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「この前、私も伺わせてもらったけど、悠人のご両親は本当に素晴らしい方達なの。優しくて、楽しくて」
「そうね、悠人さんのご両親ですもんね。素敵な方に決まってるわね。だったら、お土産は何にしましょう。あらあら、どうしましょう」
お母さんらしい。
まだ先の話なのに、急にオロオロしだした。昔からこういうところがある。
「では、こちらの美味しい和菓子がいいかなと。両親は和菓子に目がないので、きっと喜びます」
「それならたくさんお持ちしますね。良かったわ」
「お母さん。あんまりたくさんじゃ食べきれないからね」
そんな和やかな雰囲気のまま、別れを惜しみつつ、私達は車に乗りこんだ。帰りは私の運転。
「本当に温かいご両親だな。穂乃果は幸せに育ったんだ……。俺は、もっとしっかりしないとダメだな」
車内で少しほろ酔いの悠人が言った。
「どうして? 悠人はしっかりしてるよ。充分過ぎるくらい」
「穂乃果を大事に育ててくれたご両親のためにも、俺はお前を絶対に泣かせたくない。絶対に幸せにしたいんだ……」
「悠人……私、もう充分幸せにしてもらってるよ。美容師としても、女としても、ちゃんと。本当に感謝してるから。そんなにプレッシャーに感じないで」
私は、運転しながら答えた。
「プレッシャーなんて感じてない。本当に、ただ幸せにしたいと思ってるだけだ。それが、男としての責任だしな。ただ、最近は、仕事がかなり多忙になってきているし、穂乃果のための時間を取るのが難しい時もある。子どもができても面倒を見てやれるか……。そんなことを考えたら、時々不安になる。穂乃果に寂しい思いをさせてしまうことで、いつか愛想をつかされてしまうかも知れないって……」
悠人……
そんなこと考えてたんだ……
「私は悠人がいてくれるだけでいろいろ頑張れる。たとえ仕事で側にいられなくても、旦那さんが悠人だっていう事実だけで充分だよ。今だって、悠人のおかげで私は前に進めてる。だから、そんなことは心配しないで。寂しい思いなんてしてないから」
私は……迷ったけど、続けた。
「でも……2人きりの時は、思いっきり仲良くしてほしい。いっぱい甘えてもいい?」
自分で言ってて、恥ずかしくなった。
「もちろんだ。いくらでも甘えてくれ。穂乃果は本当に可愛くて良い子だな」
「な、何、それ。まるで私が子どもみたいな言い方して」
悠人は笑いながら、私の頭をなでてくれた。
どこまでも優しくて、私のことを1番に考えてくれてる悠人。
悠人は私の旦那さんになる、私達は――家族になるんだ。
何人の子どもに恵まれるのかわからない、でも、1人でも、2人でも、たとえ子どもができなかったとしても、私達はずっと仲良しで、一緒に人生を歩いていく。おじいちゃんとおばあちゃんになって歳を重ねれば重ねる程、お互いがお互いを大事に思えるような……そんな関係でいられたらどんなに素敵だろう。私は将来の2人を想像して、また嬉しい気持ちになった。