TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

気が付くと空から朝日が昇っていた。僕は窓から差し込まれる暖かい光に包まれた。起き上がってみると虹が架かっているのを視界に捉えた。今日もインスタント麺に頼った朝食を食べ終わり、僕は紅茶を淹れた。リビングを取り巻く味噌の匂いを打ち消す様に紅茶は小さな音を立ててホットボトルの中に注がれていく。今日は休日部活動な為、いつもよりも遅くても良い訳だが今日は打ち合わせに参加する予定が組み込まれている。千晶、加々美、夏樹、成瀬(僕)、漆谷、舞顧問、恵実顧問が参加する予定だ。他にも、筆記係の美月さんや映画部副部長の晴君が参加するらしい。部室はエアコンが壊れている為、カイロや温かい飲み物を用意した。今日、淹れた紅茶はアールグレイだ。爽やかでふんわりと深い香りがすっと鼻を通った。その香りのお陰で僕は頭をリセットさせることが出来た。僕は代官高校指定のナップサックの中にホットボトルを入れて準備完了だ。これから駅に向かおうと家のドアを開けるとさっきまで快晴だったのにものの数分で天気が荒れたことに気がついた。一応、折り畳み傘(持っている中で綺麗な藍色の傘だワンポイントとして星のマークが描かれている。柄の方は白色で、持ち手が握り易くなっている。僕のお気に入りの一つ) を持って行くことにした。駅に向かう道を歩いている途中で僕の予想は見事に的中した。取り出した傘を差し、駅のホームで電車を待っていると駅の案内放送が流れた。

「〜♪えーただいま七時十分、普通電車、俄雨のの影響を受け五分の遅延が発生しています。駅のホームでいらっしゃる方は屋根のある位置まで移動し、しばし待機して頂けることを推奨します。皆様のご理解とご協力の程宜しくお願い申し上げます。〜♪」

たかが俄雨だと僕は思っていた。傘に落ちる雨粒の量が増えていってることや落ちていく音が大きくなっている為、そうかもと思っていた。やはり、急激に降る雨というのは耳に心地のいい刺激音を届けてくれる。僕は移動して雨が当たらない位置でスマートフォンを手に取った。すかさず僕は、加々美先輩に連絡した。

「先輩、遅延で少々遅れます。駅の案内放送で遅延情報を受け取りました。」

と、送ると約二分程度で連絡が来た。

「あ、天宮さん!大丈夫?遅延って何処の電車?何処の駅?」

「普通電車です。駅ら渡瀬駅から代官駅の四十分掛かる電車に乗る予定でした。五分らしいので後、二十分程で到着します。」

「あ、舞Tに連絡飛ばしておくね。もう私達、着いて待機してるから!」

「はい、分かりました。」

丁度連絡が終わった頃、電車のブレーキ音が聴こえた。あまりにも金属音が擦れる音が不快すぎて思わず耳を塞いだ。だが、その不快音は塞いでいた手を貫通して豪速球で飛び込んできた。五月蝿いと、イラついていると待機していた位置に丁度良く電車の開閉ドアが目の前にきた。僕が通ろうと歩いていた時、背の低い少年と男性が手を繋いで僕の前を通っていった。僕は開閉ドア付近でイヤフォンをつけながら音楽を聴いていたらその親子が話していた。気になってイヤフォンを片耳外して聞いてみると親子が笑顔で水族館の話をしていた。

「父さん!レインコートとレインブーツがぐしょぐしょだよっ!これじゃあ…シャチさん観に行けんだ…父さん!」

「こら、電車内では疲れている会社員の方やこれから出勤なさる方も居ればこれから学校に登校する学生の方も乗ってるかも知らないだろう?」

「しゃっ、きん?くうきかん?お金の匂い?」

「違う、出勤だっ!あ、すみませんっ!!」

「父さんはマナーがなってないなぁ(笑)」

「優馬!お前…!」

僕は思わず微笑ましいと思って今までの積もっていたストレスが一掃された。周りの乗客もくすくす笑って微笑ましい朗らかな雰囲気が留まっていた。

その親子が手を繋いで出ていったのを確認して僕は今の時刻を調べた。スマートフォンの時計は七時三十分頃を指していた。徒歩五分で高校に着くからと慢心しながら向かっていったら案の定、十五分も遅刻してしまった。急いで部室として利用している教室に入ると加々美先輩がスマートフォンを弄りながら参考書をペラペラと捲っていた。僕が入ってきたのに気がついてスマートフォンを弄るのを止めて此方側に視線を向けた。

「あ、成瀬ちゃん♪速かったね!先に入った部員達は、俄雨の影響で濡れて使えなくなった舞台を掃除しているよ。昨日の運動部が窓を開けっ放しにして帰ったらしい!待ってる時間もったいないし、せっかくだからさ成瀬ちゃんと対面で練習させて貰えないかな」

僕は咄嗟に昨日、全く練習出来なかったことを伝えた。すると、加々美先輩は僕の方に台本を見せてくれた。なるほど、見ながらでいいということか。

「何処からですか?」

「マティーニの台詞が終わって、五ページの胡桃の森のシーンかな」

僕は直ぐにそのページを開いた。そこの台詞はマティーニの独り言だった。僕は台詞を読み始めた。

「あぁー、とっても良い天気ですね!空気が清々しいくて…そういえば、今宵は満月が宇宙に浮かぶ日。こんな綺麗な胡桃をあと何度見れるのだろう。私は、アイリス嬢の元に住まわなければならない。本当…何度誤魔化したって出る答えは一緒なのに。私は、何を迷っているの?」

そう読み上げたあと、僕の方を見て最後の台詞が書かれている部分を指して

「天宮さん、ここの台詞もっかい読んで欲しいな」

と、頼まれた。

僕は大きく息を吸って台詞を読もうとした。だが、声が上手く出ず僕は吐息をはぁ”と吐き出してその場で体制を崩してしまった。その挙動に僕は見覚えがあった。深く記憶を辿っている内に胃酸が口内を巡り不快感が走った。


続く。.:*・゜

傘を持って、僕は…

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

40

コメント

2

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚