テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
二人でベッドに腰掛けて、手を繋いで話をする。
「疲れてるのに、会いに来てくれたの?」
「うん、もう無理だもん、我慢の限界。」
「…エッチ?」
「違う、涼ちゃん不足。」
「…毎日会ってるのに?」
僕は、わざとそう言って顔を覗き込む。甘い元貴が、もっと欲しい。
「…楽屋で襲っていいなら、それでも良いけど。」
「あ、いや、ダメです。ごめんなさい。」
ちぇ、元貴はそう簡単には甘い言葉はかけてくれないみたいだ。そう思っていたら。
「…涼ちゃん…。…好きだよ。」
僕の頬を撫でて、元貴が珍しくはっきりと伝えてくれた。僕はその手に上から自分の手を重ねる。
「うん、僕も。元貴が大好きだよ。」
「うん。」
「…ねえ、元貴。また僕、なんか元貴を不安にさせてる?」
「え?」
「…僕さ、元貴が色んな人と交流してるのを見て、確かに友達はいた方がいいかな、とは思ってる。だけど、もしそのせいで元貴が不安になるなら、全部いらない。」
「ま、待ってよ涼ちゃん。」
元貴が僕の両肩を持って、珍しく少し焦っている。
「…なんでも、言って?思ってる事とか、なんでも。そういうの溜め込むと…また…。それが怖いんだ、僕。」
「…うん…。」
両肩に乗っている元貴の手を取り、二人の間に下ろして、僕の両手で元貴の手を握り込む。しばらく、その手を見つめていた元貴が、口を開いた。
「…別に、責めたいわけじゃないんだけど…。」
「うん。」
「…涼ちゃんが、………若井と、付き合ってたんだよなぁ…って…時々、無性に………痛くなる時があって…。」
「…うん。」
「そんなの、しょうがないし、自分のせいでもあるし、誰のせいでもないし、分かってて付き合ってるんだから、って思うんだけど。」
「…うん。」
「…時々、まだね、どうしようもなく考えちゃう時がある。」
「…うん。」
「…あと…。」
「うん。」
「…目黒さん、涼ちゃんの事好きになるんじゃないかと思って…。」
「………うん…?」
「涼ちゃんに初めて話しかけられた時のこと、あんな風に覚えてて。だって、一瞬だったんでしょ?なのに、すごく嬉しかった、とか…俺と一緒じゃん、て思って。」
「…ふふ。」
「…ん?」
「いや、元貴は、初めて話した時の事は、忘れてたよなーと思って。」
「…ねえちょっと。まだなんだけど。」
じろ、と睨んでいる。僕は、ごめん、と謝って、口を閉じた。
「だから、連絡先すぐ交換してたりとか、阿部さんが連れて来てたりとか、なんか積極的に見えてさ。ちょっと…大丈夫かなー、とは思った。」
「そっか、ホントにヤキモチ焼いてくれてたんだ。」
「ヤキモチぃ?…なのかなぁ、やっぱ。」
「そうでしょ?」
「うーん…。涼ちゃんがフラフラヘラヘラしてるからじゃない?」
「必要な愛想振り撒いてるだけなんだけどな。」
「…まあ、これに関しては、俺も色んな人と仲良くしてるから、涼ちゃんだけに言えた事じゃないんだけどさ。」
「そうだよ、元貴だって、ニノさんとか風磨くんとかケンティーとか、めちゃくちゃベタベタしてんじゃん。」
「まあね。」
「でも、僕も、元貴の事は言えないって思ってる。自分が、先にフラフラしちゃったから。だから、元貴に浮気されても一回は何も言えないな、って覚悟してるよ。」
「はあ?それはなんかムカつく。」
「ごめん。信用してないわけじゃないよ。権利としての話ね。」
「そんな権利どっちにもねーよ。」
「…そっか。」
「涼ちゃんだって、ちゃんと別れてた時の話じゃん。浮気じゃないでしょ。」
「…うん。ホントに、ごめんね。」
「うん………謝って欲しいわけじゃないんだけど…。受け取っとく。」
若井とのことに関しては、本当に、何も言えない。あの時は真剣に若井と恋をしていたとはいえ、元貴に対しては申し訳ないとしか、言いようがないから。僕は、元貴の顔を見据える。
「でもね、目黒くんの事は、ホントにただ、ヤキモチ焼いてくれて嬉しいとしか思わない。」
「…は?」
「可愛い。元貴。 」
「…あのね。」
「だって、僕が目黒くんに声掛けたのも、元貴だからなんだよ。」
「…ん?」
「目黒くんの活動休止の時にね、僕、元貴のこと想い出したの。あの頃の、苦しんでた元貴と同じなのかもって。だから、元貴の事だけを想いながら、目黒くんに声掛けてたんだ。目黒くんを通して、あの頃の元貴を救いたかったのかも。」
「…俺だけ?」
「そう。だから、目黒くんには悪いけど、すごく自分勝手な理由で声掛けたんだ。」
「…ふーん、そうだったんだ…。」
「…どう?それでも、まだ不安?」
「…まぁ。」
「えー。」
「だって、涼ちゃんはどういうつもりでも、目黒さんにとっては、心配して声掛けてくれた優しい藤澤さん、じゃん。」
「まぁそうだけど。でもね、元貴が心配する程、ホントに僕モテないって。」
「ふーん、モテたら浮気すんだ。」
元貴の顔をむぎゅ、と両手で挟む。
「もう、揚げ足取るなよ。モテないし、モテても意味ない興味ない。って言ってんの。」
そのまま、元貴に口付ける。
「元貴以外からモテても、意味ないの。元貴以外に、興味ないの。だから。最後まで責任取ってよ。」
「…責任?」
「だって、元貴は、僕の責任者なんでしょ。」
元貴が、目を丸くした。僕と一緒に、長野の実家へ行った時の元貴のセリフ、覚えてるかな。責任者として付いて行く、そう言ったよね。
元貴の目が、優しく揺れる。僕も、涙が目に溜まってきた。
「大好きだよ、元貴。元貴が安心するまで、何回だって言うから。何年だって、傍にいるから。ずっとずっと、愛してるから。」
「………うん。」
元貴が、まるで小さな子どもみたいな、とても優しい、素直な、可愛い笑顔を浮かべて、頷いた。
僕の胸にギュッと抱きついてきて、そのままベッドに倒れ込む。しばらくそのまま二人で抱き合っていたが、ゆっくりと元貴が僕の上に跨った。両手を僕の顔の横について、上から見下ろしてくる。
「涼ちゃん、愛してるよ。…絶対に、逃さない。」
その顔からは、可愛いは居なくなっていて、熱を持った、真剣な眼差しで、僕を捉えていた。ゆっくりと近づく綺麗な顔を見ながら、逃げるつもりもないけど、と心で呟いて、目を閉じてからキスを受け入れた。
コメント
12件
デレ貴とジェラ貴と艶貴とツン貴をいただきました!ありがとうございます🤣 ❤️さんがかっこいいけど可愛い🤭言いたいことちょっと言えるようになってよかったね✨確かに恋人の元カレがずっとそばにいて何も感じないわけはないですよね🙂↕️2人を信用してない訳じゃなくて。 焦らし全然好きです!「そこで終わるの?くぅ〜😣」ってのも楽しいし笑、2回に分ける分じっくりねっとり書かれてると思うと楽しみです🤤
だだーって出していただける!大歓迎です。楽しみ♡ 出勤前に本編読んでニンマリしてたら愛猫にガン見されておりましたよ笑 今日も頑張れそう!