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最後の部屋の前の通路は、他の場所と明らかに違っていた。

足音が、壁に吸われる。

天井の高さも、通路の幅も、どこかが微妙に狂っている。


リンクは歩調を落とし、

突き当たりにある一枚の扉の前で止まった。

「特別倉庫」

簡素な札。

だが、鍵は新しく、強固だ。

リンクが手を伸ばした、その瞬間。

――キィン……

背中で、

マスターソードが澄んだ音と淡い光を放つ。

はっきりとした拒絶。

近づくな、という警告。

「……開けるな、か」

リンクは手を引いた。

同時に、

空気の流れに意識を向ける。

廊下の窓から入る風とは別に、

もう一つ、弱い流れがある。

《リンク……今、何を見つけたのですか?》

シーカーストーンに、ゼルダのチャット。

『三階の奥。 鍵付きの倉庫だ』

《……剣が反応したのですね》

『ああ。 だが、それだけじゃない』

リンクは廊下を見渡す。

『風が動いている。 窓以外からもだ』

《……この建物は、

部屋そのものを“境界”として使っている可能性があります》

『つまり』

《内部 が異常、ということ》

リンクは短く頷き、

倉庫から一度離れた。


隣の部屋を調べる。

机。

棚。

床。

何もない。

さらに、

隔てる壁。

手で叩き、

耳を当て、

反響の差を確かめる。

(隠し扉……なし)

「となると……」

リンクは倉庫の扉を振り返る。

『窓だな』

《ええ》

ゼルダの声は即答だった。

《内側ではなく、 外部と“繋がっている”。 だから、剣が警告した》

『理解した』

リンクは無理に踏み込まない。

ここで扉を開けるべきではない。

通路全体を意識に入れ、

罠の配置を再確認しながら戻る。


階段。

段差が、不自然に光っている。

(ワックス……)

《リンク、そこは》

『踏まない』

リンクは即座に判断し、

階段脇の吹き抜けへ向かう。

パラセールを開き、

静かに降下。

教室前に着地――その瞬間。

背後。

空気が、歪む。

大量の棘が、

音もなく迫る。

リンクは振り向かない。

ただ、

すべてを極限まで高めた集中力で躱す。

半歩。

体軸のずらし。

呼吸の調整。

棘は、

一つも触れない。

「……雑な罠だ」

棘はそのまま、

廊下の奥へと飛び去る。


リンクは立ち止まり、

トゲが向かった方向を確認する。

――何もない。

壁も、床も、天井も、

異変は一切ない。

「……さっきのは、一体……」

《リンク》

ゼルダの声が、わずかに強まる。

《今の罠、 “当てる”ことよりも、 あなたの注意を逸らすためのものです》

『……精神的消耗、か』

《ええ》

だが。

その時のリンクは、

躱すことに意識を集中しすぎていた。

背中で鳴りかけた

かすかな警告に、気づかない。

ゼルダも、気づかなかった。


リンクは深追いせず、

そのまま教室へ戻る。

扉を閉め、

静かに息を整える。

窓の外。

水平線だけがオレンジ色に染まり、

それ以外は、完全な闇。

昼と夜の境目。

《リンク》

ゼルダが、静かに言う。

《この時間帯…… この世界は、何かを切り替えようとしています》

『……ああ』

リンクは、外を見たまま答える。

『だからこそ、 今は戻る』

剣に手を添え、

次に来るものに備える。

夜は、

もうすぐそこまで来ていた。

ゼルダの伝説  マッドネス オブ ザ ペーパー

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