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在る未来の話【天気雨】
…ポツポツと雨の音がする。
雨…でも違う、周りが明るい。
此れは…天気雨だ。
…彼女が好きな天気で、俺が大嫌いな天気だ。
…嗚呼、何だか寂しいな。
ボロボロの街を歩き回っても、知り合いは愚か人も人外も、誰も居ない。
厭当たり前か。生き残ってる奴なんて居ない
知り合いの莫迦野郎が戦争起こして知り合いという知り合いを殺し回っちまったんだ。
彼女は其奴を止めようとして、其奴の心が揺らいだ時に、誰かに殺されちまった。
誰だったかは覚えてない、肉塊に成る迄莫迦みたいに其奴を撃ってたから。
其奴にも止められちまった。其奴を止めに来たのに、莫迦みたいな話だ。
…俺は、軍の最高指揮官をしている。
唯の…妖だ。
『…なぁ。 』
『御前が死んで何年経ったかなぁ…』
気付けば、崩壊したビルの真ん中で、瓦礫の上に座って懐中時計を開いて眺めていた
懐中時計には彼女の写真が有った。
『そっちで2人は元気にしてるか?』
『俺も又、2人に会いてェなァ…』
俺と彼女は夫婦で、其の間には息子と娘が居た。
だが…我が子は2人共、戦争の被害に巻き込まれて死んじまった。
彼女も俺も、目が腫れる位泣いて、喉が潰れる位叫んださ。
悲しくて、辛くて、苦しくて、罪悪感に苛まれて、「何で助けてあげられなかったんだろう」って何度も何度も思った。
『…嗚呼、なァ…皆そっちで元気か』
『御前の部下の奴等も…兄貴も…御前の妹も、俺の部下だった奴等も…御前の友達も…皆、そっちで宴会でも開いて莫迦騒ぎしてんのか?』
懐中時計の写真に向かって語り掛けた。
返って来る筈無いのに、「もしかしたら」って、小さな望みに縋り付いて語り掛けている。
返事は返って来なくて、シーンと静まり返っていた。
「嗚呼、本当に彼女は死んじまったんだな」と現実を見せつけられて、又1人勝手に絶望して、心が壊れていくのを感じる。
___筈だったのに
「結構楽しいよ。酒でも一杯やろうか?」
…後ろから、声が聞こえた。
そして手に、温もりを、感じた。
懐かしい、小さな、安心するような温もり。
でも何処か冷たくて、今にも消えそうだ。
……彼女の手の温かさに、良く似ていた。
勢い良く後ろを振り返っても誰も居ない
『……幻聴か、等々壊れちまったのかな』
信じてしまった。「未だ生きてるんじゃないか」って。
『……未だ、そっちに逝ったら、駄目か?』
……もう一度声が聞きたくて語り掛けた。
「おいおい、未だ駄目に決まってんだろ?冗談キツいぜ。」
…又、聞こえた。
『…そうだな、そうだ。判ったよ、未だ生きるよ。』
幻聴でも、嬉しかった。
彼女の声が聞こえて、又彼女の声が聞けて、安心して、とても嬉しくて、
…何かが切れたのかな?
不思議と、目から水滴があふれた。
『ッ……そろそろ行くからな。又後でな』
「嗚呼、待っとくよ」
彼女の声の幻聴を聞きながら、懐中時計を懐に仕舞って、立ち上がった
「指揮官殿!此処に居たのですか!」
…部下の声が聞こえた
『嗚呼何だ御前居たのか』
「酷くないですか!?ま、まァ兎に角…本部に戻るそうですよ!車に乗りましょう!」
…そんなに時間が経ってたのか
何時の間にか天気雨は止んでいた。
代わりに、仄かに紫陽花の香りがした
『もうそんな時間か、判った』
瓦礫の上から降りて、部下の隣に並んで歩き出した。
「あれ、指揮官殿…目が赤いですよ?何か有りました?」
『ん、そうか?寝不足かな』
「ちゃんと寝て下さいね〜?」
『わぁってるよ 』
「…なーんだ、普通に愉しそうじゃん」
「あ、社長。探しましたよ。もう戻らないと怒られますよ?」
「ん?嗚呼すまん。戻るか」
「判りました」
…改めて、自己紹介をしようか。
俺は軍の最高指揮官をしている。
唯の妖だ。
名を___
___黒崎誠人という。
「指揮官殿の其の写真って奥様のですよね?」
『ん?嗚呼そうだよ。可愛いだろ』
「えぇ、とても…もう故人の方なんですよね?」
『…嗚呼、そうだな』
「未だ、好きなんですか?」
『好きかだって?』
『んなもんじゃねーよ。愛してんだ』
「…酔ってます?」
『酔ってねェよ蹴り飛ばすぞ』