはマシってことで……」
と、小声で言い訳めいた独り言をつぶやく。
視線の先では、ジャガイモがこちらを見上げていた。
すでに腕はだるいが、気合いを入れ直してぐるりと肩を回す。
「っしゃー!次はジャガイモー!!」
腹から出たその声がキッチンに響いた瞬間、部屋の奥からあいつの声が飛んできた。
「うっせーー!!
お前やっぱり配信つけてんだろーー?!」
「違いまーーーす!」
*つづく*
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