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(なんだこいつ。めんどくさいな。さっきのやつらの仲間か?俺は今血が飲みたくて仕方なくて、こいつらに構ってる暇なんてないのに)
「すいません、急いでるので」
「まぁまぁお兄さん、ちょっとこっち来てよ」
男は立ち去ろうとする俺の肩に手をかける。血が飲みたくて思うように動けない俺はそのまま路地裏に連れて来られてしまった。
「で、お兄さん。慰謝料、払ってくれるよね?」
「あの、俺が慰謝料払う理由なんてないですし、大体そんなにお金無いので無理です」
「なに?払えないの?だったら体で払ってもらわないとな」
そう言ってニヤッとした後、男は俺のお腹を1発殴った。俺は痛くてお腹を抑えて座り込む。
(痛い…もう、こいつの血飲んでやろうかな…)
そう思って顔をあげると、男の仲間2人が前に出る。
「俺たちも殴っていいっすか?」
「あぁ、好きにしろ」
(2人か…厄介だな…別に誰の血でもいいけど)
俺はどっちかの血を飲もうと決意して、立ち上がり、2人に近づく。
「お、なんだ?自分から殴られに来たのか?」
そのまま血を飲んでやろうと1人に近づくと同時に後ろから声が聞こえた。
「もしもし、警察ですか?男性が殴られてて」
振り返ると、爽やかな青年が携帯で電話をしていた。青年の話す内容を聞いて、男たちは青年の来た方へ慌てて逃げていく。男のうちの1人が青年にぶつかり、青年はその反動で倒れてしまった。
俺はそんな彼に近づいて右手を差し出す。
「大丈夫ですか?」
彼は俺の顔を見て驚いた顔をした後、右手で俺の手を取った。俺は彼の手を引っ張り、彼を立たせた。
「大丈夫です。ガラスが落ちてたみたいで手、切れちゃったんですけど」
そう言って彼は俺の方に左手を見せる。その手のひらには3センチ程の切り傷が出来ていた。その切り傷からは血も出ている。その血を見た瞬間、俺の鼓動は高鳴り、息も荒くなる。
(やばい…はやくヴィオレに行こう…)
この人の血を飲む選択肢もあったが、助けてくれた相手の血を貰うなんてそんな迷惑はかけられない。
「あの…助けてくれて…ありがとう…ございましたっ」
息が荒いまま、俺はそう言ってその場を去ろうと歩き出す。すると、後ろから腕を捕まれた。
「待ってください!体調、大丈夫ですか?」
「大丈夫…なので…腕…離してくだ…さい…」
「全然大丈夫じゃないじゃないですか、ほら、いったん座りましょ?」
そう言って彼は俺の肩を掴み、座らせてこようとする。
(あぁ…もうダメだ…我慢できない…ごめんなさい)
俺は心の中で謝り、彼の首元に噛み付いた。
「わっ」
驚いた声は聞こえたものの、抵抗を一切しない彼を不思議に思いながらも血をゴクゴクと飲む。もう十分だと首元から顔を離してから、我に返り俺は焦る。
「あ、あの、ごめんなさい!警察には言わないでください、お願いします!何でもするので」
俺は頭を下げながらそう言った。
「顔あげてください。心配しなくても警察には言わないので安心してください。さっきも実際には呼んでないので大丈夫です」
俺が顔をあげると、彼はニコッと笑っていた。
「あ…そうでしたか。すみません。ありがとうございます」
「いいんですよ。これくらい。あ、でも…」
そこで彼の口は止まり、言いずらそうな顔をする。
「なんですか?」
「…何でもしてくれるんですよね?」
「まぁ、はい」
「その…俺と暮らしてくれませんか?」
「えっ?」
(この人と…暮らす?)
「変なお願いですみません。実は1年前に両親を亡くして一人暮らしなんですけど、なんか寂しくて。シェアハウスとかも考えたんですけど、割と高かったり近くになかやかなかったりして…」
「そうですか…」
「あ、無理にとは言わないんですけど…でも、両親の家そのまま住んでるので一軒家です。水道光熱費は割り勘がいいんですけど…なんと…」
「なんと?」
俺がそう聞くと、彼はニヤッとする。
「俺の血、毎日いくらでも無料で提供します!」
(血を毎日無料で…)
俺はゴクリと固唾を飲んだ。
「あ、食費は俺が払いますよ。食べるの俺だけですよね、多分」
「まぁ、血が飲めれば大丈夫です」
「よかった。じゃあ、行きますか?俺の家」
そう言って彼は俺の腕を掴み歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って!まだ一緒に住むって言ってないんだけど」
俺がそう言うと、彼は手を離して1度立ち止まる。
「まぁ、とりあえず行きましょ?手の手当て、ひとりじゃやりずらいのでやって欲しいですし」
「あぁ…まぁ、それはそうですね」
「でしょ?ってことで、行きましょ」
そう言って再び歩き出した彼に俺はついて行った。
しばらく歩き、とある平屋の一軒家に入った。
リビングに入ると、彼は荷物を置き、救急セットを持ってソファーに座った。
「すいません、手当てお願いします」
そう言って彼はニコッと笑った。
「はいっ」
俺は彼の手の傷を手当しながら、ふと気になったことを聞く。
「あの、俺が血飲んだ時、なんで抵抗しなかったんですか?」
少し間が空いた後、彼が答える。
「そうですね…あなたが吸血鬼だって知ってたからそんなに驚かなかったのかもしれないです」
(吸血鬼だって知ってた?)
「…なんで俺が吸血鬼って知ってたんですか?」
「俺、ルーカーっていって、相手の正体が分かるんですよ。吸血鬼とか、普通の人間とか。エスパーとかもいたかな」
「へぇ〜…」
(相手の正体がわかる。なんかすごい能力だな。)
「信じてくれるんですか?」
「まぁ、実際抵抗してなかったし。信じるよ」
俺がそう言うと彼は嬉しそうに笑った
「なんか嬉しいですね。信じてもらうのって」
(確かに。この人も俺を信じてくれてたから抵抗しなかった。なんか嬉しいかも)
「そうですね」
俺はそう言ってニコッと笑う。
「はい、出来ました」
「ありがとうございます」
そう言って彼は救急セットを片付ける。
「お腹空いたのでご飯食べますね。あなた…あ、自己紹介、させてください。俺、鈴木諒真って言います。よろしくお願いします」
「俺は葉山瞬です。よろしくお願いします」
「はい、お願いします。瞬さん」
彼はそう言ってニコッと笑った。