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🦈視点
「……」
まだ時間はある。プロデューサーに早く報告しないと。 そう思って、こさめが衣装から視線を外した、そのときだった。
「あれ、こさめ?」
「!、」
聞き覚えのある声に、こさめはぱっと振り返った。
そこにいたのは、らんくんだった …なんで?
一瞬そう思ったけど、すぐに思い出す。そういえば今日の番組、ゲストとして俳優さんが来るって言ってたっけ。
「あぁ、そっか。らんくんのことだったんだ!」
さっきまで胸の奥にあった重たい気持ちを隠すように、こさめはいつもの笑顔を浮かべた。
「やっほー!らんくん!ゲストってらんくんだったんだ!」
「あっはは、元気だねー」
らんくんは、いつも通りの笑顔でそう言った。
「じゃ!こさはこさで準備があるから!じゃあな前髪ピンクやろう!!!!」
そう言って、こさはくるっと踵を返した。
早くプロデューサーに報告しないと。衣装のことも、それから…
「ストップ」
「へ?」
次の瞬間、肩をガシッと掴まれた。
強く掴まれたわけじゃない。でも、こさがその場から離れるには十分なくらいの力だった。
「ぁ……」
思わず足が止まる。 ゆっくり振り返ると、らんくんがこっちを見ていた。
「さて、…俺とお話しよっか?その衣装について」
「ひぇ」
背中を、嫌な汗がつーっと伝っていった。
こさはそのまま、半ば強制的に近くにあったらんくんの控え室へと連れていかれた。
控え室に入ると、らんくんはこさめを椅子に座らせて、それから何があったのかをゆっくり聞いてきた。
こさは、隠しても仕方ないと思って、これまでにあったことを全部話した。 衣装のこと、 メンバーとの間にできてしまった距離のこと、 そして前々から感じていた嫌がらせのこと。
「……っ、」
全部話し終えると、こさは俯いた。 らんくんはしばらく黙っていたけれど、やがて小さく息を吐いた。
「なるほどね、アイドルグループ内でいじめ…女性グループだけだと思ってたんだけどなぁ…男性グループでもあるんだ」
「……」
「で、その衣装で番組出るつもり?」
「ぁ、えと…プロデューサーにその、伝えに」
「1人だけ衣装が違う…そんなのネットでメンバー格差がおかしいって番組かプロデューサーが叩かれちゃうよ?」
「う”っ…」
言われてみれば、その通りだった。
このまま何も言わずに番組へ出たら、衣装が違う理由を知らない人たちから見れば、こさめだけ特別扱いされているように見えてしまうかもしれない。
こさめが困ったように黙っていると、らんくんは何かを思いついたように顔を上げた。
「よし、それ貸して、こさめ」
「……え?」
らんくんは、こさの衣装を指差した。
らんくんに衣装を渡した。
すると、らんくんは自分の鞄を開けて、中から裁縫セットを取り出した。慣れた手つきで糸を針に通すと、傷んでしまった衣装を丁寧に縫い始める。
「意外、らんくん手先器用なんだね。ママとパパ、どっちか裁縫得意なの?」
何気なく尋ねると、らんくんは針を動かしながら答えた。
「あー…うち片親で」
「……」
「ほら、入学前にハンカチとかに名前書くでしょ? 親父がかなりの不器用でさ。それで、だんだんと上手くなったみたいな?」
「そっか、…」
その話を聞いて、こさはふと口を閉じた。
(ぁ、じゃあらんくんのお母さんは…)
聞こうとした言葉を、そのまま飲み込む。
そこまで踏み込んでいい話なのか、こさには分からなかった。
「そっか、……」
だから、こさはそれだけ返した。 らんくんは特に気にした様子もなく、黙々と衣装を縫い続けていた。
「……こさめ」
「ん?」
不意に名前を呼ばれて、こさは顔を上げた。
らんくんは、相変わらず衣装を縫いながら、静かに口を開いた。
たこ焼き
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#殺し屋
汐月しづ
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らび
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「辛かったら、いつでも俺に相談して」
「えっ、……」
「こさめってさ、なにかと溜め込んじゃう癖あるでしょ? それに、良くも悪くも空気を読むのが上手い…だからさ、不満とかぶつけにくいでしょ?」
「っ、……」
図星だった。 思わず言葉を失ってしまった
いつも笑っていればいいと思ってた。 センターだから、リーダーだから。みんなを引っ張る立場だから。 自分が弱音を吐いたら、メンバーが不安になるんじゃないかって。 だから、嫌なことがあっても笑っていた。
「……俺、いつでも愚痴聞いてあげるよ。なっちゃん公認、相談しやすい奴だから! ね?」
「……うんっ、あ”りがと、……」
声が震えた。
自分でも、どうしてこんなに苦しくなったのか分からない。 ただ、気づいたら涙が頬を伝っていた。
「……あれ、?」
こさは慌てて目元を拭った。
止めようとしても、次から次へと涙が溢れてくる。 今までずっと、「大丈夫」って言ってきた。 大丈夫じゃなくても、大丈夫って笑ってきた。 でも今だけは、その言葉を言わなくてもいい気がした。
「っ、う”ぅ、ぐす…」
こさは、気づいたら泣いていた。
「よぉし!完成!」
らんくんが最後の糸を切って、衣装をこさに渡してくれた。
「わぁ…ありがとう、らんくんっ ⸝⸝」
受け取った衣装を見てみると、さっきまでボロボロだったところが、綺麗に直っている。
「どう致しまして。さて、そろそろ撮影始まるし行こっか? こさのプロデューサーと俺のマネージャー、俺らのこと探してるかも」
「っ、うん!」
こさは衣装を大事そうに抱えると、らんくんと一緒に控え室を出た。 さっきまで胸の奥に溜まっていた重たいものが、ほんの少しだけ軽くなっていた。
撮影スタジオ。
「すみません遅れました!」
こさとらんくんがスタジオに入ると、そこにはすでにメンバーや他のアイドル、司会を務める有名な芸能人、それから他の出演者たちが揃っていた。 どうやら、こさたちはみんなより少し遅れてしまったらしい。
こさが中へ入った瞬間だった。 メンバーたちが、一斉にこさの姿を見た。 そして目を見開いた。 ほんの一瞬だった けれど、その反応をこさは見逃さなかった。
(…やっぱり)
こさの衣装をあんな状態にしたのは、やっぱりメンバーたちだったんだ。
メンバーたちはすぐに表情を取り繕うと、何事もなかったかのように鼻で笑った。
「リーダー、ちゃんとしてよ本当」
「プロデューサーも言ってやれよ」
「やっぱセンター変えるべきじゃないんですかぁ?笑」
「っ、… …」
胸が、きゅっと苦しくなる。 さっきまでらんくんに話を聞いてもらっていたから、少しだけ大丈夫だと思っていたのに… やっぱり、怖かった
何も言い返せずに立ち尽くしていると
「あはは、すみませーん!」
突然、らんくんが明るい声を出した。
「俺が、あめてゃのこと引き止めちゃって笑」
そう言いながら、らんくんは自然な動作でこさの肩に手を置いた。
「! らんくん…」
こさは驚いて、隣にいるらんくんを見上げた。
そんならんくんを、気に入らないとでも言うように、メンバーたちは冷たい目で見た。
「…へぇ」
らんくんは目を細める。 そして、こさにだけ聞こえるくらいの小さな声で、
「は?なにあれ?ここ大大大大先輩の俺にあの態度ぉ?腹立つぅぅ💢」
と、ぼそぼそ愚痴をこぼし始めた。
「ご、ごめんねらんくん…」
「こさが謝ることじゃないって」
そんなやり取りをしているうちに、撮影開始の合図がかかった。
「今どきのアイドル達! 踊れ! 歌え! 楽しめ! アイドルマスター!」
司会の人が元気よくカンペを見ながら声を張り上げる。
「えー、前回に続き出演していただくグループは、今超絶人気の男性グループ『プルシュ』です!」
カメラがこさたちの方へ向く。 さっきまでの空気なんて、まるでなかったかのように、こさはいつもの笑顔を浮かべた。
「みなさーん! こんにちは!⸝⸝
プルシュのリーダー、あめてゃですっ!」
こさに続いて、メンバーたちも順番に自己紹介をしていく。
そして_
「そして本日初出演、スペシャルゲストは、5歳に子役としてデビューした、今を輝く若手俳優!桃乃 蘭さんです!」
「はーい、こんにちは」
らんくんは、さっきまでの不満なんて一切感じさせない、完璧な笑顔で手を振った。
「今回の企画は! センター争奪! アイドルバトルー!!!!」
司会の声がスタジオ中に響いた。
そう。
今回の企画は、センター争奪戦。
この番組を運営しているのは、こさたちが所属している事務所だ。
最近、メンバーや一部のファンからは「センター、リーダーを変えるべきだ」という声が上がっていた。
その話を聞いた社長が出した答えは
「なら、実力で誰がセンターなのか示しをつけろ」
だった。 だから、今日の番組で勝負する。 こさがセンターであり続けるために。
(…負けられない)
こさはぎゅっと手を握った。
「種目は、ダンス、歌唱、演技、アドリブ、クイズ、表情管理、ファンサービス! ファンサービスでは、らんさんに向けてしてもらうかと思います」
「えっ、そうなの?」
らんくんが少し驚いたように司会を見る。
「そうです!」
司会は元気よく答えた。
「なるほどねー」
らんくんはそう言って、こさたちの方へ視線を向ける。 こさは、その視線を受けながら小さく息を吸った。 ここで負けたら、きっと今まで以上に「こさじゃなくてもいい」と言われる。
だから、
(絶対、負けない)
こさはもう一度、笑顔を作った。
コメント
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明日も一応投稿する予定なのでお楽しみに🙌(次回は紫赤ありまくりです)