テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
***
『優奈ちゃん、来週高遠くんの予定空きある?』
「……えーっと、埋まってます」
『どこか何とかできない? どうしてもねじ込みたいって』
優奈が入社してから、引き継ぎをしつつ人事部へ足を運ぶことが多いマキ。
今も、そんなマキからの内線に対応していた優奈。
わたわたと焦りながらモニターと睨めっこしていると、操作するマウスの隣に突如手が置かれた。
今この経営企画のフロアには優奈しか残っていなかったはず。一体誰のものだとぎこちない動きで恐る恐る見上げてみれば、ふぅ……と息を吐きながらネクタイを緩めつつ、優奈と同じモニターに視線を向ける奥村の姿があった。
今日は朝から子会社も含めた営業推進本部の会議に出ていたはずの奥村だが、戻ってきてくれたようだ。
(こ、心強い……)
斜め下から見上げる横顔。
にも関わらず、一瞬の隙をつき隠し撮りしたって美しいシルエットだろう。
マキにしろ、琥太郎にしろ、そしてこの奥村にしろ。雅人の近くにはなぜこうも華やかな人たちばかりが集まるのか。
(まあ、言うよね、あれだよ。類は友を呼ぶっていうやつ?)
「マキさんまた無茶な……。ああ、瀬戸さんここは? 俺と一緒の時だから最悪高遠さん抜けても大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます!」
優奈が意識を飛ばしている間に、奥村は的確な指示をくれる。
無事に予定を変更した後には。
『あとね、週末の接待は高遠くんとなかなか折り合い悪いとこだから。お店選び慎重にね、詳細メールで送ってるからドンピシャなとこよろしくね。店選び間違うとご機嫌急降下なとこなのよ』
「わ、わかりました」
『それと高遠くんから言われてるかもだけど、営業から会議用の資料出てないから急がせておいてね』
「はい!」
嵐のような勢いのマキと通話を終え、優奈は背もたれに体重を預けた。
安堵し、力が抜けてしまったのだ。