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アンドレアは、だが、気づいた。少女がどんな姿をしていたか、自分が思い出せない事に。
瞳の色は? 黒? 青? とび色? 髪の色は? 黒かった? 金髪だった? それともブルネット? 背は高かった? 小さかった? 何も、何も思い出せない!
一時間ほどそこに座り込んでいただろうか。アンドレアは絵と道具を家にしまい、早朝の街へ降りて行った。道を歩きながらアンドレアは思った。
「どうして今まで気づかなかったんだろう。この世界は、こんなにも色に満ち溢れていたのか」
街の花屋のおばさんに訊いて花の名前はすぐに分かった。ついでにあの丘の廃墟の事も訊いてみた。花屋のおばさんは痛ましそうな口調で言った。
「あれはこの前の戦争の時まであった女学校の跡だよ。戦争中に大砲の弾が間違ってたくさん、あそこに撃ち込まれてしまってね。大勢の娘さんたちが亡くなったんだよ」
その花の名前は勿忘草(ワスレナグサ)といった。
(作者注:勿忘草の英語名は Forget-me-not といいます)