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水の魔女〜最愛の切れ目〜

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水の魔女〜最愛の切れ目〜

2 - 炎の魔女〜情愛〜(最愛の切れ目(続))

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2025年12月25日

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「天空の聖所シャイン」。そこは、生者と死者が交差する、白く静謐な境界線。私はそこで、最愛の彼と再会した。……いや、「再会」と呼ぶには、その距離はあまりに遠かった。

​「君が誰かを救うたび、僕の魂は君の魔法に溶けて、一緒に世界を巡っているんだ」

​消えゆく彼の優しい嘘。私が人を救い、魔力を生成し続ける限り、この「生の壁」は厚くなり、彼に触れることは叶わない。

彼が消えたあと、私は白銀の門の前で崩れ落ちた。

「……そんなの、あんまりだわ。私はただ、あなたに触れたいだけなのに」

乾いた声で泣く私の背中に、場違いなほど熱い、けれど震える手が置かれた。

​「……何が『最高の抱擁』よ。あいつ、格好つけすぎ」

​カレンだった。彼女はいつの間にか、私の後ろに立っていたのだ。

彼女の燃え盛るほうきは、この聖所のあまりの冷気に、今にも消えそうなほど小さく爆ぜている。

​「カレン……。見ていたの?」

「見てたわよ。……お姉ちゃんが、自分の命を削って魔力を作り、それを『彼に会えない呪い』だと思って絶望してるところまで、全部」

​カレンは私の隣にどさりと座り込んだ。彼女の体温が、凍てついた私の肩に伝わる。

「ねえ、お姉ちゃん。あんたが一人で、死ぬまで魔力を使い切る旅をするって言うなら……あたしがその『魔力』、全部燃やし尽くしてあげる」

​私は顔を上げた。カレンの瞳には、炎よりも熱い涙が溜まっていた。

​「あんたが人を助けて魔力が溢れたら、あたしが隣で爆発させて、パンケーキでも焼いて、盛大に無駄遣いしてあげるわよ! あんたが『生成する力』を使い切るその日まで、あたしが横でガソリン撒いて煽ってあげる!」

​「カレン……。何を言っているの。これは私の罪で、私の使命……」

「一人で背負うのが『使命』なら、二人で笑い飛ばすのは『友情』でしょ!」

​カレンは私の「透けかかった指先」を、火傷しそうなほど強く握りしめた。

「あんたが一人で、静かに枯れていくのを待つなんて、あたしが許さない。あんたがこの世界を愛するたびに、あたしが隣でその愛を『熱』に変えてあげる。二人で世界中の涙を乾かして、二人で全部の魔力を使い切って、ボロボロのスカスカになって……」

​カレンは私の胸に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくった。

「……それで、門の向こうにいるあの男を、驚かせてやりましょうよ。『二人で来ちゃった!』ってさ!」

​私の目から、一滴の涙がこぼれた。それは地面に落ちる前に、カレンの熱でふわりと白い湯気になった。

​「カレン……。あなたまで、私と一緒に地獄のような旅をするつもり?」

「地獄? 冗談言わないで。あたしとあんたが揃えば、どこだって『最高にホットなダンスホール』よ!」

​カレンは強引に私を立たせると、空っぽになった白い門に向かって、あっかんべーと舌を出した。

「おーい、そこのイケメン! お姉ちゃんはまだ貸してあげないからね! 最高に使い古して、シワシワのハッピーにしてから届けてあげるから、首を長くして待ってなさい!」

​聖所の静寂を、カレンの怒鳴り声が切り裂く。

私は初めて、声を立てて笑った。

​「……やり過ぎです、カレン。彼は、これでも聖者だったのですよ」

「いいのよ。聖者には刺激が必要だわ!」

​私たちは扉を開け、再び残酷な、けれど眩しい太陽の下へと踏み出した。

人を助け、魔力が満ちる。それをカレンが燃やし、熱に変える。

いつか、二人分の命の火が静かに消えるその瞬間まで。

​私の孤独な「待機」は、カレンという太陽に焼かれて、騒がしい「冒険」へと変わった。

私たちは、世界というキャンバスに、彼への愛を「湯気」に変えて描き続ける。

​「さあ、行くわよお姉ちゃん! 次の街では、特大の『モーニング・バースト』を決めなきゃなんだから!」

「……ええ。お手柔らかに、カレン」

​繋いだ手から伝わる熱が、私の輪郭を何よりも強く、この世界に繋ぎ止めていた。

私たちの旅は、始まる。


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