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次に目を覚ますと、下半身に違和感があった。どうやら彼女の部屋のベッドに寝かされているらしい。部屋にいるのは僕以外に彼女だけ。両親や菊多の姿はない。
手で触って違和感の正体が分かった。ジーンズを履いてきたはずなのにそのとき履いていたのはジャージ。しかもパンツも少し緩くて、僕のものではないようだ。
「ああ、それは菊多のだ。中学生の菊多の方がサイズが少し大きいんだな。でも父親のだともっとダブダブだったから、それで我慢してくれ」
「服のサイズがどうこう以前に、どうして僕は君の弟の服を着てるの? 僕が着てきたものはどこにいったの?」
「覚えてないのか? 菊多に五回目に落とされたとき、夏梅は粗相したんだ。夏海の服なら洗濯してる」
「粗相!? 漏らしたということ?」
「そうだ。夏梅が私の前で漏らしたのは二回目だな。でも心配するな。そんなことでおまえを嫌いになったりしない」
前回失禁したのは屋上から突き落とされそうだという恐怖感から。今日失禁したのは短時間に五回も絞め技で落とされたせいだ。どちらも僕のせいじゃない!
「恥ずかしがることはない。私のはずかしい過去も知られたからおあいこだ」
「君のはずかしい過去?」
「私がかつてボクっ娘だったことだ。男子がボクっ娘を嫌いなのは知っている。私がボクという一人称を使うことはもうないから安心しろ」
「リクという人がボクっ娘を嫌いだっただけでしょ。僕は別に嫌いじゃない。君がボクっ娘でいたいならそうすればいいと思うよ」
「本当にいいのか? だって――」
彼女は本気で驚いていたし、心から喜んでいるようだった。おそらくボクっ娘をやめないなら別れるくらいにリクにキツく言われたことがあったのだろう。
「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらう」
別にいいよ。ただのメンヘラがボクっ娘のメンヘラに変わるだけだ。ボクっ娘かどうかより、メンヘラの方をなんとかしてほしい。なんとかしろと言ったくらいでなんとかなる問題ではないから、口に出しては言わないけどね。