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犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話(番外編)です
今回はワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります
うちの組織の人間は、生い立ちも抱える事情も様々だ。
生まれてすぐ親に捨てられ、施設代わりに組織に預けられた奴がいる。
そういう人間は、物心ついた頃には一通りの「教育」を施される。
それとは真逆に、10代後半から20代と、大人になってから身体能力や知力を見初められてスカウトされる者もいる。
俺はというと、普通の家庭で育ち普通に学校に通っていた。
ただ、放課後や休日には組織に通い訓練を受けた。
幼い頃から当たり前のようにそうだったから、俺にとっては友達がサッカーやスイミングに行くのと同じような、習い事程度の感覚でしかなかった。
高校に入る頃には家を出て組織の寮に入った。
その頃には既に顔見知りだったあにきとも、寮に入ったおかげで時間を共にすることが増えた。
そして俺よりもっと幼いうちからそこに入れられていた初兎、ほとけ、りうらとも出会った。
まだまだ未熟な小学生だったあいつらの指導を任されたこともあり、家族同然のような距離感で生活することになったのを覚えている。
くそ生意気な3人がそれでもどんどん腕を上げていくのがおもしろくもあり、あにきと2人で指導係に熱中した時期もあったっけ。
それからあいつらが成長してようやく実戦チームが組めそうという局面に入ったときは、柄にもなく少しわくわくした。
「……え? 異動?」
だけど、事態はそんなに甘くはなかった。
寝耳に水、そんな話が前触れもなく舞い込んできた。
「何年かに一回やるやん、手を結んどる組織と優秀な人材の交換会みたいなやつ。今回はまろが選ばれたって」
そう言って、あにきは俺宛の指令書をぴらりと手渡してくる。
受け取ったそれに視線を落とすと、確かに組織本部が発行したものだと分かる。
「…拒否権は?」
「ないやろなぁ。まぁでも悪い話ちゃうやん? 実力を買われとるわけやし、俺もまろが認められるんは鼻が高いわ」
あにきがそう言ったのは、きっと俺を慰めるためだったんだろう。
何でもないことのように笑って言って、それでもそこからふっと一度だけ真顔になった。
「…俺がもうちょっと力つけたら、絶対呼び戻すから」
「……」
「やから、その時こそ一緒にチーム組もうな」
…俺だけじゃない。この組織にいればあにきだって知ってるはずだ。
この「交換会」に期限なんて設けられていないこと。
いつ戻れるかなんて分からない。いや、そもそも戻れるのかも分からない。
何よりもそれより先に任務で命を落とす可能性が一番高い。
…どうすればいい。
そう自問するけれど、本当は答えなんて明白だ。
本部の決定に従うしかないに決まってる。
これからまだ成長するだろう3人を見届けることを諦め、あにきと一緒に戦うことも叶わずに。
どうやら自分は、思ったよりこの4人といることが心地よかったらしい。
ぎりと噛んだ唇から滲んだこの時の血の味は、その後何年経っても忘れることはなかった。
組織には「カラー」のようなものがあるのを実感したのは、向こうに移ってすぐのことだ。
異動先の組織は大人の構成員が多い。
雰囲気も元いた組織より随分落ち着いている。
ぎゃんぎゃん喚く甲高いプテボなんて耳にしないし、超低音で厨二病ごっこをする奴もいない。
不必要にかっこつけたイケボの天然なんてものもいるわけがなかった。
馴染める気はしなかったけれど、それでも一応チームに溶け込むための最低限の努力は必要だった。
実戦チームに男しかいないあちらと違って、こっちの組織は実力さえあれば女性でも当たり前のように登用される。
うちのチームのリーダーがまさにそれで、年は俺と変わらないのにもうトップクラスのチームを束ねる実力者だった。
ただ、性格が褒められたものじゃない。
何かというと俺をからかいにやって来る。
「またホームシック?」
あっちの組織の情報をまとめたデジタル資料を眺めていると、リーダーはおかしそうにそんな声をかけてきた。
「…そんなんちゃうし。ただの情報収集」
否定してカチリとマウスを操作し、画面を消す。
椅子に座ったまま振り返ると、すぐ傍に寄ってきていたらしい彼女がすっと手を伸ばした。
俺がかけている眼鏡を細い指先で外すと、少しかがむようにして顔を近づけてくる。
「帰りたい? 元の組織に」
…よく言うよ。
もう1年以上経つけれど帰れる気配は微塵もない。
その要因の1つなくせに。
口にはしなかったけれどそれが読みとれたのか、彼女は目を細めて笑ってみせた。
「だって優秀な人間を、そんな簡単に手放すわけないじゃない?」
彼女は本部に相当顔がきく。発言力もそれなりにある。
だからきっと、その束縛がある以上よほどのことがない限り俺があちらに呼び戻されることはないだろう。
「……」
彼女の整った顔が、更に極至近距離に迫った気がした。
自分のすぐ目線の先にあるピンク色のロングの髪と瞳。俺が今一番嫌いな色だ。
彼女の顔が更に近づくのを避けようとした瞬間、ジャケットに入れてあったスマホがピリリとタイミングよく高い音を鳴らした。
ポケットからそれを取り出すと、さすがに諦めたのか彼女はすっと俺から距離を取る。
電話を聞かないようにする気配りはできるらしい。
そのまま俺の眼鏡をデスクに放ると、ピンヒールを鳴らしながら部屋を出ていった。
それを横目に見送ってから、俺は手にしたスマホに視線を落とす。
画面に浮かび上がったその通話相手の名前に、自然と口元が緩んだ。
「あにき? 元気やった?」
何週間かに一回くらいは連絡を取ることもあるけれど、基本的にお互い多忙だ。
久しぶりの電話に応じると、前とちっとも変わらないあにきの声がスマホの向こうから聞こえてくる。
情報交換と称して、いつも通り互いの近況を報告し合う。
そしていくつか他愛もない雑談をするのが常だ。
そこで通話が終わるのが通常の流れだけれど、その日最後にあにきは「…あのな、まろ」と小さく声を続けた。
『…俺ら4人、チーム組まされることになってん』
誰が、と詳細を求めるまでもなかった。あにきと、りうらとほとけと初兎。
ずっとそうなるべき流れはできていたし、むしろ遅かったくらいだ。
恐らくりうらが成人するのを待たされていたんだろう。
「4人で?」
本当なら、そこに俺もいるはずだった。願わくばそうでありたかった。
『……いや、一人リーダーが入ってくる』
あにきの声が少し遠慮がちに響いた気がしたのは気のせいだろうか。
俺の思いや考えなんてきっと全て察しているんだろう。
『俺だけこの前会うたんやけどさ、えぇ奴やったわ。信用できると思うし、ついていこうと思う』
「……」
『やから、お前もこっちのことはそんなに心配すんなよ。がきんちょ共も何とかやっとるし』
「……ん」
違う、心配してるわけじゃない。
ただ、「俺もそこにいたかった」。
そんな子供じみた感情がどうしたって胸の奥の方で燻っているだけだ。
あにきが何でこんなことを言うのかも分かる。
俺にこれ以上余計なことで気負わせたくないと思ったからだろう。
それが分かっているから、俺も務めて声を明るくする。
「いい人が入ったんやったら良かった。…じゃあ、また連絡するな」
『……っ』
俺がそれだけ言って通話を切ろうとした瞬間、あにきが息を飲んだのが分かった。
俺に余計なことを言わないようにしていたはずなのに、そこでやっぱり思い直したように「まろ…!」と大きな声を上げる。
『俺は…!絶対、お前を呼び戻すからな!お前んとこの女リーダーが邪魔しとるんか、今の俺ではどうもできんけど…! でも、ないこならお前のとこのリーダーより力あるはずやし、絶対何とかする!!!』
「ないこ」…それが新しいリーダーの名前だろうか。
さっきまでこちらを諭すような口調だったあにきの大きな声が耳朶を打つ。
『やから待っとれよ!絶対諦めんな!俺もお前を呼び戻せるまで、絶対諦めへんから!』
まるで喧嘩を売るような口調の言葉に、俺は思わず「…ふふ」と笑ってしまった。
「……うん、楽しみにしとる」
それだけ言って通話を終わらせた俺は、笑ったはずなのに初めて泣きたくなっている自分に気づいた。
あにきはああ言ってくれるけど、そんなに簡単に事が運ぶわけもない。
まずあにきのところのリーダーを説得しなくてはならないはずだ。
そいつにとっては俺は見たことも会ったこともない人間で、今特に困ったことがないチームにわざわざ他組織のヘイトを買ってまでスカウトするメリットがない。
加えて、うちのリーダーがそう簡単に俺を手放すわけがない。
自分の思い通りに事を進めるためなら、どんな手でも使うような女だ。
なんとしてでも阻止しようとしてくるだろう。
『自分の思い通りに進めるためならどんな手でも使う…っていう点では、うちのないこも負けてへんけどな』
ただ、汚い手だけは絶対に使えへんねん、なんて付け足すあにきのスマホ越しの声は、どれほどそのリーダーを信頼しているのかよく分かる。
『まろ、もうちょい待っとって。絶対ないこを説得してみせるから。あいつさえ落とせたら、何としてでもまろをこっちに呼んでくれるはずやねん』
「……そんな権限あんの?そいつに」
『相当上に顔がきくらしいんよな』
なるほど、相当やり手なんだろうな。
実力だけじゃなくて人を動かす力も持ってるってことか。
妙に感心していたそんな俺に朗報が入ったのは、それから半年くらい経ってからだった。
とりあえず俺があっちの組織へ戻る段取りが組めそうだ、とあにきから連絡があった。
今抱えている任務を片付けて、暇ができれば一度向こうのリーダーと顔合わせができるまでにあにきがセッティングしてくれる。
「来週にはそっちに行くよ」
ある夜、あにきとの通話でそう告げると、向こう側で苦笑いが零れたのが伝わってきた。
『あとさぁ、うちのリーダーがまろのテストしたいって言うとるんやけど…』
「テストぉ?」
めんど。そう小さく言うと、あにきは「言うと思った」と高い声で笑う。
いや、でも願ったり叶ったりか。
どんなテストをされるのかは知らないけれどよっぽどのことがない限り落とされる気はしないし、その方がチームに受け入れやすいと言うなら手っ取り早くていい。
「ん、えぇよ。とりあえずそっちに行ける具体的な日にちが決まったらまた連絡するわ」
あにきとそんな会話を交わし、柄にもなく夜道を歩く足取りはいつもより軽快だった。
まさかその直後に、あの黒マスクに襲われてとんでもない脅しを受けるとは想像していなかった。
家族同然の4人の元へ帰りたかったはずなのに、これからそれに手を貸してくれるだろう男を殺せと要求されるなんて。
ないこに恨みなんてないし、むしろこれからチームメイトとして共に生きていければいいと思っていた。
なのに運命の歯車はどうしたって噛み合わない。
絶望に似た感情が胸の奥底で燻り続け、灯りのない暗闇を手探りで歩かされているような気分だった。
できることなら手を下したくはない…この時俺は、その程度にしか思っていなかった。
本当の本当に最悪の場合は、4人を守るためならないこを手にかけるしかない。
黒マスクの言いなりになるのは反吐が出るほど嫌だったけれど、この時の俺にはあの4人以上に大切なものなんて何もなかったから。
なのに、あの一瞬で全てが覆った。
「実力テスト」と称された実戦で、ないこと初めて対峙したあの時から。
襟元を乱暴に掴んで、ブラスターをその額に押し当てた。
それでも屈することなく…むしろ薄ら笑いすら浮かべたピンク色の瞳。
それが宝石のように綺麗だと思った瞬間に、一番嫌いだったはずのその桃色が一番心を揺り動かされる色に変わった。
「…ろ、……まろ! 聞いてる!?」
大きめな声が響き、ハッと我に返った。
少し前のことを振り返っていた頭が、瞬時に現実に引き戻される。
「ごめん、何やっけ」
素直に謝って、PC画面から顔を上げた。
眼鏡をかけたままないこを振り返ると、ピンク色の髪を揺らしてあいつは盛大なため息をつく。
「今度、前にまろがいた組織と交流会みたいなんがあるんだけどどうする?参加する?一緒に行くなら今回はあにきじゃなくてまろを連れてくけど」
椅子ごとくるりと向き直ると、ないこはさも当然かのように対面する形で俺の膝の上に跨った。
前までいた組織だから、会いたい人がいるのならと気を利かせてくれたんだろう。
…真面目な話とこの行動に一貫性は全くないが。
「…いや、いいかな。特別会いたい人もおらんし」
「そうなん?」
「前のリーダーに至っては恨まれとるかもしれんしなぁ」
苦笑い気味に言うと、ないこは目をぱちぱちと瞬かせた。
長い睫毛が震えるように揺れる。その俺の話で何となく察したことがあるらしい。
「もしかしてまろのとこのリーダーって、あれ?あのすっげぇド派手なピンク色の髪した女?」
「めちゃめちゃブーメランなセリフ吐くやん。…そうやけど。知っとるん?」
「今理解した。この前研修で出くわしたピンクの女がすげぇ睨みつけてきたからなんだろうと思ってたけど、そういうことか」
一人で納得したように頷きながら、ないこは俺の頭に手を伸ばしてくる。
いつも俺がないこにするみたいに、梳くようにして髪に触れた。
「ふふ、そりゃおもしろくないわな。別組織の人間にチームの優秀な人材引き抜かれたんだから」
「……そういや聞きたかったんやけど、俺を呼ぶために割とあくどい手使った?」
問いながら、ないこの腰に手を回す。相変わらず細い。
あれだけ毎日人の倍以上は食べているのに、誰よりも細いんだから本当に驚かされる。
「人聞き悪い言い方すんなよ。ちょっと圧がけしただけだよ」
「…十分あくどいことしとりそうやん」
「俺はさ、最初まろを呼ぶの反対だったんだよね。でもしょうがないじゃん。一目見て欲しいと思っちゃったからさ」
ふふ、と笑んで、ないこが髪に触れていた手を俺の後頭部に回した。
引き寄せるようにして顔を近づけてきたけれど、唇が触れ合いそうになる瞬間に俺が先に小さく呟く。
「……感謝しとるよ」
思いがけない言葉だったのか、それが耳に届いた瞬間にないこがぴたりと動きを止める。
目を瞠って、至近距離で俺を見つめ返した。
「俺はずっと…こっちに帰ってきたかった。でも多分、ないこがおらんかったらそれはずっと叶わんかったと思う」
きっとないこが動かなければ、誰にもどうしようもできないことだった。
あのまま4人と引き離され、あっちの組織で淡々と任務をこなすだけの人生。
人を殺すたびに乾いていく心を潤す術もなく、ただ静かに一生を終えたのかもしれない。
冗談でもなく本気でそう思う。
だけどないこは目を丸くした後、「あは」と吹き出すようにして笑った。
「そうでもないと思うよ」
口角をきゅ、と上げて、そんな言葉を継ぐ。
「俺はさ、人生なんてもんは割となるようになると思ってんの。収まるところに収まるっていうの? だから俺がいなくても、まろはここに帰ってきてたよきっと。あいつらだってまろと一緒にいたかっただろうし、まろの居場所はここだからね。どっちにしろあにきとかが何とかしてたよ」
さも当たり前のように言ってのけるないこの声が、じわりじわりと胸の奥へと広がっていく感覚。
それに一度目を伏せてから、俺はないこの肩にこつんと額をつけた。
そうだったらいいなと、ずっと思っていた。
俺の帰るべき場所はここで、離れたあんな地でいつか一人で死んでいくのは絶対に嫌だと。
これから先も4人とずっと長く一緒にいたいと思っていた。
だけど今は、それだけでももう足りないんだよ。
いくらあの4人とこの先家族のようにずっと暮らしていけるとしても、もうそこにはお前がいないと意味がないんだ。
「おいー、めっちゃイイ話したんだから何か返事しろって」
黙ったままの俺に向けて、ないこがからかうような口調で声を弾ませる。
そして掻き抱くように俺の頭に再び手を回した。
いつもとは立場が逆転したように甘やかそうとする手が、俺の髪を撫でつける。
「返事しろ」って言ったって、ここで今俺が思っていること全て吐き出したら絶対照れ隠しに天邪鬼な態度を取るくせに。
「……よっと」
そう簡単には立場は変わらんよな。
そんな声を上げて身を起こした俺を、ないこが不思議そうな目で見据えた。
そのままその細い腰と背中に腕を回し、ぐいとかつぐようにして立ち上がる。
「おわっ」
バランスを崩しそうになったないこが、しがみつくみたいに俺の首に腕を回した。
その体はやっぱり相変わらず軽い。
身長も決して低くはない成人男性だっていうのに、持ち上げて数歩歩くことすら難なくこなせてしまう。
「……」
大して広くもない部屋を隅まで移動して、ないこの体をベッドの上にぽいと下ろした。
スプリングがきしりと音を立て、俺もそこに乗り上げると2人分の重みで沈む。
「未だにお前の『そういう』スイッチが、何が原因で入るのかよく分かんないわ。今の会話のどこでそういう気が起きるわけ?」
苦笑い気味に言って、ないこは再びこちらに手を伸ばす。
……よく言うよ。万年全身スイッチみたいな人間のくせに。
そんなないこがそれでも俺の背中に腕を回して目を閉じるから、その瞼にそっと口づけた。
コメント
2件
面白かったです♪ これからもがんばってください!
わぁぁぁぁ🤪くん戻ってきてくれて良かったぁぁド派手なピンク髪の女黙れやぶっ飛ばすぞ(((( めっちゃ面白かったです!