〜次の日〜
僕は明らかに教室で浮いていた。周りから聞き取れる音は、様々で、恐怖や興味、期待…期待…?
(何故期待の音が聞こえるんだ…?)
音の方を向くと、そこには…あの綾瀬さんがいた。僕は綾瀬さんの声を聞いてみた…聞こえないとわかっていた。でも、思い返せば今まで、『音』も聞こえたことがなかった。しかし、音が聞こえたのだ。ならば…声も聞こえるんじゃないかと思ったんだ。
(や…ぱ……たかは……なら………か…な…)
なんだ…?途切れ途切れだった。しかし、「高橋くんなら…」とも聞こえた気がした。僕はもう一度心を聞いてみた。しかし、その後は沈黙が続くだけで何も聞こえなかった。僕は諦め、他のことを聞くことにした。それは勿論、「何故心の声が聞こえる。」という噂ができたのか…単純だった。
(佐藤くんが、まるで心を読まれたかのようだったって言ってたらしい…)
そういうことか…佐藤くんはやってくれたらしい。僕は佐藤くんに「昼休みに話がある。」とだけ伝えると、足早に教室を出た。あの空間に居たくなかったからだ。でも、一つ気になることがある。
(何故今まで聞こえなかった綾瀬さんの心の声が聞こえたんだろうか…?)
僕は綾瀬さんの言葉の意味を考えながら、時間を潰すのだった。
〜昼休み〜
「高橋、俺を呼び出してどうしたんだ?」
来た…噂を流した張本人佐藤くんだ。
「ねぇ、佐藤くん…君、色んな人に僕が心の声が聞こえるらしいなんて変なホラを吹いたのか?」
すると佐藤くんの体が少し震え、顔色が変わった。佐藤くんは上ずった声で、
「な、なんのことだ?」
と言ってきた。これは確信犯だな…僕としてはこのままなのは非常に困る。ここは釘を差し、噂を流した本人として噂を止めてもらわねば…
「佐藤くん。」
「な、なんだよ。」
「この噂、嘘だって皆にちゃんと伝えてくれないかな?」
これで佐藤くんが心変わりをしなければ僕は終わりだ。さて、佐藤くんは何というか…
「わ、分かったよ…悪かったな。お前クラスでいつも一人だろ?だからちょっとでも人と話す機会をって思ったんだ…こんな事になってしまって悪かったな…」
そうか…佐藤くんは佐藤くんなりに僕を気遣ってくれていたのか…ならば、僕はそれに答えよう。
「ありがとう。僕は自分の力でクラスの和に入るから、佐藤くんはそこまで気にしなくていいよ(つまりはでしゃばるな)。」
「あぁ…やっぱりお前はいいやつだな。」
本当に分かってるんだろうか?
コメント
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高橋くんと佐藤くんの対話が上手く絡まっていて読みやすかったです。