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「いないんだ。なら、――俺と結婚して」
ブ――――――――――ッ
「……っな……なん……ッゲホ……ゴホッ……!」
「落ち着けってw」
「落ち着けるかぁッ!!」
てか、今の聞き間違い?俺の耳がおかしくなったの!?
「っ……い、きなり結婚てなに……頭大丈夫?」
「俺、男だし!」
咳込み過ぎて涙目になりながら隣を見遣ると、
「まぁ、言い方に語弊があったけど」と、らだ男は続けた。
「正確には、俺の結婚相手のフリをして」
「……フリ??」
らだ男の話は、こうだった。
彼の交友関係での有名な某企業の社長が、らだ男をいたく気に入り、是非娘と会わせたいと言ってきたのだという。
つまりは、お見合いということなのだが、らだ男にそんな気はないので、もちろん秒で断った。
しかし、娘の方も、それはもう乗り気で、一度会うだけでもとしつこく懇願してきたため、
実は密かに結婚を約束した相手がいると嘘を吐いたというのだ。
それで話は終わったかと思えば、相手もそう簡単には引き下がらず、
本当かどうか確かめさせてくれと要求してきたらしい。
つまり、断る口実じゃないかと疑っているということなのだが――
「面倒くさいから放っておこうかと思ったが、逆にいい機会かとも思って。そいつらを納得させられれば、他のヤツにも同じ手が効くでしょ。そうすれば、別の面倒な話に巻き込まれなくて済む。一石二鳥じゃない?」
ということは、らだ男を狙うハゲタカのような女は他にもたくさんいるということか――いや、それはさておき。
「俺男だよね!なんで!?」
「あと、話が広まったら、世間は大激震だよ。今のらっだぁはそれだけ――」
人気者なのだから。らだ男にも、その自覚がないはずはない。
「まだ公表前だから他言無用だとでも言っとけば、そんな大事にならないよ。ぺいんとが困るようなことにはしない」
「でも嘘は嘘なんだから、バレたらお終いだし、第一、何で男の俺が!」
「ぺいんとと俺は、旧知の仲だし。そいつらと一緒に食事して、下手なボロが出ることも無いし」
「あと顔可愛いし女装イケるだろ」
「そういう問題!?」
結婚とか、フリとか、事情がどうだとしても、バカにされているとしか思えない。
だって相手は、らだ男だ。未だ完全には捨てきれない、初恋の相手なのだ。
らだ男のことなど何とも思っていなかったら、むしろ笑ってOKできたかもしれない。
でも無理だ。断固、お断りする。
「いや、ほんと絶対無理。演技とか超ヘタだし、即バレだよ。悪いけど、他の人に頼んで」
「他に適任のヤツがいない…」
「…………」
確かに、らだ男には女友達と呼べる相手はいなさそうだ。
少なくとも、絵斗が知っているらだ男には、いなかった。
でも、だったら……そういう演技が得意なプロにお金払って頼むとか……いやそれも無理か。
それこそ、バレた時に拙い。
「一回、一緒に食事するだけでいい。話の相手は俺がするし、ぺいんとは座ってるだけで十分だから、ね?」
「それはそれで、おかしいと思うけど……」
溜息交じりに、呟く。
「その娘さんて、いくつなの?」
「20歳」
てことは、俺の一つ下か。
「美人?可愛い系?ていうか、外国人なんだよね?」
「父親がアメリカ人、母親が日本人だから、ハーフだな。あと詳しくは知らん」
「顔も知らないの?」
「写真で見たけど、どんな顔だったか覚えてない、興味ないし」
「マジか……」
頭を抱える絵斗。
らだ男を気に入って、どうしても会いたいと言ってきた女性。
それを断るために、自分が偽りの婚約者になる――
「……分かった。いいよ」
「本気?」
「本気で困ってるから、頼みたいんでしょ?じゃなかったら、わざわざこんなとこまで来ないだろうし」
気持ちは大分複雑だけど、他に誰も頼める相手がいないというのなら、これも人助けだと思おう。
「幼馴染の好で、そのとんでもない嘘に乗ってあげる。但し、一回きりだよ」
「なら明日の朝すぐ、パスポートを申請しに行って。一週間くらいかかるはずだから、出発は来週だね。
俺は明後日にはアメリカに戻らなきゃならないから、先に行って向こうでぺいんとを待ってる。
ぺいんとの航空チケットは俺が買っておくし、その他の費用も全部俺がもつから安心して。
ぺいんとは、言われた飛行機に乗って、取り敢えず必要な荷物だけ持って俺のとこに来ればいいよ」
「ちょ、ちょっと待って、いきなりアメリカに来いって言われても……!お母さんたちもびっくりすると思うし」
「もう伝えてあるよ。ぺいんとがアメリカに旅行したいって言ってきたから、俺がこのオフの期間中案内することになったって話したら、よろしくされた」
「いや、おかしいでしょ。俺がこの話をOKする前に、なにお母さん騙してんの!?」
「ぺいんとなら、最後にはOKする気がした」
「どうして……」
「幼馴染の頼みは、無視できないんでしょ?」
「……っ」
何それ、見透かされてるってこと?
しかも、その顔ずるい反則レッドカード!!
「当日は、空港まで迎えに行くから。こっち経つ前に、連絡入れてね」
「……分かった」
単純に引き受けてしまったけど、相手がアメリカに住んでいるという当たり前の事実を認識してない辺り、
自分も考えが足りない。
乗り掛かった船、とはこのことか。翌日、らだ男がくれた航空チケットを眺めながら、
絵斗は、「ほんと信じらんない」と、部屋で一人、今世紀最大の溜息を吐いたのだった。
もうこんな時間…
小説書いてたら時間忘れちゃいますね…
亀のように遅いゆっくり投稿ですが、やる気が出たらすごく書けるんで気長に待っていてください!