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関連人物

セラフ(オメガ)

奏斗(アルファ)

アキラ(アルファ)

雲雀(オメガ)

不破(アルファ)

甲斐田(アルファ)

弦月(アルファ)

長尾(オメガ)


オメガバ。

運命の番という会った瞬間にわかる本能?的なのもあり。

この世界ではあんまり知られていないが、複数の番を持つことも可能。(アルファもオメガも)(創作)

大長編。約14000文字。

関係性

ng=運命の番=sr←両思い→kn=幼馴染=hb=運命の番=fw


僕はセラと結ばれる未来を夢に見ていた。というかそんな未来しかあり得ないと思っていた。

アルファとオメガ。

そんな関係性に僕らはいて、セラもまんざらでない様子だった。

幼馴染であるひばには不破さんという年上の運命の番がいるから、余計一緒にいた。

でも、番になるのは早いと思ってたんだ。

セラは番になるのが嫌というわけではなく、大人になってから。高校を卒業してから。という約束をした。

学校はおんなじだし、何があってもセラの隣は僕だって確信してた。

してたんだよ。あの時までは。

その日も、いつものように屋上手前の階段の踊り場で昼ごはんと食べようと、廊下を歩いていた時だった。

隣を通ったのは転校生で、アルファの”四季凪アキラ”という男。

クラスもまぁまぁ離れているので会話をする暇などなく、「へぇ〜」くらいだった。

セラとアキラは偶然目があったのだろう。セラは崩れ落ちた。

『どうしたの!?セラ!?』

その時の自分は何があったのか全くわからなかった。

でも一つだけわかったのは、

セラが見つめる先にアキラがいたこと。

ひばと不破さんっていう運命の番を見ているからこそ、わかった気がしたんだ。

”アキラとセラが運命の番”、、、??

ひばが言ってたんだ。

「不破さんと出会った瞬間頭にぐってくるんよ!!なんていうか、、、崩れ落ちちゃう感じ!実際に崩れ落ちたし」

あぁ、、、。

認めたくない!!!

「セラ!!保健室いこ!!」

無理やりセラの腕を引っ張って、保健室へと足を運ぶ。

「え、かな、かなと、、、!!」

焦っているセラを無理やり。

僕のセラが、、、。僕だけのセラが!!取られちゃう、、!!

それ以外考えてなくって、無我夢中に走って行っていた。


「___と!__なと!!!かなとってば!!」

セラの大きな声で目が覚めた。ぼーっとしていた目が覚めて、セラの方を見る。

「ど、したっ、の?いきなりっ、走り、出してっ!」

「あ、、、。ごめん」

僕は謝るしかできなかった。

「、、、。別にいいんだけど、さ。さっきの人って____」

「セラ」

セラの言葉を遮って、僕は名前を呼んだ。

そのことにセラは驚いたのか、ビクッと反応した。

「さっきのこと話は無しにしよっか。うん。それが一番いい」

「え、でもっ!!」

「セラ。お願い」

「っ!」

僕がお願いと言ったら、セラは断れない。

セラは僕にたくさんの借りがあるからね。

僕はそんなことどうだっていいんだけど、今回だけは使わせてもらおう。

「、、。ぁ、わかった」

彼は渋々受け入れてくれたようだ。

「ありがとう。そろそろ教室戻ろうか。今日も一緒に帰ろ」

「ぁ、うん!」

帰ろと言った瞬間セラはパァッと明るい表情を見せた。かわいい。こういう姿を誰にも渡したくない。


いきなりなんだったんだろうか。

目が合った瞬間。バチっときた。電撃が当たるみたいな。頭に直接ググッとくるみたいに。

あぁ、これが”運命の番”というものか。

「あ、貴方っ!!」

私がそう言おうとすると、隣にいたお友達が彼を連れて行ってしまった。

「セラ!!保健室いこ!!」

「え、かな、かなと、、、!!」

彼はセラ?と言って、お友達は”かなと”というのか。

知りたい知りたい!!!

セラと呼ばれていた彼の私は一目惚れしたみたいです。

そして、彼と私が運命の番だと確信しているんですよ。



どうしよう。

アキラと呼ばれていた転校生の彼。

一目見ただけでわかる。あぁ、”運命の番”だと。

でも、でもっ!

俺と奏斗は結ばれるって、約束したんだよ。

あんなにお世話になった奏斗を裏切るなんてもってのほか。それに俺は奏斗のことが好きだし、、、。

でも、彼に悪いかもしれない。アキラという男に。

彼からしたら俺は唯一の”運命の番”であることに変わりはない。

でも、俺は正直奏斗と結ばれたい。俺を救ってくれたから。

でも、でも、でも!!彼が俺と結ばれることを望んだらどうしよう。

どうしよう。

断る?そんなことできるか。

俺は彼にとって唯一の存在なんだぞ。

でも。断る以外できない。俺を救ってくれたのは紛れもない、奏斗だから。

でも、でも!

あぁ、どうしよう。




『セラフ・ダズルガーデン(オメガ)家庭内暴力・育児放棄を受けていた』

受けていた、、、。つまり今は受けていないってことですかね。

『風楽奏斗(アルファ)』

なんでだ。こいつの情報が何一つ出てこないんだが。

、、、。裏と繋がっているんでしょうか?もうちょっと調べてみましょうか。

しかし、セラフ、、、。次会う時が楽しみです。




「あ、セラフさん!!!」

振り返るとそこにはアキラさんがいた。

「あ、、、えっとこんにちわ」

「あの!私たちって運命の番だと思うんです!!いきなり番になりましょうってことではないんですが、あだ名で呼び合いませんか!?」

すごい笑顔で、明るい口調で話しかけてくる。

「え、別に、いい、けど、、、」

「!!じゃあ私は貴方のこと『セラ夫』と呼ばせてもらいますね!私のことは、、、『凪ちゃん』。とでも呼んでください!」

気のせいだろうか。『凪ちゃん』のとこだけ暗くなっていたような。

「あ、うん。わか、った」

「では授業があるので!また!!」

嵐のように現れ、嵐のようにさって行った。

眩しいな。



「あっ、セラー!!」

教室の扉で立っていたセラを呼ぶ。

「あ、奏斗」

「今日一緒に帰れるよね?帰ろー!!」

「うん。わかった」

「てか次数学じゃね?ダルー」

「教えてあげるから、がんばろ」

「教えてくれんの!?ありがとー!」

「どういたしまして」

いつも通り。

セラが笑顔なのは僕か古くからの友人であるひばくらい。

まぁ愛想笑いとか作り笑顔くらいならするけど、心からの笑顔は、僕たちだけの特権だった。

ひばも運命の番がいるけど、それでもセラのことを弟みたいに甘やかしていて、そのことだけは不破さんも認めてるらしい。(嫉妬はしているみたいだけど)

とにかく、セラの笑顔も、全部全部僕たちだけのもの。ひばはセラに恋愛感情絶対にないから安心できるけど。(運命の番いるし)

アキラってやつには渡さない。たかが、運命の番だからって。

セラをあそこから連れ出したのは僕なんだよ。



『マフィア一家の嫡男。アルファとベータの両親のもとに生まれた。姉がいた』

なるほど、、、。やはり裏と繋がっていましたか。

姉がいた、、、。何かありそうですね。調べてみましょうか。

『セラフ・ダズルガーデン』

の情報はアレ以外なさそうです、ね。

ならば、名前を偽っているんでしょうか、、?もっと調べる必要性がありそうですね。


「、、、、!!まさか、あの家だったとは」

衝撃的な事実を知った。



「奏斗さん。ちょっといいですか?」

教室に現れたのはアキラだった。

「、、、何?」

「少し。話したいことがありまして」

「いいけど、、」

何の話、、だ?

連れてこられたのは屋上の扉の前。屋上は鍵がかかっていた。

階段の踊り場で、彼は口を開く。

「貴方のことを調べさせてもらいました。家のことも。、、、姉がいたことも」

、、は?姉がいたことは、いた痕跡は全て消されたはず、、、。

「なんでっ!お前それ、を!!」

「、、、少し調べたら出てきました。全ての情報を消すのは難しかったみたいですね」

「、、、何を聞きたい?」

こういう情報を出してくるということは、何か聞きたいもの、欲しいものがあるんじゃないか?

「別に、謝りたいだけです」

「は?」

「貴方の姉が殺された原因に、私の家が関わっているのですから」

どういうことだ、、、?

「貴方は知らないようですね。お話しします。貴方の姉が殺された原因について」


「貴方の姉。風楽カナさんは、オメガだったようですね。そして、冷たい対応をされていたんでしょう。アルファの子が欲しくて、夫と結婚した、お母様にとって害悪な存在でしかなかったようで。

そして、カナさんには許嫁がいました。その許嫁と結婚することが唯一カナさんがあの家から逃れる方法であったと同時に存在価値でもあったのです。

しかし、カナさんは結婚を拒否したのです。それはそうでしょうね。自分を放っておいて、他のオメガと遊ぶような男と結婚したい人などいないと思います。

許嫁も結婚を望んでいたわけではないですが、親から決められた許嫁。結婚しなければ家を継ぐことができない状況で、結婚しないという選択肢はなかったのです。

ですが、許嫁は駆け落ちをしました。家を出たのです。

許嫁と結婚することが唯一の存在価値であったカナさんは、いた痕跡を消され、あの世へと旅立ったのです」

姉が、、、。なんで!!

でも、、、。

「何でそのことと君の家が関わっているの?もしかしてっ!」

「そのもしかしてです。貴方の姉の許嫁は、私の兄でした」

一瞬アキラのことかと思ったが、違ったようで安心した。

「すみません。私の兄のせいで、貴方の姉を死なせてしまい」

深々とお辞儀をするアキラ。しかし、彼と姉の死については全く関係がない。殺したのは僕の両親だから。

「頭を上げて。君と姉の死については関係がないんだから」

「、、、」

「顔を上げて。そして、少し話に付き合ってくれないか?授業は遅れてしまうかもだけどいいかな?」

「それだけでいいのなら」

「ありがとう」

「僕の両親はアルファとベータだった。父さんは毎日女に浮気していて、母さんは僕らに依存、、、。してたんじゃないかな。

ベータとして生まれたため、アルファに愛されなかったから。アルファを産んで、良い子が欲しかったんだよ。頭の良くて、運動ができて、そんな。天才が欲しかったんだよね。

姉がオメガなことくらい知っていて、僕はアルファに生まれてきてしまったんだ。

僕がアルファだとわかった瞬間、姉への対応は変わった。お母さんはアルファが欲しかった。でも、頭と運動ができていたらまだよかったんだ。僕もオメガかベータだったらね。

僕がアルファだから、僕が良い子になれば良くって、だったらオメガなんていらないから。

姉とは全く違った生活をした。

服も、ご飯も、環境も。それでも、姉は僕のことを弟としてみてくれた。たくさん笑った。いじられもしたし、揶揄われたりもした。

それが僕にとっても楽しかった。

次の日、目が覚めると姉がいなくって、その時当時、、、。姉が高一だったから、僕は中二、、。くらいかな?

大人になりつつあり、両親の本音も知りつつある頃だったから、何が起こったか察しはついたんだ。

『あぁ、姉は殺されたんだ』

って。

認める以外に選択肢がなくって、辛かったよ。

唯一の姉。オメガだろうが、姉だったんだよ。唯一血の繋がった、姉だったんだよ」



辛そうに、当時の思い出を反芻するように。

悲しそうに、話をする奏斗。

「ごめんね。ただの昔話なんだ。、、、ひとつ聞きたいことがあるんだけど、言いたいこととは別に」

「なんですか。何でも答えますよ」

「君がもし、セラと番になったらセラのこと幸せにできる?無理させない?泣かせないって約束できるの?」

意外な質問だ。

「当たり前でしょう」

「、、、なら良いんだよ。ところで、この話はセラには絶対に言わないでよね。じゃあ、また」

階段を降りていく奏斗。

「えぇ、また」

踊り場で、私はただ一人寂しく立っていた。

自分の過去を思い出すように。




私には兄がいた。

アルファで女好き。アルファだからという理由だけで甘やかされてきた兄。

私もアルファだが、兄よりも出来が悪いため、ひどく差別を受けていた。

ところで、私の家は諜報員の家だ。

出来のわるい私でも長所があった。

『嘘』

それだけは誰にも負けられない気がするくらい上手にできていた。

だから、愛想笑いも、両親の心を掴むのも容易かった。

そして、私が誰なのか『四季凪アキラ』とは誰なのか。

わからなくなっていた。

そして、兄が駆け落ちをし、私が家を継ぐ羽目になった。

それをきっかけに、私も家を出た。

家出。当時中二の私だが、諜報員というのもあり、人を偽るのは容易いことで。

こうして、高校にもいられている。

しかし、ふと思うのだ。

兄はどこへ行ったのだろうか。と。

もしも兄が家を継いだのなら、私は家出などせずに済んだのではないか。

自分が誰か見失うこともなかったのではないか。

今となっては関係のないことだが、時々気になってしまう。




「はぁ、、、」

ため息をつき、私も教室へ足を運んだ。




「奏斗。どうかした?」

帰り道。ぼーっとしていたのかセラに尋ねられた。

「いや、なんでもないよ!そういえばさ、カフェ寄って行かない?良いところ見つけてさー」

「、、、行く」

微かな笑顔を見せるセラ。美味しいもの好きだもんね。


「これと、これください」

「わかりました。しばらくお待ちください」

注文をし、二人隣で座る。(カウンター席ね?)

「、、、セラ。今から大事な話するよ」

「何?」

「もしも、セラがねアキラと番になりたくて、でも、約束とか、助けてもらったこととかを思って、僕と番になろうと思ってるんだったら。僕のこと考えなくて良いから。幸せになりなよ」

えっ?

なんで?俺は奏斗のことがっ!!

「アキラと少し話をしたんだ。良い人だった。セラのこと幸せにできると思う。だかr___」

「奏斗!!俺は奏斗のことが好きだよ。全部全部。凪ちゃんには悪いけど!俺は奏斗と番になりたいっ!」

涙が溢れても、俺は言葉を繋げた。

「僕だってなりたいよ。番になりたい。でも前から言おうと思ってたんだ。僕たちは結ばれないんだよ」

「っ!!なんでっ!!」

「言えない。ごめん。セラにも言えないんだ。あのさ、もう会えないと思う。だから言いたかった。お幸せにって」

奏斗の目からも涙が溢れていた。

サファイアのような美しい瞳から。

ガラスのように光り輝いているのが涙でくすんだ俺の目からも見えていた。

「何で!俺は、奏斗と!番になるのを!夢みて!」

「騙すようで悪かった。でも、ごめんね。僕だって結ばれるつもりだった。でも、あの日から無理になっちゃった」

何で。何で!!

「明日から学校も行かない。幸せになってね」

行かないでってばぁ!!

「奏、、斗!!」

「さようなら」

手を振って彼は店を出た。

俺はその背中を追うことができなかった。

だって、奏斗の背中は来るなと言っているようだった。

彼が決めたことなら俺も受け入れるべきなんだろうけど、俺はその事実を受け入れられずにいた。

店員から運ばれてきたコーヒーとパフェ。

奏斗と笑って食べる予定だったんだ。

甘いはずのパフェは、ちょっぴり涙の味がした。



数年後

あれからというもの、俺は生きる気がしなくって。あの日々に戻ったようにすら感じた。

凪ちゃんは事務所を開いて、俺はそこのエージェントとして働いて生計を立てていた。

そして、凪ちゃんと番になった。

無理やりではない。彼は、奏斗がいなくなった俺を慰めてくれて、寄り添ってくれた。

いきなり距離を詰めることなどもせずに、一緒にいてくれたから。

でも、心のどこかに”奏斗”がいる。

凪ちゃんのことも好きだよ。でも、奏斗、、、。

俺を絶望のどん底から救い出してくれた奏斗が、消えたんだから。

辛いよ。苦しいよ。




「痛いっ!!ごめん!ごめんってばぁ、、、(泣」

毎日のように暴力を受け、毎日のように怒られる。

ご飯も、服も全てが満足に与えられずに、過ごしてきた。

原因なんて分かりきっている。

アルファとアルファの子供なのに俺がオメガだからだ。

なぜアルファとアルファが結婚したかというと、アルファを確定に生むためなんだと。

愛人がいてもいい。浮気をしてもいい。だから結婚しろ。

そういう関係だったんだ。

で、生まれたのはオメガの俺。

お母さんはそのことで俺にとってのおばあちゃんやおじいちゃんに怒られていて、毎日のストレスを俺に充てている。

学校には通わせてもらってるのが唯一の救いだった。

中学一年生の春。

奏斗と雲雀に出会った時期。

神様かと思った。

一瞬で俺をあの家から救い出して、一人暮らしの準備も手伝ってくれて、俺からしたらほんとに命の恩人なんだよ。

「僕、セラのことが好きなんだ。だから、番になろう。まだ中学生だから早いけど、高校卒業したらね。勿論、セラが良ければね」

中学一年の最後にくれた言葉がどれだけ嬉しかったか。奏斗にも、凪ちゃんにも、雲雀にも、わからないだろう。




「セラ夫。こちらの依頼お願いしますね」

「おけー」

凪ちゃんから渡された依頼。

猫を探して欲しいんだと。いつも通りもらった情報を頼りに探しに行く。

そして、ふと目に入る。

『Zeffiro』というカフェ。

(そういえば雲雀がバイト始めたって言ってたな。英語表記だからどんな名前か忘れたって言ってた)

言い忘れていたけれど、雲雀とは今でも仲がいい。

窓から少し覗いてみる。席も空いてて、居心地がとても良さそうなお店だ。

そこに雲雀もいた。

でも、それ以上に衝撃的なものを俺は見てしまった。

(何で、、?!?)

雲雀と楽しそうに会話していたのは、紛れもない、風楽奏斗だったのだ。



その日は経営しているカフェに遊びにきていた。

幼馴染であるひばと楽しく会話していた。

すると。

「か、なと、、、?」

ガチャという音と共に、あの日別れたはずのセラがいた。

「何で?あの日、俺から離れたっの!?ねぇ、、、、ねぇってば、、、」

崩れ落ちていくセラ。

僕の服を掴み、悲しげに言葉を漏らす。

「、、、、ごめんね」

僕ができるのは謝ることだけで。

「なぁこっちきな。二人っきりで話し合った方がいいよ」

「ひば、、。こっちの事情わかってるでしょ?」

「勿論な。でも、話し合わねぇとだめだろ。こういう未来にしたのはあの日あぁいう選択をしたお前だろ?」

「っ、、、」

確かに東京という狭い空間で、もう二度と会わない。なんて不可能だったのかもしれない。

「ほら、セラおも。誰も入れないようにしとくから」

「、、ありがと。雲雀」

ひばがセラを連れていく。僕はその後ろを歩いて行った。




よかった。

あの日から、幽霊のように魂が抜けたようになったセラお。

アキラと番になって、元気にはなってきたが、それでも前みたいに明るくはなっていなかった。

俺は奏斗と仲良くしていたから、セラおに、会わせられなかったことが辛かった。

ならば、偶然を生み出せばいい。

今日、アキラから聞いたけど、俺のカフェの前を通り過ぎるかもしれない。

なら、奏斗を招いて、見ればいい。

窓から見える位置に奏斗をすわらせて。

それで気づかなかったら、それはそれだ。

まず、カフェの窓を確認するとは思えないからほんとに気づいたらいいなくらいの気持ちだった。

でも、気づいたようでよかった。

奏斗の家の事情もわかる。でも、それ以上にセラおが可哀想だ。

話し合って欲しい。

俺ができるお前への罪滅ぼしはこれだけなんだ。

あの日以来、あいつをセラおに、会わせることが、元気づけることができなかった俺の罪滅ぼしをこれでさせてほしい。

(ごめんな。俺ができるのはこれだけなんだ)

力のない俺をひどく恨む。




「かな、と、、、。どうして、、、?」

僕は何にも言えない。

どう言えばいいんだ?

表の世界で明るく生きているセラに裏の世界の話なんてできない。

「ごめんね。セラにも言えない話なんだ」

「っ!何で、、俺、、かなと、のこと好きなんだよ、、?」

「でも、番見つけたんだね。よかった」

「、、、、」

おそらくアキラだろう。番の相手は。

いいんだ。これで。

表の人は表の人と。

裏の人は裏の人と。

番の関係を結べばいいんだよ。

「でっ、でも!何で別れたかくらい、話してくれても、よく、ない、、?」

「言えないんだってば」

「俺っ。どんな奏斗でも受け入れる、から!」

「、、へぇ、、」

言ってしまおうか。

そうしたら心は軽くなるだろうか?

「もしも、僕がさ。人を殺すような酷い奴でも?人が殺されていく様を冷たい視線で無視するような残虐な奴でも?僕のこと好きだって。受け入れてくれるの?」

試すような口調で。彼に問いかける。




奏斗が放った言葉には迷いがなくって、信じられないけど、事実なんだと。受け入れるほかなかった。

「それでも、いいからっ。隣にいてよぉ、、、」

どんな奴でもよかった。

あの日俺を救ってくれた奏斗に変わりはないから。

愛がなくてもいい。番じゃなくてもいい。

だから隣にいて欲しいんだ。

「、、、ほんとに?」

「う、ん。酷い奴でもあの日俺を救ってくれたのは奏斗じゃんっ!愛してなくてもいいから。番じゃなくてもいいから。友達としてでもいいから。何なら都合のいい奴でもいいから。お願いっ!俺の隣にいて。お願いだからっ」

涙を流して、叫ぶように。

そんな俺に奏斗は驚いたのかこちらをじっと見つめてくる。

「隣にいるだけなら。それ以上の関係にはなれない、からね」

その一言だけで。俺はどれだけ救われたのだろうか。



「、、、凪ちゃん」

依頼から帰ってきたセラ夫は何だか気まずそうだった。

知っていますよ。

これが私の片思いなことくらい。

セラ夫と奏斗が両思いで、奏斗が裏の人間なため、番になることができなかった不運な彼ら。

奏斗が消えて以来私はずっと彼に寄り添ってきたが、彼の心の奥底には奏斗がいたのだろう。

「何ですか?セラ夫」

たらいが依頼内容を聞いてきたり、あらかた想像はできますよ。

(奏斗と話してきたのでしょう?)

これで別れ話を切り出されたらどうしようか。私は憎しさでセラ夫と心中してしまうかもしれませんね。

「奏斗と会ってきた。奏斗は、隣にいてくれるって言ってくれたんだけど。でもさ、。俺奏斗と番に、なりたいっ、、、」

知ってますよ、、!!

そんなことくらい。

番になってから何度か体を重ねたことがありましたけれど、その度に奏斗の名前を呼んでいた事も。

私のことは、、?なんで、置いていくんですか?

私たち運命の番なんですよ?神様が導いてくれたんですよ?

何で、何でっ!!

「奏斗はいいって言ったんですか?」

「っ、言ってないんだけど、先に、凪ちゃんに許しをもらうべき、かなって」

何なんですかっ!!!

私はあなたのことを愛してるんです。

ただただ、会うタイミングが遅かっただけで。

ねぇ、、、。何で何ですか、、!?!?

「セラ夫っ、奏斗を交えて、話をしましょう」

「、、、わか、った」

そう言って事務所を出るセラ夫。

あぁ、、こんなに虚しい思いになるのなら。

貴方に一目惚れなんかしなければよかったのでしょうか?





「、、、、」

沈黙が流れている。

なぜか俺も呼び出されているんだ。

情報を整理しよう。

セラおとアキラは運命の番。そして、番の関係性。

しかし、セラおは奏斗のことが好きで、奏斗もセラおのことが好き。つまり、両思いだ。

俺はなぜか奏斗に呼び出され、ここにいる、が!

場違いすぎんだろ。

叶わない恋をしている3人と、不破さんという運命の番がいる俺。

俺から言えることは何もないと思うんだが。

「、、、セラ夫、奏斗と番になりたいと言っていましたが、奏斗。それでいいんですか、、?」

「いいわけないでしょ。アキラは僕の事情知ってるでしょ?僕だって、、、」

それ以上は小さすぎて声が聞こえなかった。

「何で、俺には話してくれない、の?雲雀は知って、る?」

もちろん。知ってるとも。

だからこそ、胸が痛む。

「、、知ってはいるけど」

「っ!!何で、俺には言ってくれないの!?ねぇ、ってば」

言えるはずがない。

俺が知っているのは、俺もそっち側の人間だから。

でも、純粋に表の人間であるセラおには絶対に言えないだろう。

「セラおー。言いたくても言えないことってこの世にたくさんあるんだよ?言ったらもう会えなくなるようなこと。今回みたいに偶然、、、。なんてことが一切なくなっちゃうの。だから、奏斗は隠してるんだ。言いたいだろうね。でも、言ったらほんとに二度と会えないから言わない」

”それが一番奏斗にとっての最善策だから”



それはつまり俺のことを少しでも想っていることって捉えていいんだよね。

「セラ。アキラ。二人はどうしたい?僕はできる範囲で君たちの幸せを願うし協力する。だから教えてほしい」

奏斗と番になりたい。

凪ちゃんと一緒にいたい。

わがままだなぁ、、、。




「私は、セラ夫と一緒にいたいです。結ばれたいですよっ!神様が導いた運命の番なはずなのにっ!貴方がいたからっ!私はセラ夫に好きだよって言ってもらえないんですよ、、、!」

そう私の素直な本音が飛び出てしまった。

もう戻れないんだろう。

貴方なんていなければっ!

貴方がセラ夫と出会わなければっ!!

私はセラ夫と結ばれていたんですよっ!!!

「あっ、凪、ちゃん、、、」

何か言いたげな表情をするセラ夫。

何なんだよ!!!!!!!

「何か言いたいことがあれば言えばいいんじゃないですかっ?奏斗と番になりたいんでしょう?だから、番を解消させてほしいって!!そう思ってるんでしょう!??!」

叫び散らかしてしまった。

私らしくない。

しかし、想い人が他の人に恋をしていて、その恋が実りそうな今。

平然を保てるわけがなかった。




「っ、、、」

どうしよう。怒らせてしまったんだろうか。

俺が、もしここで、

凪ちゃんとも、奏斗とも、番になりたいって言ったら。

わがまま。だと言われるだろう。

そんな人と一緒にいたくない。って言われて捨てられるのだろうか、、?

それだけは嫌だ。絶対に嫌だ。


「、、、。なぁ二人がセラおの番になるっていう選択肢はないんか、、?」


「「「え?」」」

「いや、だからさ?奏斗とアキラが、セラおの番になればいいんじゃない?多分やけどさ。セラお。二人と一緒にいたいんやろ?だったら番になればいいやんっていう、、、。俺なんか変なこと言ったか?」

いやいやいやいや。

何言ってるんだこいつ????

番は一人しか、、、。



「ありゃ、みんな知らないんか?番って複数いてもいいんだぞ?」

「いやいやいや、そんなこと一回も聞いたことありませんけど?」

「でも不破さんの友達にな。甲斐田さんって人がいるんだけど、その人の番にもう一人アルファいるらしいで。電話したろか?」

「、、、ほんと、、?」

もしも、雲雀の言葉が本当だったら。

俺のわがままは叶えられるかも、しれない!



「もしもし〜〜」

『ん〜?雲雀くんか!どしたの〜?』

「えーっと、ややこしいんですけど、俺の友達、、ここにいるんですけど、

AさんとBさんは運命の番なんですよ。で、BさんとCさんは昔仲が良くって、番になりたい仲なんですね?ちな、Cさんはそっちの人です。で、BさんはAさんとCさんと番になりたい。って関係性なんですけど、伝わりました?」

『何となくね?うん。で、何か聞きたいことあるの?』

「で、俺が番になればいいじゃん!って言ったら、複数の番を持てること知らないっぽくて、、、。本当かどうか確かめるために聞いたって感じです!」

『あぁねぇ〜〜。実際に複数の番を持つ人は少ないから知られてないんだよねぇ、、、。今ちょうど二人いるからさ。ビデオ通話にして証明してあげるっ!』

「ありがとうございます!!」


ビデオ通話に入れ替わると見覚えのある人が写った。

「な、長尾先輩、、!?!?」

『お!セラフじゃ〜ん!お久〜〜』

「えっ!?弦月先輩なんですか!?」

『おwアキラくんじゃんwwお久しぶり』

俺が高校時代、バスケ部の先輩である、長尾景先輩がいた。

「え?アキラ知ってるの?」

ひょこっと入ってきた奏斗。

『ww奏斗くんまでいるのねwお久しぶり』

「お久しぶりです!生徒会の時はとてもお世話になりました!!」

納得。

凪ちゃんも、奏斗も生徒会に入っていたからなのか。

『えーっと、自己紹介する、、?』

「あー、一応お願いします、、、」

『じゃ、僕からね。甲斐田晴って言います!アルファで、景と番でーす!』

『じゃあ、僕も。弦月藤士郎って言います。アルファで、晴くんと同じく景くんと番です』

『最後に俺な。長尾景だ!!オメガで、藤士郎と晴と番です!!セラフとは高校で部活一緒だったよな』

「はい。久しぶりに会えて嬉しいです!!」

部活で一番尊敬していた先輩が、長尾先輩だ。

切り替えが早くて、真面目で、そして、バスケクッソ上手い。技術面でも精神面でもね。

「じゃあ、俺からも。渡会雲雀です。アルファで不破さんと番です」

「僕は風楽奏斗って言います。アルファです」

「私も。四季凪アキラです。奏斗と同じく、アルファです」

「えっと、セラフ・ダズルガーデンって言います。オメガで、長尾先輩にはたくさんお世話になりました」

そういい、一礼をした。

『なんかー、晴くんから聞いたけど?番を複数持てるかってことでしょ?』

「はい!長尾さんが良ければ、首の噛み跡見せてくれませんか?全然嫌だったらいいんですけど!!」

『別にいいよ〜。んな恥ずかしがるようなもんでもないし。後輩の悩みがこれで解決するなら安いもん!』

そう言って、長い髪の毛を避けて、首の噛み跡を見せてくれた長尾先輩。

確かにそこには二つの噛み跡があった。

『こうやって、二つの噛み跡つければ二つの番を持てるよ。これはオメガに限らず、アルファもだよ〜』

優しい口調で教えてくれる弦月さん。

本当なんだっ!!!!




一気に表情が明るくなるセラ夫。

「ありがとうございます!!」

たらいも深々と感謝の意を示した。

『全然w僕何もしてないしぃ、、、。てか、相談なら乗るよ?悩みとか。オメガとかの話も僕詳しいし』

「、、、では、運命の番について色々、教えてもらいませんか?」

『いいよー!!』

快く返事をしてくれた甲斐田さん。

運命の番って。何なんだろうか。

『運命の番はね。本能というか、相性が一番いい人だね。番になったら他の誰よりも合ってるんだ。子を残す機能も一番発揮される相手。本能、、だから。いうの難しいんだけど、合った瞬間に脳が「この人だよー」って教えてくれるんだ。僕も出会ったことはないんだけどね、、、。ちなみに、運命の番の二人に番ができた瞬間から、その人たちは運命の番ではなくなるんだ』

運命の番は、本能に近く、相性が一番いい。

なら、なんでセラ夫は、私のこと、、、、!!

「、、、運命の番に出会う前に好きな人ができたらどうなるんですか?」

奏斗が深刻そうな顔で言った。

『ん〜、多分好きな人が優先されるんじゃない?たとえ本能だとか言っても、相性がいいだけで、一目惚れーだとかそういうのはなかったはずだよ』

相性がいいだけ。

その言葉に胸がズキっと痛む。

「ありがとうございます、、、」

小さな声でしかでない感謝の言葉。

『ちょっと力になれた、、かなー?じゃあねー!!』

『あっ!LINE交換しようぜ。セラフ!!QRコード出してくれん?』

「あっ、そういえばしてませんでしたね。わかりました!」

少し拙い手の動きで、LINEのQRコードを晒すセラフ。

『よしっ!できたな。お前らはしてたの?』

『してるよw』

『よし、なら今度こそ。じゃあねー。雲雀くんとみんなでまた遊ぼー』

「遊びましょう!では!」

そう言って通話は切られた。

「、、、どうする?」




ひばの言葉でどうしようとまだ悩む。

「、、俺!わがままかもしれない、けど、二人と番に、なりたいっ!二人とも、好きっだから」

セラの言葉。セラは僕たちの顔をしっかりと見て言った。

「、、、でも___」

「いいんじゃない?奏斗。お前はそろそろ幸せになった方がいいと思うよ」

「、、セラ夫がそれを望んでいるのなら、私もできる限り協力しますよ」

「、、俺にもできることあったら言ってね。頑張るからっ!!」

「み、んな、、、、」

優しいなぁ、、、、。

「セラ夫。私のことも愛してくれますよね?」

「もちろん。あの時寄り添ってくれたのは雲雀と凪ちゃんだけだったからね」

「俺さー、実はあの後も奏斗とあってたんよ。そのことを言わずにさ、お前に会うって結構胸が苦しくて。なぁ、これで罪滅ぼしできたかな、、、」

「十分すぎるくらいだよ」

「、、セラ。こっちに来て」

「?うん」

がぶっ。

セラの首を齧る。元々あったアキラがつけたであろう噛み跡に交わるように。

最初は驚いたセラだったが、やさしく呟いた。

「もう離れないでよ」

「うん。ごめんね」

こうやって僕らは結ばれた。




今は3人で楽しく暮らしている。

今ではアキラとも意気投合していて、毎日が幸せだ。

裏から完璧には抜け出せていないけれど、ちょっとは表の世界を歩めている。

やっと結ばれたね。



幸せ者だ。

大好きな二人に囲まれていて。

こんな俺も愛してくれる人に囲まれていて。

長い道のりだったけど、やっと一緒にいれる。




幸せな時が流れていく。

好きな人と結ばれて、二人っきりではないけど一緒にいられる。

やっと私のことも愛してくれた。

永遠に私たち一緒にいましょうね。

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