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あいう
447
#cp要素あり
S✩.*˚
117
沙彩
1,129
キャプションをお読みの上、ご覧ください。kr嫌われが起こって、その後の話です。
自傷、暴力やいじめのような描写があります。
ずっとくらい描写が続きます。
こういうお話がかなり好きです。
勢いで書いているので、続くんだか続かないんだか。
cpはpnkrにすることにしました。展開は未定です。
「クロノアさーん……?」
扉を開けて中を覗く。
返事はない。
「……あ」
部屋の奥を見ると、クロノアさんがベッドに寄りかかるようにして眠っていた。
最近は、生活に必要なものを届ける以外にも少しずつクロノアさんと話す時間を増やそうということになって、こうして部屋を訪ねる頻度も増えた。
けれど来てみると、クロノアさんは眠っていることが多い。
今日は膝を立てたまま身体を少し横に傾けて、マットレスが枕がわりになっている。クロノアさんは、ちゃんとベッドで寝ている時もあるけれど、こうして座ったまま眠っていたり、ひどい時には床に倒れるようにして眠っていたこともあった。
眠っているというより、気絶に近いのかもしれない。
夜、ちゃんと眠れていないのかな。
……眠れないんだろうな。
起こさないように扉を静かに閉めて、少し離れたところに腰を下ろした。
せっかく眠れているのだから、ゆっくり眠っていてほしい。この体勢でちゃんと眠れているのかは疑問だけど…。
そう思って眺めていると、ふと気づく。
「……あ」
笑ってる。
クロノアさんの寝顔は穏やかで、安心しきったような顔だった。起きている時には、もうほとんど見られなくなった表情。
何の夢を見ているんだろう。
以前、聞いたことがある。
まだ俺たちがこんなふうになる前、みんなで笑っていた頃の夢だと、クロノアさんは言っていた。
その話をしてくれた時、クロノアさんは酷く泣いていた。
だから、今も同じ夢を見ているのかもしれない。
目を覚ましたら、また泣いてしまうのかもしれない。
それでも。
こんな顔で眠っているクロノアさんを、起こしたくなかった。
俺はそのまま側にいることにした。
俺が部屋に来て1時間もしないうちにクロノアさんが小さく身じろぎをした。
「……ん」
眉間が少し寄って、それからゆっくりと目が開く。まだ夢の中にいるような目が、ぼんやりと部屋の中を彷徨って、やがて俺を見つけた。
「おはようございます、クロノアさん」
「……ぉは……よ……?」
掠れた声。
「眠れました?」
「……うん」
眠そうに目を細める。
それでも、俺の方を見ていた。
「ぺいんと、来てたんだ……」
「はい」
そう答えると、クロノアさんが笑った。
「……そっか」
本当に嬉しそうだった。
「今日は――」
言いかけた瞬間。
「ぁ……」
クロノアさんの顔から、血の気が引いた。
「ご、ごめ……」
手で口元を押さえる。
段々と呼吸が浅くなって、床に崩れ込んでしまった。
「クロノアさん」
「……ごめん……」
「怒ってませんよ」
「……」
「何もしませんから」
肩が小さく震えている。
「大丈夫です。ゆっくりでいいですよ」
辛抱強く何度も声をかけると、ようやく少しずつ呼吸が戻っていく。それでもクロノアさんは膝の上で手を握ったまま、俯いていた。
「…ごめん」
「もういいですって」
「……うん………、」
会話は続かない。
持ってきた荷物から俺が水を渡すとクロノアさんは恐る恐るといった様子で両手で受け取って、少しずつ口に含む。
「……ありがと…」
「どういたしまして」
それから、少し時間を置いた。
今日はいつもよりほんの少し調子がいいのかもしれない。本の話をすると、クロノアさんも感想を話してくれた。
それから、窓の外を見て、今日は天気がいいと言った。
昨日食べたものの話をした時には、それ俺も好き。と、少しだけ笑っていた。
ほんの些細なこと。
でも、以前のクロノアさんを思い出すような瞬間が何度かあって、それが俺は嬉しかった。
「そういえば」
俺はスマホを取り出した。
「今度、みんなで何かやろうって話してるんですよ」
「何するの?」
「まだ決めてないです。どこか行くのもいいし、家で何かやるのでもいいし」
「……楽しそう」
クロノアさんが笑った。
「写真、いいのが撮れたら見せて」
「写真?」
「うん。みんなでいるところ」
「……」
俺は一瞬、言葉に詰まった。
「クロノアさんも、行くんですよ」
「……え?」
クロノアさんがこちらを見る。
「俺も?」
「はい」
「……なんで?」
本当に分からない、という顔だった。
「みんなでやろうって話なんですから」
「…」
「だからクロノアさんも一緒に、」
「……」
しばらく黙っている。
何かを考えているようだった。じっと何かを考え込んで、ぽつりとつぶやいた。
「…楽しそう」
さっきと同じ言葉でも今度は声が少し違って、嬉しいんだと思う。
俺にも、それくらいは分かった。
「じゃあ、…」
「……けど、…ごめん、俺…、ここで待ってる」
「え?」
「みんなで行ってきて」
「いや、クロノアさんも行くんですよ」
「…………ん」
「行きたくないんですか?」
少し間があった。
「ちがう、」
小さな声だった。
「行きたくないわけじゃ、ない、…んだけど」
「じゃあ、どうしてですか?」
クロノアさんは答えなかった。
手をぎゅっと握りしめて、力の入りすぎた指先が白くなっていた。
「クロノアさん?」
「……」
やがて、掠れた声が落ちる。
「……俺がいたら、ぺいんとが楽しめないよ」
「な、…そんなことないですよ」
「……」
「俺が一緒に行きたいから誘ってるんです!」
「……でも」
「でも?」
クロノアさんは目を伏せた。
「……俺、こういうの、ちゃんとできないから」
「それ、どういう意味ですか」
「………わかん、ない」
その答えに、俺は何も言えなくなった。本当に、クロノアさん自身にも説明できないのかもしれない。
「……ぺいんと、楽しみ、でしょ」
「まあ」
「だから……みんなだけで行った方がいいよ」
「だから、なんでですか」
「……」
また黙る。
「俺がいたら、たぶん……」
そこで言葉が止まった。
「…ぺいんとが、…後悔するから」
「俺が?」
「うん」
「何を?」
答えは返ってこなかった。
代わりに、クロノアさんがまた手を強く握る。
「……ごめん」
「クロノアさん」
「俺行かない」
「……」
「その方がいい…から、」
その声が妙にはっきりしていて、俺は、それ以上押せなかった。
「……分かりました」
そう言って俺が引き下がるとクロノアさんの肩が小さく揺れた。
「……ごめんね」
「そんなに謝らなくても」
「……」
クロノアさんは俯いて、そして、ぽろ、と涙が落ちた。
「……あ」
一粒。
また一粒。
声は出ない。
口をきゅっと結んで、ただ涙だけを落としている。
「クロノアさん……」
「ごめん」
「俺、怒ってないですよ」
「………うん」
「本当に、ただ一緒に行けたらいいなと思っただけです」
「……」
「無理なら、仕方ないですから」
「……うん」
返事をするたび、涙が増えていく。
どうしてそこまで泣くのか、俺には分からなかった。
行きたくないわけじゃないと言ったのは建前で、本当は泣くほど行くのが嫌だったのかもしれない。でも今のクロノアさんの様子はそうは見えない。ただ、クロノアさんが自分を責めているように見える。
何をそんなに責めているのかは、分からない。
俺が見えていない何かがある。
あの時と同じ。きっとクロノアさんの中ではちゃんと理由があって、全部が繋がっていて、俺にはその途中が見えていない。
「クロノアさん」
「……?」
「今日は、もう少しここにいてもいいですか?」
少し驚いたように目を上げる。
「…うん」
今度は、すぐに答えてくれた。
クロノアさんの言葉に甘えて、それから俺はしばらくクロノアさんの部屋で過ごした。
何か特別なことをするわけでもなく、本を読んだり、くだらない話をしたり。
クロノアさんは時々笑ってくれた。
俺が話すことに頷いたり、短く返事をしたり。
それだけ。
でも、今はそれでいい。
「…じゃあ、今日は帰りますね」
「…うん」
扉の前まで歩いてクロノアさんにひとつ提案をしてみようと思い立った。本当にただの思いつきだけど、試してみたい。
「クロノアさん」
「ん?」
「また来てもいいですか?」
クロノアさんが少しだけ目を見開いて、それからゆっくりと笑った。
「………うん、待ってる」
さっきまで泣いていたのが嘘みたいだった。
ほんの少し頬が緩んで、目元まで柔らかく細められる。
「!…じゃあ、また来ます!」
「うん」
小さく頷いたのを見届けて俺は部屋を出た。
錠をかける音がカチ、と響いて、またクロノアさんを閉じ込めた。
ついさっきの様子を思い出す。
また来る約束をしてあんなに嬉しそうに笑ってくれるんだ。きっと、俺が部屋に来ること自体はそんなに嫌だとは思っていない…はず。
どうしてほしいとか。例えば帰って欲しいとか、嫌だとか、そういうことをクロノアさんが自分から口にすることはほとんどなくなってしまった。
聞けば答えてくれるけど、どちらかといえば、俺が聞いたことに答える時は、その答えを一生懸命探してその答えで俺がどう思うかまで考えているように見える。
でも俺には、その先で何を考えているのかが分からない。
今日もそうだった。
一緒に遊びに行こうと言った時はクロノアさんは嬉しそうだったのに、最後には泣きながら断った。
俺が何を言っても、クロノアさんの中では別の何かが答えを出している。
それが何なのかが知りたい。
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このシリーズ大好きです。切ない感じの話が好きで何度も読み返して楽しませていただいており、続きを楽しみにしております。
読了しました。眠ってるクロノアさんの穏やかな寝顔と、起きた直後のパニックの落差が切なかったです。「俺がいたら、ぺいんとが楽しめないよ」って泣きながら言うところ、胸がぎゅっとなりました。なのに「また来てもいいですか」には「待ってる」って笑うんですよね……。最後の「錠をかける音」で、閉じ込めてるのは部屋だけじゃないんだなって。クロノアさんの心の中の「別の何か」が気になります。続き待ってます。