**第1話: 異世界へのサーブ**
青々とした空が広がり、風がやわらかく肌を撫でる、平穏な昼下がりだった。高校2年生の相馬智也(そうま ともや)は、今日もテニス部の部活に精を出していた。彼はテニス部のエースで、特に強力なサーブで知られていた。コートの反対側に立つのは、同じテニス部で親友の篠田啓太(しのだ けいた)。二人は中学時代からのライバルで、共に成長してきた。
「啓太、今日は負けないぞ!」
智也が満面の笑みを浮かべてラケットを握り直す。彼の視線は鋭く、まるで獲物を狙う鷹のようだった。啓太も負けじとラケットを構え、にやりと笑う。
「言ったな、智也。俺のリターンも、いつもとは違うぜ!」
智也がボールを高く放り上げ、全身の力を込めてサーブを放った。その瞬間、目を疑うような出来事が起こった。ボールがネットを越える直前、突然眩い光が二人を包み込んだ。
「なんだ…!?」
智也と啓太は瞬時に視界を奪われ、周囲の音が遠のいていくのを感じた。次の瞬間、二人は足元が消えたような感覚に襲われ、意識が遠のいていった。
智也が目を覚ました時、彼は見知らぬ草原の中にいた。周囲には広がる緑の大地、そして遠くに見える巨大な山脈。普段見慣れたテニスコートとはかけ離れた光景が広がっていた。
「ここは…どこだ?」
智也が自分の身体を起こし、周囲を見回すと、すぐそばに啓太が倒れているのに気づいた。慌てて彼の肩を揺さぶる。
「啓太、起きろ! 大丈夫か?」
啓太はうっすらと目を開け、ぼんやりとした表情で智也を見上げた。次第に意識が戻ってくると、彼も同じように周囲を見回し、驚愕の声を上げた。
「ここ…どこだよ、智也!? 俺たち、どうなってるんだ?」
二人は立ち上がり、少しずつ現実を受け入れ始めた。そこは明らかに彼らの知る世界ではなかった。空には異様な色の鳥が飛び交い、遠くの森からは見たこともない動物たちの鳴き声が響いていた。
「まさか…異世界ってやつか?」
智也がぼそりとつぶやくと、啓太は信じられないとばかりに首を振った。しかし、目の前の光景が何よりもそれを証明していた。
「でも…どうして俺たちがこんなところに?」
その時、二人の前にふわりと宙に浮かぶ光の球が現れた。光の中からは、穏やかで柔らかな声が響いてきた。
「ようこそ、異世界アルビオンへ。あなた方はこの世界を救うために選ばれた勇者です。」
突然の宣告に、二人は呆然と立ち尽くす。しかし、彼らには選択の余地はなかった。運命は彼らを、新たな冒険の世界へと誘ったのだ。
「…まさか、本当にこんなことが起こるなんてな。」
智也は自嘲気味に笑い、啓太に視線を送った。啓太も同じように苦笑し、そして二人は覚悟を決めたようにお互いにうなずき合った。
「やるしかないみたいだな。これも…何かの縁かもしれない。」
こうして、相馬智也と篠田啓太は新たな世界での冒険へと足を踏み出すこととなった。彼らが今後直面する試練や出会いは、まだ誰にもわからない。しかし、二人の絆が試される旅が、今まさに始まろうとしていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!