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(どんな人にもふさわしい伴侶や配偶者がいる……みたいな意味じゃなかった!?)
まだ悦子には晴永と自分が付き合っていることは言っていない。
なのにそんな風に言われてしまったことに驚くと同時に、ちょっとだけ嬉しかった。
「絶対大変でしょ」
悦子が断言する。
「だって専属だよ? 新沼さんのスケジュールとか全部把握しないといけないんでしょ? 課長と部下をしてた頃とは比べ物にならないくらい、彼のこと、把握してなきゃいけないでしょ。ある意味夫婦だよ、夫婦!」
(悦子ぉぉぉぉ)
瑠璃香はさっきから悦子の言葉にドキドキしまくりなのだが、幸い言った本人はもちろんのこと、彼女の隣にいる仁人も気付いていないようだった。
「そ、それはそうなんだけど……藤代さんや秘書課の先輩たちが色々教えてくださってるし……それに……」
「それに?」
仁人の問いに、瑠璃香は慎重に言葉を選んで返す。
「社長補佐も……凄く協力的なの……」
グラスについた水滴を指先でなぞる。
「あとね、私、藤代さんから打診をされた時、一生懸命考えて……最終的にはやるって……自分で決めたから」
二人が黙って瑠璃香を見詰めている。
「だからね、精一杯頑張ってみたいと思ってるの」
まだ秘書課へ異動したばかりで、今は先輩たちについて仕事を覚えている最中だ。晴永の――新沼社長補佐の専属秘書として本格的に動き始めるのは、もう少し先になる。
でも、誰かに押し付けられたことじゃない。瑠璃香自身が、悩んで、迷って……それでも最後には、自分で選んだことだから……。絶対に晴永の役に立てるようになる! と心に決めているのだ。
「そっか」
悦子が柔らかく笑った。
「じゃあ応援する」
「俺も。まあ小笹なら何とかなるだろ」
「何、その雑な励まし方」
「お前が覚悟を決めてんなら、ちゃんとやれるって信じてるってことだよ」
「本当に?」
「……んー、多分?」
「日下!」
笑いながら睨むと、仁人が楽しそうに笑った。
***
それからしばらくは、運ばれてきた料理をつまみながら、他愛のない話に花を咲かせた。
仕事のこと。
互いの部署の近況。
最近あった、ちょっとした出来事。
話題は次から次へと移り変わっていく。
「そういえばさ、田貫くんたちはどうしてる?」
「元気元気。俺たちみたいに同期三人でよくつるんでる。――新沼さんに続いて、お前までいなくなって寂しいってさ」
「本当?」
「うん。佐久さんなんて、小笹先輩に聞けばすぐ分かったのにーって、しょっちゅう言ってるよ」
「そっかぁ」
自分がいなくなったあとの企画宣伝課も、変わらず回っている。
当たり前のことなのに、少しだけ寂しくて、それ以上にホッとした。
「でも保城くんは結構しっかりしてきたよね」
「あー、分かる」
「田貫もな。最初に比べりゃだいぶマシ」
「日下、別部署のくせに相変わらず上から目線だねぇ」
「事実だろ。っていうか……三人のうちの誰か、ゆくゆくは営業に、って話も出てるし」
「うそ」
「ホント。今んとこ、うちとしちゃぁ保城が一番有力候補だけど……河瀬課長がいい顔しない」
「案外佐久さんに白羽の矢が立ったりしてね?」
悦子が笑って言う。瑠璃香はちょっとだけ考えて
「私は営業なら田貫くんが一番向いてると思うな?」
とつぶやいた。
「えっ!? 俺、田貫が一番可能性低そうに思ってたんだけど」
「ふふっ。まだまだ人を見る目がないなぁ、日下は。あの子、放っておけないところあるでしょう?」
「……あー、まぁ」
「分かる。私、企画宣伝課じゃないけどつい助けたくなっちゃう」
悦子の援護に、瑠璃香はにこっと笑う。
「ほらね、そういうところ。そういう子の方が取引先で可愛がられると思うもの」
「なるほど!」
悦子がポンっと手を打つのを横目に、仁人が納得がいかないみたいに渋い顔をする。
「日下もだったじゃん」
「は?」
「新人時代、私たち三人の中で一番問題視されてた」
「ああ、確かに!」
瑠璃香の言葉に悦子がクスクス笑う。
「失礼だな、お前ら」
「事実だし」
悦子が言って、瑠璃香がそれにフォローを入れる。
「でも……一番先輩たちから可愛がられてたのも日下だよ」
「は?」
「メンターの先輩が言ってたもん。日下はなんか憎めないし、放っておけないところがあるって」
瑠璃香の言葉に、悦子がうなずいて、仁人は思案するみたいに眉間にしわを寄せて、ちょっぴり温んだ残りのビールをぐびりと飲み干した。
そうしてポツンとつぶやく。
「……小笹が藤代さんたちから秘書課へ、って見込まれた理由、分かった気がした」
「え?」
瑠璃香は「新しい飲み物、頼む?」と仁人へ差し出しかけていたメニュー表を手にしたまま、小首をかしげた。
コメント
2件
同期飲みの3人空気感、たまらなく好き! るりかちゃんの新人くんたちを見る目、絶対確かだと思う! たぬきくんはるりかちゃんの見立て通りきっと営業に行くに違いない!とか思っちゃった🤣
うわああ第139話、読み終わったよ〜!!😭💕 悦子の「ある意味夫婦だよ!」がまさかここで炸裂するとは思わんくてギュンってなった!!瑠璃香が自分で決めた道だって言い切るシーン、すごく強くなったなあって感動したよ…🥺✨ 最後の仁人の「理由わかった気がした」って意味深すぎん?!ここで終わるのずるすぎるよ〜〜続きが気になりすぎて今夜眠れないかも!次話まだかな?!🌸
#極道
鷹槻れん

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