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藤堂は、伊織の服の内側から引き剥がした紙ナプキンを、握り潰すこともなく、ただ呆然と見つめた。そこに書かれた簡素な住所が、伊織の藤堂に対する明確な裏切りを証明していた。「伊織……」
藤堂の声は、怒りよりも、心の底から絞り出されたような絶望に震えていた。
「お前は、俺から、逃げるつもりだったのか。あの女と、二人で」
伊織は、藤堂の絶望的な顔を見て、心臓を鷲掴みにされたように痛んだ。しかし、もう嘘はつけない。
「ごめん、蓮。でも、僕はもう、息が詰まりそうで……」
伊織が言い訳をしようとすると、藤堂は紙ナプキンを床に投げ捨て、伊織の顔を強く掴んだ。藤堂の瞳は、裏切られた恋人の悲しみと、独占欲の狂気が入り混じり、揺らめいていた。
「息が詰まる? ふざけるな! お前が息ができたのは、誰のおかげだ! あの女の隣で、お前は本当に幸せだったのか? 俺がいないせいで、あの女がどれだけお前を巻き込んで、苦しめたか!」
藤堂は、伊織の肩を強く揺さぶった。
「あの女は、お前を『自由』にすると言ったが、結局どうだ? お前を連れ出し、学校を休ませるほど追い詰め、最後は自分だけ逃げ出した。それが、お前の求めた自由か!」
伊織は反論できなかった。渚といる時間は穏やかだったが、同時に藤堂の報復への恐怖と、裏切りの罪悪感に苛まれていたのも事実だ。
藤堂は、伊織の顎を親指で撫で上げ、伊織の涙で濡れた瞳を覗き込んだ。
「違うだろ、伊織。お前が本当に求めているのは、俺の愛だ。俺だけがお前を、他の誰も近づけない檻の中で守れる。俺だけが、お前を誰にも渡さないと誓える」
藤堂は、伊織の制服のシャツを引き裂くほどの勢いで脱がせ、その華奢な肩を掴んだ。
「わからせてやる。お前の体が、俺なしでは生きられないと叫ぶまで、俺がお前を理解させてやる」
藤堂は、伊織をベッドに押し倒すと、伊織の体を強く抱きしめ、熱いキスを落とした。そのキスは、尋問のように激しく、そして、独占欲にまみれた愛を、伊織の全身に注ぎ込むようだった。
「お前は、俺のものだ。俺の可愛い伊織だ。他の誰かを求めた罰だ」
藤堂は、伊織の体に自分の愛の痕跡を刻みつけながら、何度も何度も耳元で囁いた。
「この熱を、この愛を、忘れるな。お前の居場所は、俺の腕の中だけだ」
伊織は、藤堂の激しい愛の暴風雨に抗う術を持たなかった。渚のくれた自由よりも、藤堂の圧倒的な支配力と、それによってもたらされる確かな安心感に、伊織の心は完全に屈服した。
疲労と快感、そして絶望的な安堵が混じり合い、伊織の瞳から再び涙が溢れた。しかし、それは悲しみの涙ではなかった。
「……蓮。ごめん、なさい……もう、どこにも行かない。僕を、僕を一人にしないで」
伊織は、藤堂の首に腕を回し、その支配的な愛を求めるように縋り付いた。
藤堂は、伊織の降伏の言葉を聞き、激しい愛の行為を一時中断した。そして、伊織の額に優しくキスをした。
「ようやく、わかったか。馬鹿な伊織」
藤堂は、伊織を強く抱きしめ、伊織の体と心に、自分が唯一の存在であるという事実を刻みつけた。伊織の逃亡計画は完全に打ち砕かれ、伊織は二度と藤堂の愛の檻から逃れられないことを悟ったのだった。
次回からシーズン2