『んっ……ぅ、』
眠っていた意識が目を覚まし、最初に見えたのは天井─
まだ少し寝惚けている頭を動かしてぼんやりと辺りを見回すと治くんとフョードルさんが左右別々の角で離れて眠っている
数秒間2人を交互に見て私は思った。
嗚呼、誘拐されてイケメンと出会ったのは現実なのだと─
寝る直前に、どうか夢でありますようにと祈った結果
やっぱり夢ではなく現実だった。
__まぁ落胆したところで解放される訳ではないのでネガティブ思考は此処までにしておこう。
そして私はその場から立ち上がり治くんの場所まで歩いて行く
やがて治くんの目の前までやってきた私は彼の顔に触れる
『5秒以内に起きなきゃぶん殴る──5…4…1…ぜ「ちょっと待って!ストップっ!」
…ちぇっ、』
「ねぇもうちょっと優しく起こして!?余りにも横暴じゃないか!」
『………』
「え、無視?後カウントダウンの時、3と2を飛ばしたよね。5秒以内じゃなくて3秒以内だった!!」
『………』
「………」
『………』
「…もしかして〇〇ちゃん、私の事嫌い?」
『うん!!』
「其れは肯定なの!?」
さてはこの人狸寝入りしてたな?
普通あんな事云われても目を覚まさないし寝起きの割にはツッコミが善く出来ていた
『ふぅ…』
さて次は___、
後ろを向いて、其のままフョードルさんの所まで向かう。
そして治くんの時と同様にフョードルさんの顔に触れる
『5秒以内に起きなきゃちゅーしちゃうぞ─
5…4…3…2…1……0___』
「…………」
あれ、起きないんだが?
もしかして本当に寝てる…?
『フョードルさーん、起きなきゃちゅーですよ!?良いんですか!?』
「………」
「ねぇ如何してドストエフスキーは接吻で私は殴るなの!?しかも5秒しっかり数えてるし!納得いかない!」
『え、起きない…。もしかして死んでるっ!?』
「勝手に殺さないで下さい」
『あれ、生きてる。』
「お願いだから無視だけはやめて!本当に私の事嫌い!?」
『うん!!!!(スマイル)』
「今とてつもなく死にたい誰か助けてッ」
___と、まぁこんな風に2人を起こした訳だけど…
どうすれば此処から出られるか考えなきゃいけない ─
2人を起こした私は其のままフョードルさんの隣に座る事にした。
『ねぇフョードルさん、どうしたら此処から出られるのかなぁ』
「今直ぐには難しいでしょうが、いずれ出れますよ」
『本当に…?此のままずっと此処に監禁されて骸骨に成るまで閉じ込められたりしませんか…?』
「貴女が間違った選択さえしなければ無事に此処から出れるでしょう」
『え、私?』
間違った選択とは一体何を示すのか……。
見たところ治くんもフョードルさんも凄く余裕そうに見えるけど、怖くないのかな?
其れとも何か知ってたりするのかな…
『怖くないんですか?』
「全く。貴女の方こそ怖がっている様には見えませんが」
『…正直、怖くない訳じゃないんですよ?でも治くんとフョードルさんが居るからかな…、2人が居るからあんまり怖さを感じないって云うか………エヘヘ』
「急なデレッ!!」
いやデレてないんですけど!
思ってる事を云っただけなのに!
私も判らないけど、
この2人何故か安心感があるんだよねぇ。
『其れにしても犯人来ないじゃん!何かお腹も空いてきたし暇だなぁ…』
「〇〇ちゃんって肝が据わってるよね(私としてはもっと怖がって泣きついてきて欲しいのだけれど…)」
「〇〇さんは素晴らしいですね、感心しました」
『やだぁフョードルさんったらぁ~!そんなに褒められると照れちゃう!』
「ねぇ私も褒めたよ!?如何してドストエフスキーだけに照れるの!!」
『こうやって近くで善く見ると、やっぱり美人ですね!』
「〇〇さんには敵いません。貴女の方がとても美しい」
『きゃーっ!!フョードルさんったらぁ!!』
____と云う楽しい会話を繰り広げていると、反対方向にいた治くんが私達の方へと歩いてくる。
真っ黒い笑顔を張りつけながら____。
『……お、治くん?』
やばいこの人笑ってない!
──逃げなきゃ…っ
私は危機感を察知し、フョードルさんから離れて治くんから距離をとる。
「何故逃げるんだい(ニッコリ)」
『怖いッ』
自分より20cm以上も背が高い男性に、笑ってない笑みでジリジリと寄って来られたら流石に怖い。
しかも疑問符がついていない
「ねぇ〇〇ちゃん
悪い子にはお仕置きが必要だと思わないかい(黒笑)」
『ッ!?』
どうやら私は、治くんを怒らせてしまったらしい___
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神