あれから月日はたち、俺もこの関係に慣れてきた
Ωは番ができるとヒートが3ヶ月に1回となる
そのおかげで俺はよりサッカーへと身を入れて練習することが出来た
ただ、そんなある日
俺は異変を感じた
部屋の掃除をしていると、ふとカレンダーが目に入った
「(あれ、そういえばこの間のヒートっていつ来たっけ、)」
俺は決まって月頭にくるが、今は月の真ん中
今月はヒートが来る月なはず、
「(…まさか、な、笑)」
この時、ひとつの可能性が俺の頭をよぎったが深く考えないようにした
あの日から数日後、俺は感じたこともない倦怠感と吐き気に襲われた
もしかして、いや、信じたくない、
ただ、いつまでもこうしていられない、
俺は妊娠検査薬へと手を伸ばした
「嘘だろ、………」
俺があの時かすめた不安が今目の前で二つの線として現れてしまった
俺が、妊娠、、?
「いやだ、いやだ、むりだ、っ、!!」
きっとこの子はカイザーとの子供だ
恋人でもない俺たちの間に命がある
そう考えただけで冷や汗が止まらない
震える足をこらえながら、そっとお腹へと手を置いた
「ごめん、ごめんね、…」
とにかく、明日病院へ行かなければ、
俺はトイレで1人冷たい涙を流した
産婦人科へ行き、エコー写真を貰った
「これが、赤ちゃんですよ」
小さな小さな我が子
その存在を素直に喜べない俺が憎い
帰り道、歩きながらたくさん泣いた
泣いて、泣いて、泣いて、
そして、カイザーへと電話をした
今そっちに向かう、と。
俺はこの子を堕ろすつもりはない
たとえ、カイザーとの契約が切れようと
カイザーに捨てられようが俺は必ずこの子を育てる
そう決めた
「……カイザー、?」
チャイムを鳴らしインターホン越しにそう呼びかける
「ん、開いてるから」
そう聞こえ、深呼吸をしてからドアを開ける
ドアを開けると、リビングにいるぞ~と呑気なカイザーの声が聞こえる
「今行くよ」
そう返事をして俺は廊下を踏みしめながら歩く
リビングのドアを開けるとソファに座るカイザーがいた
「カイザー、」
「どうした世一?なにか用か?」
「……あの、さ、聞いて欲しいことがある」
「…なんだ?」
隣に座り、息を吸う
「…妊娠、しました、」
あぁ、言ってしまった、
俺は震える手でエコー写真を渡した
「は、、?」
「…ごめん、なさい、」
「……………………」
「………………………」
部屋にはただ時計の針が進む音だけ鳴り響いていた
「……世一、もう帰ってくれ、」
長い沈黙の後、カイザーはそう言った
「…うん、分かった、」
「俺は、堕ろさないから、」
「………………………」
カイザーは反応することなくただじっとエコー写真を見つめていた
あの日から数日、
カイザーが姿を消した
…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ
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