テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

視界の端が赤く揺れている。

炎か、血か、それとも自分の涙のせいか。もうどうでもよかった。


胸の奥に空いた穴は、何を詰めても塞がらない。

愛しい人はもういない。名を呼んでも応えはなく、伸ばした指先は虚空を掻くだけ。


――なのに、体は止まらなかった。


音がないはずの空間で、鼓動だけが太鼓のように鳴り響く。

そのリズムに従うように、足が動く。腕が振れる。

笑っているのか泣いているのか、自分でもわからない顔のまま、ただ舞う。


頭の中で、かつて二人で口ずさんだ旋律が蘇る。

あのときの幸福と、今の絶望が絡み合い、狂った舞踏を生み出していた。


「……アーサー……」


かつて一緒に戦ったライバルを思い出し、名を口に出してしまった。


声はかすれて、熱に溶けるよう思いの様に消えた。

それでも体は止まらない。踊り続ける。

まるで自分の肉体ごと、この世界を焼き尽くそうとするかのように。


舞い、狂い、笑い、泣き――最後にはただ一人。

血のように赤い景色の中で、菊は立ち尽くしていた。


その瞳に宿るのは、終わりなき愛と、壊れた祈りだった。

この作品はいかがでしたか?

19

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚