起きた、って思ったら、知らない部屋にいて、知らない人たちに囲まれてて、
そしたら、お医者〜んらしき人に記憶喪失なんか言われて。それも、ただの記憶喪失じゃなくて、1日たったら、記憶がなくなっちゃうらしい。
もともと、〜っぽになっていた頭も、すっかり容量いっぱいになっちゃって、時〜も少ないのでとりあえずノートを書いてみます。
呼び名
じゃぱぱ←リーダーさんです!!
のあさん
たっつん
シヴァさん
どぬ
うい←うり
えと←えとさん
ヒㇿ←ヒロくん
もふ←もふくん
ろな←るな
ゆあ〜←ゆあんくん!貴方のことだよ!!
なおきい←なおきりです!ぼくです!!
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そこで、1ページ目の文章は途絶えていた。
目が覚めたら知らないとこにいたから、とりあえず、目の前に置いてあったノートを手に取った。
最後の方は、何を書いてるか分からないくらいに雑な字だった。何か焦っていたのだろうか。
その近くに、こんどは落ち着いた丁寧な赤色の文字で補足?、がされていた。
ところどころ染みがあって字がにじんでいる。
どうやら、俺の名前はゆあんというらしい。
他の名前?は誰なんだろう。
すぐ近くの棚にあった鏡を手に取る。
目の前には赤色の瞳をした少年。
赤メッシュが特徴的だ。
これが自分の姿なのだろう。
ピコン
近くの棚に置いてあったスマホから通知の音がなる。多分自分のものだろう。
赤色のスマホを手に取る。
さっきのはどうやらLINEの通知のようだ。
“じゃぱぱ”と言う人からメッセージが来ていた。
『なおにいと一緒に行くね!!ノート読んでみてね!!』
“なおにい”という名は分からない。にい、お兄さんだろうか。
頭はパンクしそうだが、とりあえず言われた通りノートを見てみよう。
ページをめくった。
ゆあんくんへ
やっほ!!じゃぱぱです。
ゆあんくんが、このノートを開いて82回目になると思います。前ページをみてくれたら分かる通り、ゆあんくんは、事故で脳に損傷を負ってしまいました。ゆあんくんが、俺たちのことを覚えていなくても、大丈夫。1日1日を、大切にしていきたいって改めて思ってます。 じゃぱぱより
“82”というところだけ、何回も消されたような跡があった。きっと、俺が記憶?をなくすたびに書き直しているのだろう。
ガララ
「こんにちは〜!」
「やっほ〜ゆあんくん!」
背の高い赤髪の男の人が手を振っている。
その隣に青髪の男の人が花束を持ち並んでいる。
「こ、こんにちは……?」
俺が挨拶をすると二人が微笑む。青色の人は少し寂しそうに………
「ノート読んでくれた?」
赤髪の人がにこやかに尋ねてくる。
「は、はい…2ページだけ…」
「ありがと〜」
2人がこちらへと歩いてくる。
「えっとぉ…俺がじゃぱぱで、こっちがなおにい」
ノートを指さしながらじゃぱぱという人が話す。
「なおきりです!」
「ゆ、ゆあん…?です」
どうぞ。なおにい?さん…なおきりさんが花束を手渡してくる。なおきりという名前はノートで見た。
「花……?」
「スターチスって言うんですよ〜」
自分となおきりさんが話しているのを、じゃぱぱさんがにこにこと眺めている。
「押し花にすると綺麗なんですよ」
と、目を細めるなおきりさん。
その姿に、綺麗だな。なんて思う。
「作ってみたら?押し花」
「いいですね!!作りましょ!ゆあんくん!!」
じゃぱぱさんの提案にノリノリななおきりさん。
その様子に圧倒され、はいと肯定の返事をした。
……………………
「でも押し花って時間かからない?」
「電子レンジを使うと案外一瞬でできるんですよ〜」
「すご!じゃあ俺食堂にレンジの許可貰ってこよ〜」
お二人さんはゆっくりしてて。とじゃぱぱさんが出ていく。
内心いて欲しかった。2人きりは、何となく気まずかったから。
お互い無言だ。
なおきりさんの目が見れなくて、目線を下に落とす。
「調子、どうですか……?」
沈黙を破ったのはなおきりさんだった。
「げ、げんき……です」
「あの、ノートありがとうございました…」
「ああ、いえいえ」
なおきりさんが赤色で補足してくれたのだろう。
「写真…とか見ますか?」
「写真……?」
「はい、僕らの思い出です」
みたいかも…と返事をする。
なおきりさんは少し嬉しそうに微笑んで、スマホを取り出した。
スマホにはチャラチャラとしたキーホルダーがついていてギヤルのようだ。
ちょっとなおきりさんらしいかもと思いつつ1枚の写真?に目が行く。
スマホケースに挟んであり、男2人が写っていた。なおきりさんと…もう1人。自身がさっき見たもの。
その写真には自分自身が映し出されていた。
2人が仲良さげにピースをしている。
「ゆあんくん!!まずこれ見てください」
「ん〜?」
「これ、スマブラ大会したときの写真なんですけど、ゆあんくんゲーム強くて強くて!!決勝で買って大喜びしてるんですよ〜」
写真を見ると、そこには勝利の画面が表示されていた。
黄色い人が悔しそうにしている。さっきの赤髪のじゃぱぱさんは、黄色い人を慰めてて、ピンクの人とオレンジの人が拍手をしていて、黒い人がなにやら言っているようで、灰色の人がなだめている。白の人と水色の人と紫の賢そうな人が、クッキー?を食べていて、黄緑の人が写真の中の自分と肩を組んでいる。
ふとなおきりさんがいない。と思ったが、なおきりさんが写真を撮ったのだからそりゃいないかと思った。
「なんか、楽しそう……ですねw」
「でしょ〜楽しかったですよ〜スマブラ大会!僕は秒で死にましたけど……w」
「次〜」
「??????」
寝ている。自分が。なぜその写真を自分を見せる?よく分からないが恥ずかしい気持ちになる。
「ふふ、ゆあんくん、よく寝てたんで寝顔の写真いっぱいあるんですよ」
もっと見ますか?と聞かれたが横に首を振った。
それからも、楽しそうな写真を沢山見せてくれた。思い出話も沢山聞かせてもらった。
でも、なぜか、心がチクリと痛んだ気がした。
「ただいま〜!!レンジおっけいだって!」
「お!!ありがとうございます!!」
ゆあんくんいきましょ。となおきりさんが俺の手を取って車椅子へ座らせる。
手が触れることを、どこか嬉しく思い、顔が熱くなる。
なんで車椅子かと聞くと、長い間寝たきりだったりして筋肉が衰えているらしい。
脳に損傷を、負ってるせいもあるのかな、と頭の隅で考えた。
チン♪
高く短い音が鳴り、水分を失いぺちゃんこになった花が出てくる。
「わ!!思ってたよりきれいにできた!!」
と、なおきりさんが歓喜している。
作り方の詳細は見ていないので、なんでチンするだけでぺちゃんこになっているかは分からない。
「綺麗だね〜!」
と、じゃぱぱさんが嬉しそうにその花を手に取る。
「ゆあんくんもどーぞ!!」
となおきりさんに花を手渡される。
触るとすぐに崩れてしまいそうで、最小限の力でそれを受け取った。
しおりにいいかも。と思い、さっき自分の読んだノートにでも挟んでみようと考えた
面会の時間が過ぎて、2人は返った。
孤独な病室に2人の温かさが残っている気がした。
そういえば、と。棚の上においてあるノートを取る。
今日貰った押し花を挟もうとノートを開く。
思わず目を見開く。適当に開いたページには、びっしりと何が書いてあり、”カーネーション”や”ポピー”など、自分が知っているものも書いてあり、ここには花が書いてあることに気がつく。
その花の隣に、意味らしき物が書いてあった。花言葉、だろうか。
ポピー…慰め、恋の予感、いたわり、心の平静
カーネーション…無垢で深い愛
**
**
どこかポピーという花に懐かしさを感じるが、一旦それは置いておこう。
なんで花の名前と意味をこんなにもびっちりと書いてあるのだろう。と疑問に思う。
ふと、自分が手に持っているものを見る。
たしかなおきりさんはこれをスターチスだと言っていた。
自分のスマホを手に取る。
スマホに文字を打ち込む。
書くものがないと思い、引き出しを開けてみる。
案の定、ボールペンが入っている。
震える手で意味を書く。ガタガタとしていて読みにくい字になってしまう。だが、他の字も同様に、震えていたので、今の自分と同じ状況だったんだなと思う。
ぽつり、ぽつりと、目から雫が落ちて、ノートを濡らす。
スターチス…変わらない心、 永久不変、 途絶えぬ記憶: 「remembrance(記憶)」、 永遠に変わらない愛
書き終わったところで、ページをぺらぺらとめくってみる。白紙のページがしばらく続き、最後のページまで来た。
ふつふつと喉が熱くなって、嗚咽が出る。
涙がとめどなく溢れてきて、それを濡らす。
2枚の写真。知らない誰かとの12人の集合写真。知らない誰かと自分のツーショットの写真。
マスキングテープで止められていて、既にいくつかの染みができている。
知らない誰か…いや、自分は知っている。
淡い蒼色の髪。藍色に近い青い瞳。大人っぽい雰囲気。ゆっくり弧を描く口、今日知った彼の性格、全部は知らない、知りたい。なおきりさんのことが、もっと、もっと
いつの写真だ…?知っているはずなのに、頭に靄がかかったように、喉がつっかえるように、何も出てこなくて、涙と一緒に流れていってしまってるようで、必死に泣き止もうとしても、止まらない。
今日のことを、忘れたくない___
ふと、目が覚める。知らない部屋。
目の前に落ちている2枚の写真。その写真向かって呟く
「誰……」
コメント
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うわぁぁぁ😭😭 1日で忘れちゃう…、 意味深だぁ😳 え、ぽぷちゃん上手いのに もっと上手くなった!? 知らないうちに成長してて 嬉しい~🥹 (誰目線) 見習いたい😎✨️ 花言葉エモくて好き🫰🏻💕︎