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※学パロ、季節外れの鉄板ネタ
徒然に、窓の外を眺める。雲ひとつない夏空。今日も酷暑だ。黒板に目を戻して、大して難しいことは話していないことを視認し、また視線を戻す。
「ぶるーくパスパス!」
「きりやんにやれんの〜??」
「舐めんなよ!!」
校庭ではドッヂボールが白熱していた。元気な友人二人の声は、建物の二階にいても十分聞こえる。ふ、と笑みを溢した。
「おい、お前起きろ」
「んぁ"……?さーせん」
教室内ではシャークんがまた先生に起こされている。最前列で寝る勇気は褒めてやりたい。どうせ昨夜も深夜までゲームをしていたのだろう。
「起立」
号令係の声がけに、ゆるりと席を立った。
「気をつけ、礼。ありがとうございました」
「……ざした」
ようやく今日も四限目まで終わった。待ち侘びた昼休みだ。ぐ、と伸びをする。夏休み一週間前となり、部活もなくなって、スマイルたち六人は毎日のように放課後に遊びに行く日々を送っていた。
「ふぁ〜……A組行こ」
「ん」
シャークんが大欠伸をしながら声をかけてくる。その手にはお弁当があった。昼休みになれば六人はきんときとNakamuのHR教室に集まる。入学して知り合って仲良くなって、いつの間にか習慣化していたルールだった。
「うーっす」
「あ、二人とも!ちょっと聞いてよきんときがさぁ」
「もうその話いいからw」
他クラスの教室に入るというのに一切の躊躇もなく扉を開け放ったシャークんと、窓際で六つ机を並べながら二人に手招きするNakamu。全く慣れたものだ。
「たのもー!!え、A組涼し!」
「あっち〜、この時間にドッヂは死ぬてぇ……」
汗だくのBroooockときりやんも合流し、六人が揃えばいつも通り賑やかになる。スマイルは話の輪に積極的に入ることこそないものの、五人の会話を聞いて時々笑う、そんなこの日常をとても気に入っていた。
「外でドッヂは暑いわ、可哀想」
「えー、俺は羨ましいけど。ドッヂ楽じゃん」
「それはお前が運動神経いいからだろ!」
「え〜?」
ふふ、と笑うきんとき。夏の日差しに照らされた恋人の横顔と、細められた目元の涙ぼくろにとくんとスマイルの胸が跳ねる。
「あれ、スマイル弁当は?」
「あ……俺今日購買だ。行ってくる」
「俺も行くよ、何あるか見たい」
財布を持って立ち上がればきんときがそう言ってくれて、じんわりと嬉しい気持ちがスマイルの胸に広がる。
「いってら〜。あ、きんさん唐揚げあったら買ってきてぇ」
「お前も来いよ」
「いやいや、僕はそんなことするほど野暮じゃないっすよお兄さぁん」
にやにやしながら言うBroooock。二人が付き合っていることは当然ながら四人にも共有されていた。
「……うるせー」
「うるせー!」
「wwwうるせー!」
いつものノリで俺の声真似を始めるきりやんとシャークんに溜息を吐いて、歩き出す。きんときもくすりと笑いながらスマイルの隣に並んだ。
「何買うの?」
「んー…….何あるかによる。きんときは?」
「ん?俺はスマイルに付いていきたかっただけだけど……まぁ唐揚げあったら買って行ってやるかな」
さらりとなされたイケメン発言に、顔が熱を持つのを感じる。いや、違う、これは昇降口が暑いから。なんて胸中で勝手に言い訳を並べる。
「しかし暑いね、購買も昇降口じゃなくて食堂の中でやればいいのに」
「ほんとに。ゆでだこになっちゃう」
「ふふ、その表現かわいい」
「、ッ」
耳元で囁かれた甘い言葉に、肩が跳ねる。購買の列に並びながら、気を紛らわせるように財布に取り付けられたストラップをいじる。しかしそのストラップさえきんときとお揃いなのを思い出して、スマイルはまた顔を赤くさせた。
「あ。そのストラップつけてくれてたんだ、俺も財布につけよ」
「!ち、ちか、」
「えー、いいじゃん」
「あ、暑いから……っ」
バックハグのような状態でストラップをいじる手に大きな手が重ねられ、心拍数が逸る。先週の日曜日、デートの際に二人で回したガチャガチャで出た猫のストラップ。スマイルがそれを周りの目につく場所につけてくれていることに、きんときは微かな優越感を覚えた。
「、あ。唐揚げあるよ」
「ほんとだ。しょうがないなー、買って行ってやるか」
恥ずかしくて、話題を逸らすようにスマイルは唐揚げを指さした。ようやく背中から離れる体温。良かった、このままでは心臓がバクバクなことに気付かれてしまいそうだったから。
「お。焼きそば?」
「うん」
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「だけ?」
「ゃ、アイス買おっかなって」
焼きそばを片手に、アイスクリームが入った冷凍ケースを覗き込むスマイル。きんときは購買のおばあちゃんに150円ぴったりを渡しながら、微笑ましい気持ちでアイスの種類に悩む恋人の姿を眺めていた。
「おいしそうだね、そのアイス」
「うまかったらリピする」
「そういえば夏の間に購買のアイス制覇しようとか言ってたのにあいつら金が金がっつって全然買ってないな」
「ふ、そういえば」
階段を登りながらそんな会話をする。六人の学校は私服登校のため、すれ違う生徒たちはみんな涼しげな格好をしている。
「よう、二人とも」
「おー。お前ノースリーブに短パンって小学生かよ」
「うるせー、お前はカーディガンなんか着やがってモテようとしてんじゃねぇ!」
「そういえば購買にお前の好きなフレンチトーストあったよ」
「マジ!?さんきゅー!」
階段を駆け下りながら嵐のように去っていった共通の友人に、二人は顔を見合わせて笑う。
「おかえりー二人とも」
「ただいま。はい唐揚げ」
「きんさんナイスー!放課後に返すわ」
「はいはい」
焼きそばの蓋を開けると、ふわりとおいしそうな匂いが鼻腔をくすぐる。食欲がそそられ、割り箸を割ってすぐにそれを一口口に運んだ。
「そんでさぁ、きんときが先生に当てられてさぁ」
「その話まだしてたのかよ」
一口、また一口。食が細いスマイルといえど男子高校生、すぐに焼きそばを完食する。周りもほとんど弁当を平らげており、ゆるゆると雑談の時間が流れていく。
「スマイル何そのアイス」
「ん、なんか……ヨーグルトフローズンアイス」
「そりゃ見たらわかるわ」
包装を開ければ、白い棒アイスが出てくる。小さく口を開き、それを齧った。
「ん……なかなかうまい」
「一口くれー」
「無理」
「一口欲しいなぁ、スマイル」
きりやんの言葉は一蹴したが、きんときの言葉には逡巡する仕草を見せるものだから、五人は笑った。表情の変化が乏しいように見えて案外わかりやすいという自覚は、本人にあるのだろうか。数秒の思考の末、アイスを差し出すスマイル。
「あーんして?」
「あー!!!そういうことするんだ!!!イチャイチャ警察出動するよ!!!?」
「はいこちらイチャイチャ警察、事件ですかそれとも事件ですか?」
NakamuとBroooockによって始まった寸劇に爆笑が巻き起こる。スマイルはそんな五人に顔を顰めながら、きんときの口元にアイスを持っていった。
「え」
「早く食べろ、溶ける」
「ふ、じゃあ遠慮なく」
しゃくり、満足そうな表情でアイスを頬張るきんとき。スマイルの頬が赤らんでいるのはきっと暑さのせいなんかじゃなくて。
「スマイル顔真っ赤〜w」
「……るせぇ」
「ん、おいしい」
「よね」
平静を装ってまたアイスを食べ始めるスマイルだったが、生暖かいものを見るような視線に耐えきれず猫のような鋭い眼光で五人を睨む。
「そんな睨むなって、アイス溶けるぞ」
「ぅわ、ほんとだ……きんときのせいで」
「俺?」
直射日光が当たる中焼きそばを食べている間放置してしまったせいもあるのだろう、棒を伝って白い液体が白い手のひらに伝う。
「あーもう……」
少し大きめの一口で最後までアイスを食べ切ると、手のひらに伝ったアイスを舐め取ろうとするスマイル。ちろ、と赤い舌がそれを舐め取って。
「お前ら」
四人はあ、と思ったが時既に遅し。
「いや、あのきんときさん」
「殺す」
「きんときさん落ち着いて!!!!」
「殺す」
一気に騒がしくなった五人に不思議そうな目線を向けたスマイルだった。