寺坂くんと関係を結んだ僕は、次の日の登校が憂鬱でしょうがなかった。付き合ってる訳でもないし、友達って関係でもない。ただのセフレなのだ。一世一代の告白のはずだったのに、なぜこんな摩訶不思議なことに…。
「おはよう、山下。」
少し低めのニヒルな声。
「えっ、あっ…おはよう、寺坂くん。」
バスケ部に所属している寺坂くんは、身長は176センチで少し痩せ型の明るい人。一方僕は、月に一度集まる程度の新聞部員で、小柄だしヒョロヒョロしてるメガネ陰キャ。そんな凸凹な僕らの間で、今挨拶が交わされた。これは僕にとっては大きな第一歩!このためならなんだってできる気がする!…はずだった。
「山下、放課後空いてるか?」
「えぇっ⁉︎空いてるけど…。」
それだけ聞くと、彼は足早に学校へと向かってしまった。なんなんだ…。
その日の授業は何も頭に入らなかった。書いた字も、千切れたミミズのようになっている。サッと昆虫図鑑もどきのノートを鞄にしまい、寺坂くんの周りをうろつくことに決めた。これが僕の限界。すると彼は間髪入れずに僕の腕を掴んだ。
「行くぞ、山下。」
どこに?と聞く間もなく、彼は言う。会話する気ないのかな。
「俺の家。」
え?