テラーノベル
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「鳴海さん、ウサギ耳つけてくれたんだ」
そういって俺に向き直る渉が、耳に手をやった。何をしているかとみれば、耳をもんでいるんだから笑える。しかし俺の耳でもないのに触れられて、なんだか体が熱く感じられるのも充分笑えると思う。
「やめろよ、恥ずかしい……」
「いいじゃん、これがみたかったんだよ。可愛いね」
「男に可愛いとかいいから」
「照れてる?」
「うるせぇ!照れてない!」
それより行くぞ、と相手を急きたてて耳をもむ手を振り払う。俺が先に歩きだして、適当に展示を見て回るかと思っていたその時。渉を呼び止める声がした。
「あの、坂崎渉さんですか?」
それは二人連れの女子生徒で、見たことはない。だがその一方が向ける彼への視線をみれば、彼女が渉に抱く感情を察知するのはたやすかった。
さも面倒くさそうに二人に視線をやり、俺に助けてくれと視線をよこす。俺は首を傾げて助けない。薄情者と、口だけ動かして責められた。
「さっきの花澤先生との勝負、すごくかっこよくて感動しました!」
「はぁ……どうも」
「それで……あの、今日の放課後、後夜祭とか参加しますか?よかったら、一緒に」
「そういうの、止めてくれない」
「え?」
渉が冷たい視線を、相手に向けた。
「俺、好きな人と一緒にいるつもりだから」
そう言われた瞬間の、少女の複雑そうな表情が印象に残った。クラスでもモテる部類、しかも相当いい体をしているのに。だからこそ、渉に惹かれたのだろうか。
他の男子生徒では、彼女に釣り合わない。二人があわただしく彼に礼を述べて、どこかへ走って行ってしまう。きっと、彼女は泣くんだろうな。そんな気がした。
少女たちの後ろ姿を見送る俺の肩を、渉が軽く叩く。
「行こうか」
先頭にたって、どこかの展示室へと入ろうとする。だが立ち止まったまま、ポツリとこぼしていた。
「今の子、渉に似合うと思うけどな……」
「は?」
耳の良い彼が、俺のいったことに振り返ってきた。止めようと思いながら、口が勝手に動く。
「だってそうだろ。ああいう子が渉には似合うと思うぜ。今から追って、やっぱり一緒に回ろうって言ってくれば?」
「それ以上いうと怒るよ!」
「なんで怒るんだよ。本当のことだろう……」
「俺は鳴海さんが好きだって、いつもいってるだろ。どうして、いまさらそういうこと言うの!?」
「どうしてって……考えるだろ。俺は普通だし、それに女子でもないし、胸とかないし、抱いたって固いだろ。筋肉あるから。それから、これといった特徴もないし。それに、やっぱり人に大手ふって言える関係じゃないだろ。手とか男同士でつなぐとか、お前に迷惑っていうか……無理……渉が俺を好きでも……」
あぁ、そうか、分かった。俺は言いながら、なんとなくわかったような気がした。彼に対する感情を隠している、そういうモノの正体。答えを見せない、大きな穴。渉に迷惑をかけてしまうのではないかという感情が。
「渉が俺を好きでも……お前に釣り合う自信がない!」
怒ったように舌打ちして、俺の腕を掴もうとした。だが、その手をかわして階段に向かって走っていた。
転がるように階段を駆け下り、二階の人で賑わう廊下を全力疾走で駆け抜ける。背後から渉が叫ぶように俺の名を呼び追いかけてくるが、人ごみの壁によってその声も遠ざかる。
違う階段から三階に戻り、そこで水族館をあしらったらしい二年の展示クラスに侵入する。その教室の中心にそびえたつ、布で覆われた塔の下に隠れて一息つく。その教室にはもともと人がいなくて、青く光っているために薄暗い。意外なところで、ラッキーだと思う。
そこで声をひそめて隠れていれば、渉が俺を追いかけて走る音がしたがそれもすぐに遠ざかっていった。弾む鼓動を抑えるように膝を抱え込み、自身の愚行を恥じて壁に頭を擦りつける。
ぬいぬい
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コメント
1件
あ〜〜第17話もエモすぎて泣いた😭💕 渉くんの「好きな人と一緒にいるつもりだから」って告白断りの台詞、マジで胸キュンが止まらんかった…! でもその後の鳴海さんの自己肯定感低めな本音パートが切なすぎて、逃げ出しちゃうシーンも含めて感情持ってかれたよ😢 ウサギ耳つけた渉くんの「可愛いね」も反則級だし、塔の下で隠れてる鳴海さん早く見つけてあげて!! 続きが気になりすぎる〜〜⋆♡