私はこういう時のマナーとか全然知らないので間違っているところもあるかもしれませんが、温かい目で見守ってください🙇
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首領の部屋の扉を叩いて、自分の名前を告げる。入って善いよ、と云われたと同時に、扉の両脇に立っていた黒服達が重厚な扉を開いた。
失礼します、と云って礼をしてから部屋に入ると、後から芥川も真似して入ってきた。
首領に促されて席に着く。芥川は緊張しているのか動きがぎこちない。
「やあ、君が芥川龍之介君だね?」
「はい」
「中原君の処で上手く遣れているようで安心したよ。此処には慣れたかい?」
「…はい、ちゅ、、中原さんが丁寧に教えて下さるので」
……若干怪しいところもあるが此の位は問題ないだろう。問題は食事だ。食事中のマナーは特に時間を掛けて教えたが、如何せん細かいマナーが沢山あり、普通に育った人間でも難しいだろう。
芥川も何回か実践練習をやってみたが、頭で理解するのと実際に出来るのとでは違うらしく、とても食事を楽しむどころではなかった。
然し、彼奴は向上心の塊の様な奴なので、何度も何度も練習して体に覚えさせていたのである。其の練習の成果が本番でも出せれば心配ないのだが。
あの日からもう3日が経つ。結果的に云うと、首領は芥川のことを気に入った様だった。未だ慣れていないが、相手に対する敬意が伝わってくる。所作も美しかった。とのことだ。
中也君が丁寧に教えて呉れたおかげだね、と笑う。此れからも沢山教えることがあると思うけど頑張ってね、と励ましのお言葉も頂いた。
そして、嗚呼、ついでにね。と首領が目を細めて笑った。少し背筋が冷える。此の、時折見せる、何もかもを見透かしたような目は苦手だ。
「彼の子、太宰君も気に入っていてねえ。大切な子は、捕られないように証を付けておくと善い」
「証、ですか?」
「うん。自分の、っていう証。マフィアには、「自分が勧誘した人に、勧誘した人が何かを与える」というしきたりがあるのを覚えているかな?」
「はい」
「だからね、中也君も芥川君に何かを与えるんだ。何でも善い。其れがやる気に繋がる可能性もあるんだよ」
────と、首領にそう云われたのが数日前の事。自室に向かう俺の手には一つの紙袋が。恐らく芥川は俺の部屋で、与えられた漢字練習帳に取り組んでいるだろう。
そう思うと、自然と口が弧を描いて、足取りが軽くなる。此れを見たら芥川はどんな顔をするのだろうか。俺は上機嫌で帰路につくのであった。
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