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「しんでしまった!」
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死は生きているかぎり、生物につきまとう終わりだ。
与えられたその生が尽きるまで生き、死んでゆき、また新たに生を与えられる。
それが生き物の宿命、この世界の真理の一つである。
だが、その真理を覆す空間が誕生してしまったのだ。
その空間は、時間の歪みによって生まれたものであり、本来は転生するはずの死者の魂を閉じ込めてしまうというものだった。
その空間の名は___。
『ポツ、ポツポツ、ザーッ』
夕方の17時半、閑散としているシャッター街に夕立が降る。
だが、空を見上げてみると、雲一つない星の輝く夜空が広がっていた。
「…なんで雨?」
異常だ。天気雨だとしてもそもそもの話。
スマホの時計は17半を示しているのに、なぜ空は綺麗に星が輝く夜空が広がっているのだろうか。
いまの季節は春。冬でもないのにこの時間帯に空が暗くなっているのは明らかにおかしい。
それに、ここはどこだろうか。
俺はさっきまで運営のみんなと企画会議をしていたはずなのに、今いる場所は閑散とした明かり一つないシャッター街だ。
俺がなぜここにいるのかさっきから思考を張り巡らせているが、なぜここにいるのかどころか、企画会議でレウが案をまとめている話以降の記憶を思い出そうとすると、フィルターがかかっているかのように全く思い出せない。
そうこうすること10分、シャッター街の軒下で座り込み考えを巡らせていると、聞き覚えのある女性のような声が話しかける。
「…あのー、こんなところでどうしたんですか?もうすぐ今週の”祭り”が始まるのに」
声がした方へ顔を上げると、薄紫色のボブヘアーにドクロマークのパーカを着た知り合いの実況者、【しにがみ】くんが居た。
だが、よく見ると別人なことが分かる。
額から控えめな黒い角が生えており、先端が三角のような形になっている尻尾が生えていた。
「…しにー、ではなさそうだね」
「君は誰なの?祭りってなんのこと?」
しにがみくんに似た誰かに、疑問に思っていたことを聞いてみた。
そうすると、しにがみくんのそっくりさんはキョトンした顔で最初は見ていたが、少しすると納得したような顔で言った。
「あぁ!新入りの方ですね!なるほど、どおりで見たことない顔なわけだ…」
「いいですよ、教えてあげます。この世界、この空間のことを」
そう言ってしにがみくんのそっくりさんはいたずらっぽく人差し指を唇の前に置いて、いたずらっぽく笑う。
俺達がすこしやりとりを交わしている間に、夕立はもう去っていて、夕立後のシャッター街からはペトリコールの香りがした。
つづく