スマホを出して、あの写真を確認する。
健二が、私の勤め先のホテルに来た時乗っていた赤い車のナンバー。
「27-31、やっぱりそうだ…」
綾菜は健二の浮気に気づいていたんだ。
でも、騒ぎ立てることはしていないということは、健二の対応次第では見逃すということだろうか。
さてと。
見てしまったメモリーをどうすべきか?
リビングでは相変わらず旦那がテレビを見ている。
よくある不倫夫婦のドラマのようだ。
「ね、そのドラマ、面白い?」
「内容はベタなんだけどね、まぁ、役者が上手いからそこそこ面白いよ」
「あのさ、なんで子どもが生まれると夫は浮気に走りやすいんだろ?」
「唐突な質問だね。なんでだろ?」
うーんとしばらく考える旦那。
「当たってるかわからないけど」
と前置きして
「結婚して子どもができるとさ、奥さんはもう自分を捨てて離れていくことはないという安心感からじゃない?それと、これ言うと怒られると思うけど…」
「なぁに?怒らないよ」
「子育てが始まるとさ、自分の相手をしてもらえないし、奥さんも女としての部分が減っていくから、じゃないかな?」
「あ、なーるほど。ということは、奥さんが綺麗にしてて、ほかの男にもモテるとかだと心配で浮気しないとか?」
「可能性はある」
旦那の言うことに妙に納得してしまった。
じゃあ、その作戦でいこっかな?
「ありがと!作戦決めたわ」
「えっ!なんの作戦?」
「内緒だよ」
手にしていたスマホに、貴君からLINEが届いた。
『結婚式の日取りが決まりました』
あ、そう。
職場では、貴君の結婚式の話で盛り上がっていた。
「ベタに和風でやるのかと思ってたけど…」
田口さんが言う。
仕事前の喫煙所。
「俺もそのつもりだったんだけど、彼女が教会がいいと言うので」
「けっ!彼女って言ってるし。一度ここに連れて来いよ、結婚前に貴の悪いところを聞かせといてやらないとな」
「なんで悪いところ?まぁ、そのうち連れてくるけど」
教会でベルを鳴らすのか。
彼女が若いから、そうなるかもね。
「未希さんもぜひきてね」
可愛らしいピンク色の招待状を渡された。
「うん、行かせてもらうね」
そんなに悲しくもなく、まるで身内の結婚式に招待されたくらいの感覚、不思議だけど。
今はそれどころじゃないというのが本音。
綾菜と健二のことが気にかかる。
綾菜は、きっと健二の浮気に気づいていて確証もある。
どんな気持ちでいるのだろう?
一人になって、不意に泣いたりしてないだろうか?
あのメモリーの動画の綾菜を思い出してみる。
いや、泣いてはいない、ものすごく怒ってるという感じでもなかった。
いまならまだ、間に合うのかもしれない。
仕事をしながら、あれこれ考えていた。
もしも綾菜が離婚することになったら?とか。
昼休み。
ぴこん🎶
『お母さん、来週末、ちょっとお願いがあるんだけど?』
綾菜からのLINE。
「来週末?金曜?土曜?」
『金曜の夕方から夜まで、翔太を預かってくれないかな?』
スケジュールを確かめる。
アルバイトを入れてたけど、誰かに代わってもらうことにしよう。
「いいよ、仕事終わったら翔太を迎えに行こうか?」
『それ、助かる!高校のクラス会があるんだ。そんなに遅くならないつもりだけど』
クラス会?
それはもってこいだ。
私の頭にピン!と閃いた。
「いいよ、遅くなっても。何時でも」
『ごめんね、健二も残業みたいで。でも、翔太を預かってもらえるならクラス会行っていいって言ってくれたから』
ふーん。
自分も女のところへ行くつもりなのか。
これはチャンスかも。
「もしも遅くなるなら、健二君に翔太を迎えに来てもらって」
『わかった。私の方が遅くなりそうなら、そうしてもらう』
「たまには、健二君に頼んで、ゆっくりしてくるといいよ」
『そうだね、そうする』
クラス会、いい機会だ。
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