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ちょっとした平和を願う。このまま、何も無く、今日が終わりますように。
そんなちっちゃな願いが届いたのか。その日起こったことはなかった。
_______その次の日の夜。
「中也、寝よう。」
既に日を跨ぎそうな時間に布団へ向かう。
こんな時間なのにぱっちりと目を開けたままの中也が隣へ寝転ぶ。
少しずつ落ち着いていることを確認してから、一先ず私も寝ることにした。
太宰の寝息が部屋に響くようになった深夜。既に日は移り変っていて、新たな一日を始める為の時間が進んでいく。
呼吸も落ち着き、何事もなく寝れたら良いと思っていたが、そうもいかないらしい。
もう俺は自力で寝る事などできない。
さて、今日も探そうか。
別の所へ隠された薬を見つけ、今度こそ規定量で終わらすために、2錠だけ出して全部片付けた。そして部屋に戻ってから飲む。それが俺の作戦だった。
そうすればきっと、規定量で終わって、睡魔が来て、寝れて、太宰を安心させることができると思った。
でも何時間経っても寝れなかった。早く寝たい。眠たくない。あと数時間で太宰が起きる。ちょっとだけ。ちょっとだけ飲んで、もう1回寝よう。
騒がしい鳥のさえずりを聞いて起きる。ちょっと寝るつもりだったのに、随分と長いこと寝ていたようだ。
中也が何も無いといいけど。
「ん〜、、おはよう。寝れた?」
クルッと首の向きを変え、其処に居る想い人へ声をかける。
「おは、よ、、、」
中也は居た。だが元気がない。この一晩で何かあった。それだけはわかった。
喉が枯れている。顔は変わらず青白いけど、、。
また爪噛んでるな。昨日よりボロボロじゃん。
髪の毛が荒れてる?掻き乱した位じゃないとこうはならない。
其処で悟ってしまった。中也は夜に1人で抗っていたのだと。
「うん。軽い朝ごはん用意しとくから、ちょっと待ってて。」
私の勘が当たってなければいいけど。
リビングへ行き、1番初めに隠し場所を見る。
案の定開けられて、前のように片付けられている様子はなかった。空けて、そのまま。引き出しの中も随分と荒れている。
じゃあゴミ箱を見ようか。
さて、どれだけ飲んでしまったのやら。
ガサ、と音を立ててゴミ袋を漁る。いや、漁る意味はなかった。
何故なら1番上に、隠してあった全ての薬のゴミが捨てられていたから。
「う、、、」
あまりの数に圧倒されてしまった。
あの様子だと気づいてない。
来る前に片付けないと。
まずは隠し場所。早く鍵をつけないとと考えながら引き出しも整理する。
その後はゴミ袋。全部出して外に出す。
その次は、、トイレかな。
私は早足に歩く。近く度に強くなる胃酸の香りが鼻と心を乱してく。
ガチャ
「〜ッ、!」
トイレの中に、大量に吐き出された薬と、血。
どうして血が?
もしかして、吐いてから喉を洗っていない?
だとしたら危険だ。喉が荒れる。
トイレを流しコップに水を注ぎ中也の元へ。
「中也、先に水飲まない?」
あくまで自然に。
「あ、ぁあ、、、ありがと、、」
不自然な枯れた声。嗚呼、こうなるまで吐いてたんだね。ごめんよ、寝てしまって。
小さくクピクピと飲むその姿と、元気よく葡萄酒を飲みながら私を罵倒するあの姿を何回も照らし合わせるけど。全く合わない。
中也、、、、もう一度、笑ってくれはしないだろうか、?
そんな願いは届かなかった。
何日もすぎた。何日も寄り添った。でも中也は悪化するばかりだった。
私と目を合わせてくれなくなった。脳筋だった頃の元気な声を聞かせてくれなくなった。
綺麗に整えてた爪と髪がボロボロになっていった。
掃除されていた部屋にホコリが積もって言った。
私にも余裕がなくなっていった。
飲んで荒れたまんまの空瓶を片付けることができなくなった。
中也の昨夜の様子を判断することができなくなった。
私自身が薬に手を出そうとしてしまった。
「ダメな人間だな、、私って、」
随分と変わり果ててしまった中也。今や双黒の姿等、、、否、そんな事考えてはならない。
私は、今でも中也のために動く。
よし、今日も飲んでしまっただろうか。
「中也。ゼリー持ってきたよ。飲める?」
中也は首を振った。以前までは、「食欲ねぇ」なんて、答えてくれたじゃない。
少しずつ心が割れる音がする。
「ん〜、とりあえず水を飲もっか。何も胃に入ってないとしんどいよ。」
そう優しく手渡すと、中也も手を伸ばしてコップを手に取った。
それだけが希望だった。
最近の中也は力が入らない。だからプラスチック製のコップにちょっと水を入れただけの軽いものにした。
でも、案の定今日もコップをこぼした。
目の前の現実が酷く憎い。水でさえ持てない現実が辛い。
「、、、、ご、め、、」
殆ど出てない弱々しい声が更に心を殴る。
この前は、「悪ぃ」とか、「すまねぇ」とか、そんなのだったじゃない。「ごめん」なんて、柄じゃないよ。中也、、、
でも不安にさせないようにしないと。私は笑顔で安心させるのが役目。
「んーん。大丈夫。ストローにすれば良かったね。持ってくる。ゼリーは置いとくから、食べれる時に食べてね。」
いつもどうりに水を拭き、コップを取り、水を入れに行く。今までは私自身が中也の口に運んでいたのだけど、口を開けるのがしんどそうだった為、ストローを用意した。これで口をほとんど開けなくて済むし、私もコップを持つだけで良い。
さぁ、飲んでくれるかな。
「はい。コップ持っとくから、ちょっとだけでも飲んでみよ。」
チラリと上げた顔をコップまで近づけ、力なく水を吸う。嗚呼、飲んでくれて、ありがとう、、
今日もまた不安な日が始まる。
まぁ寝てないから昨日の続きなだけだけど。
なんだか視界がくらくらする、?気のせいか。
今日は、、ベッドから歩く練習でも、させようか。
でも、私がまともに歩けて無いのに、どうやって。
じゃあ食事を。
でも、中也でも国木田君でもあるまいし、どうやって。
じゃあ会話は?
無理だ。中也からの返答が難しいのに、どうやって?
嗚呼、、一体私は何を、、、
中也を支えるって、乱歩さんにも、言われたじゃないか、、情けない。
「、、い、、」
ふと後ろから声が聞こえた。
中也だった。
「どうした?」
「だざ、ぃ、、、もぅ、大丈夫、、やすん、で、、。おまぇ、が、、もた、な、ッ」
途端に中也が泣き出してしまった。
ポロポロと大きな涙を、
布団へ落としながら。
「中也、?」
正直驚いた。中也がこれだけ私のことを見ているなんて思わなかったからだ。
「てめ、、ずっと、ッ、、ふら、ふ、ら、、して、。まともに、、寝れてねぇ、くせ、して、、、ッおれのまえ、で、、むり、して、ッ、」
弱々しいもしっかりと言葉を聞く。
ふらふらしてるの、バレちゃった、、
そっと中也に近づく。
「大丈夫。私は大丈夫。寝ないのもいつもの事でしょ。ほら、私を心配する暇あるなら、一緒にご飯食べよ」
ひぐひぐと泣きながら私を強く抱き締めるその腕が、1番心配だよ、、
でも、ほんとに、ちょっと、しんどい、かも、?
以前。1度完全に薬から切り離したことがある。
隠すんじゃなくて、全部捨てて、買いにも行かず。
そうしたら、自然回復を待つだけだと、そう思ってた。でも逆だった。
中也はすぐに呼吸を乱した。
早く寝たいだけだと、ずっとぶつぶつ話すようになった。だから隠して、飲むまでの時間稼ぎだけしようと、そう考えた。
これは、、どうすれば、、?
、、休みから何日経った?
そろそろ、私も、限界なのかもしれないね、、
だれか、
たすけて、
コメント
2件
太宰さんがどーなるのか楽しみです…!✨