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成人If。BL要素あり。大捏造。色々気にしない人向け
秋雷の日だった
閃堂秋人が31歳、オリヴァ・愛空が32歳のとき。
サッカー選手を引退し、都会からの逃避行を計った2人は、無事に人里離れた田園地帯の古民家に居を構えていた。
日本国というものは同性婚が認められていない。
引退と同時に同棲することを公にした時、何もなかった筈がないだろう
閃堂秋人は打たれ弱いのだ。そんなところを大人の愛空がカバーしている関係は、2人にとって心地良いものになっていた
「なぁ愛空、今日は悪天候になるらしーぜ」
「防風ネット、つけとかないとなぁ」
風が吹き、気温が低くなってくる。その中で2人は曇天の空を見上げている
「閃堂。今日は部屋でゆっくりするか」
「おう。」
愛空は、閃堂の色っぽく拙い唇を見つめ、そこに自分の少し乾燥した唇を落とす。
静寂の空間に、水音が広がる
「なっ…!?」
頬を朱に染めるその姿に、愛空の官能が疼く。
「いや、綺麗だなぁと思って」
「おっ、まえ…!」
「可愛いな、閃堂」
夜が明け、朝日が昇る時。
昇る筈だった時。
吹き荒れる嵐により、その光を拝めることはなかった。
飛雨が降り、稲光がほとばしる。
「愛空…愛空…寝れねぇ…起きろよ…」
天声が鳴り響き、眠りにつくことさえも失敗した閃堂は、愛空のことを一晩中考えていた。
眠りから覚めない愛空に、苛立ちさえ覚える。
「なんで起きねぇんだよ…バカ…」
一筋の雷光。
脳天を揺らす轟音
閃堂秋人は体を震わせる。
それでも愛空は死んだように眠っている
「これでも起きねぇのかよ…!バカ、アホ!」
閃堂秋人は限界だった。
そっと愛空の腕の中に収まると、震えを止めるため愛空の胸板に顔を埋めた。
「くそ…」
そうつぶやき、愛空の胸板にぐりぐりと額を擦り付ける
その時、閃堂秋人の背中は暖かく包まれた
「…え」
「…どうした。何かあったか?」
「…雷」
愛空が柔らかく笑う
「怖かったか?」
閃堂秋人は、小さく頷く
愛空が優しく、閃堂の頭を包む
「俺の声だけ聞いてればいい。」
「他の音なんて聞こえねぇだろ?」
先程の轟音が嘘のように静まる。
閃堂秋人の頭の中は、愛する恋人の低い声でいっぱいだった
震えが止まる。
「…ありがとな」
「俺の腕から、離れんなよ」
「言われなくてもそうするっつーのー」
またぐりぐりと額を擦り付け、暖かさを感じる
「寝てもいいぞ。」
「俺はここにいるから」
この古民家には、閃堂秋人の寝息だけが響いていた
嵐は、夜明け前に去ったようだ。
古民家の窓を叩いていた雨の線が、雨の粒になって光っている
まだ、閃堂秋人は愛空の腕の中にいる
朝露の残る庭。縁側に腰を下ろしている2人
ふと、愛空が立ち上がる
「なぁ」
「どーした?」
「この花、今日は水やり、しなくてもいいよな?」
「あぁ、いいんじゃねぇの?」
2人で育てていた花。
昨日の雨で濡れている
愛空が、花を触る
手が、濡れる
「いつ、咲くと思う」
「さぁな?あんま見てねーし」
水に濡れた指で、閃堂の頬をさする
「最悪。濡れた」
「はは、まぁいいじゃねぇの」
「水やり、忘れんなよ」
「忘れるわけ。」
昨日の雷鳴が嘘のように静まっている、輝かしい朝
そっと、寄り添う
2人の間が、縮まる
どんなに怖い夜があっても、愛空が隣にいる
閃堂秋人は、それだけで十分だった