眩しい朝。目が焼きつきそうなほどに暖かい陽射し。秋とは思えない麗らかな陽気の日。私が生まれた日。そして、私が天涯孤独になった日。
「……あぁ、いい天気だわ。少しお散歩にでも行こうかしら」
がちゃ、と扉を開けると、朝食の良い匂いが漂ってくる。そういえば、今は朝食の時間だった。すっかり忘れていた、先に朝食を済ませてしまおう。
「お早う御座います」
「おはようなのリリンさん!」
「おはよう、エマさん。いいお天気ね」
「そうなの!今日はとってもいいお天気なの!お花も喜ぶなの〜!」
庭師であるエマさんはいつでも朗らかで明るく、元気のある人。私の元気がないとき、いつも最初に気がついてくれて、励ましてくれる人。
「あら……?」
かたん、と自分自身の席に着くと、普段と少し献立が違う。普段は毎日同じメニューが出て、別のものが食べたい時は自身での申告性のはずだ。しかし、私は申請をしていない。他の人のものと間違えられたのだろうか?
「あら、それ!エマと私で一緒に作ったのよ」
「エミリーさん…」
現れたのは医師であるエミリーさん。
「今日、たしかリリンちゃんが誕生日だったと思ってね、荘園主に掛け合って、私たちで作らせてもらったの。……苦手なものとか、入ってなかったかしら?」
「はい、大丈夫です。全部……好きなものばかりで。とても嬉しいです」
「なら良かったわ。ふふ、召し上がれ」
「……頂きます」
一口食べて、思わず顔を上げる。
「………!美味しい…!」
「よかったわ…。お口に合わなかったらどうしよう、と思っていたの…。お口にあったようでなによりだわ」
思わず口いっぱいに頬張ってしまいそうになるが、流石にお行儀が悪いのでやめておこう。
朝食後、ふらっと中庭に出る。
暖かな日差しが気持ちいい。
備え付けのベンチに座って花を眺める。エマさんが丹精込めて育てている花たちは、柔らかな日差しと優しい風に揺られて美しく咲いている。
「……おやすみなさい」
あぁ、このまま寝てしまおう。
誰にも起こされないまま、しあわせなゆめを。
愛したあの人の温もりを、愛してあげられなかったあの人の温もりを、全部、この腕の中に。
愛おしくてたまらない温もりを、匂いを、声を、忘れてしまわないように。
「ねぇ……ルーカス……。私は、どこで道を間違えたの…?」
なんて、問いかけても何も変わらないというのに。あぁ、私はいまだに彼に囚われ続けている。苦しくて仕方がない。
愛してやまない彼は、私のことを忘れてしまった。それでもいいよ、私は覚えているから。貴方のことを待ち続けていたから。
でももう………つかれちゃった。
「さようなら、愛しい人。愛していたよ…」
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