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第三話
彼女はその本を手に取る。
ゆっくりとページを開くと、静かな文字の連なりが目に映る。
文字は少ない。
だが、
なぜか前にも読んだことがあるような、
自分の昔を思い出すかのような、そんな懐かしさを感じ、どこか温度があるように思えた。
彼女は黙って読み進める。
ページをめくる音だけが響く。
時間が少し流れる。
最後のページに行き、本を閉じる。
少し考えるように、
その表紙を見つめる。
そしてもう一度、
ゆっくりと最初のページへ戻る。
静かな館内。
小さく息を吸う。
そして、初めて声を出す。
「花束。」
「海辺の日向。」
「拾いもの。」
「名も無き茶人は茶を点てない。」
「ごはんだけの関係。」
「心のにおい。」
「静かな青色。」
「鈴の音。」
「My love。」
少し間。
最後のページを見つめる。
そこには何も書かれていない。
そのページにそっと触れるが、彼女はその本をそっと閉じた。
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