おはこんばんにちは
第2話です!
それではどうぞ
イケメンさんとの出会い
体調よし、荷物よし、変装よし!
『よぉーし……いってきます!』
誰もいない玄関でそう挨拶して、俺は家を飛び出した。
今日からついに……夢にまで見た高校生活が始まるっ……!
今まではもちろん学校には通っていたけど、普通の中学校ではなかった。
芸能クラスだったから、芸能の授業があったりと、学校でも仕事しているみたいだった。
仕事があったから放課後に遊びにいったり……なんてこともしたことがない。
素顔で出歩くのは禁止されていたから、学校生活の思い出と言えば、誰もいない山奥に行った林間合宿くらい。
だから、高校生活の憧れが強かった。
友達たくさんできるといいなぁっ……。
買い物したり、カフェ行ったり、カラオケ行ったり……ふふっ、考えるだけでワクワクするっ……。楽しみだなぁ。
胸を躍らせながら、学園に向かう。
マンションからブルーロック学園までは、徒歩15分くらい。すぐ着く距離。
……の、はずだった。
『ど、どうしよう……』
俺はなぜか今、住宅街の中にいる。
こんな道、通らないはずなのにっ……。
『ここ、どこっ……』
どうしよう……編入早々迷子なんてっ……
時間には少し余裕を持って出てきたとはいえ、この状況じゃいつ学校に辿りつけるかわからない。
家を出てから、少なくとも30分以上はたっているし、このままじゃ……ち、遅刻しちゃうっ……。
極度の方向音痴だという自覚はあったけど、徒歩15分の距離を迷うなんて……。
マップを見ても、イマイチ自分の場所がつかめない。
アンリさんに電話……って、ダメだ、初日から頼っちゃ……。
お、同じ制服の人いないかなっ……。
学校の近くならきっとブルーロック学園の生徒が歩いているかもしれないと思ったけど、あたりには通勤中のサラリーマンが何人か歩いているくらい。
そういえば、ほとんどの生徒が寮生活だって言っていたもんな……ぜ、絶体絶命かもしれないっ……。
途方に暮れて、ひとまず角を曲がった時だった。
あっ……。
あの制服はっ……。
そこには、ブルーロック学園のデザインの制服を着ている男の人がいた。背を向けていたから、その人の顔は見えない。
でも、何となくわかる……
機嫌が悪そう……。
と、とにかく、今は彼に聞くしか道はない……!
『あの……!』
俺は思わず、その彼のもとに駆け寄った。
カバンを手に持って怖そうな顔をしながら歩いていた彼が、ゆっくりと振り返る。
『……』
━━━━う、わっ……!
綺麗な、人……。
驚いて、一瞬見惚れてしまう。
男の人に綺麗なんて言葉は違うかもしれないけど……まるで芸術品のような、全てのパーツが作られたような美しさだった。
中性的な美しさというわけではなく、男らしさも感じられて……芸能界でもここまで綺麗な人は見たことがない。
俺がスカウトマンなら、すぐにスカウトする……って、そうじゃなくて……!
『すみません、おうかがいしてもいいですか!』
そう尋ねた俺を瞳に映した彼は、なぜか、とんでもなく驚いたように目を見開いた。
『……っ、は?』
……ん? ど、どうしてそんなに驚いているんだろう……?
『ブルーロック学園に行きたいんですけど……道に迷ってしまって……』
『……』
『あ、あの……?』
お、俺の顔に、何かついてるかなっ……?
それとも、このメガネがおかしかった……?
ただ、じーっと、俺の顔を見ているイケメンさん。
綺麗な顔に疑視され、気まずくなった。
彼は少しして、ハッと我に返ったかのように無表情になった。
『……ん』
え……?
急に手を伸ばされ、首をかしげる。
『歩いていたら間に合わない』
えっ……もしかして、俺、学校の反対方向に向かってたのかなっ……。
というか……この手。もしかして、連れていってくれるってこと……?
い、いい人っ……。
『嫌か?』
感動して固まっていると、彼がそう聞いてきた。
ぶんぶんと、首を横に振る。
『い、いえ……! ありがとうございます!』
迷子になったのは災難だったけど、イケメンさんがいてくれて助かった……。
『え、えっと……』
て、手つ、繋いでいいのかな……
悩んでいると、彼が無言のまま手を伸ばしてきた。
『走るぞ』
『は、はい……!』
走ってから15分くらいで、学校に着いた。
俺、本当に反対方向に進んでいたんだな……あはは……。
正門のあたりには誰もいなくて、ほとんどの人が寮生活なのだと改めて理解する。
『ありがとうございました……!』
彼のおかげで……無事に間に合った……。恩人だっ……。
感謝の気持ちを伝え、深々と頭を下げた。
『あの、何かお礼を……』
『いらない』
そ、そんな……俺の気がすまない……。
『それよりお前……どうしてこの学園にいる?』
『え?』
じっと、俺を見つめる彼。
『どうしてっていうのは……?』
見つめてくる瞳の真意がわからず、首をかしげる。
彼は……ゆっくりと、薄い唇を開いた。
『なんで ”ヨイチ” が、この学園にいるんだって聞いてる』
『……っ』
その名前を口にした彼に、俺は驚いて言葉を失った。
ど、どう、して……バレたのっ……!?
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡ 300
コメント
3件
今日も最高でした!
最高!
やーっと続き来た