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篠原愛紀
私は
煮え切らない私が嫌いだ
ずっと誤った選択をし続けて来た人生だった
それを解っていて尚
決断できず
優柔不断で
結局同じ思考で
結局同じところをグルグルと回り続けている
そこに落ちた
雷のようなリュカの
強い言葉
強い口調で私を叱咤し
正論と自論で
私の進む先を
私のあるべき運命を
指し示し
私の思い込みの運命を
強引に捻じ曲げる
その先にある
あまりにも壮大で
考えたこともない
私の本当の運命に向かって
考えたくとも
考える事を拒んで来た
陰鬱な庶民で
既婚者である私にとって
あまりにも険しく
あまりにも神々しい終着地
数多の困難と
数多の障壁が
待ち構えている事を解っていて尚
私にそれを強いようとする
——リュカの執着
オフィスで共に過ごした夜
あの時語ってくれた事が真実なら
リュカは
私を探し求め
若くして単身はるばる日本へ来た
そして
私を追い求め
私の勤める会社を買収してまで
私に執着した
私の会社での境遇を変え
今
私の家庭での境遇を変え
私の運命までをも変えようとしている
きっと
オフィスで共に過ごした夜
あの時語ってくれた事は真実なんだ
もう……いいよね?
彼を
リュカを
信じても
私は
自分自身に聞いている
いい加減
負の連鎖は終わりにしても
もう十分だよね
陰鬱な堂々巡りは
たとえ
怖くても
不安でも
それが
経験のない未知なる
新たな運命だとしても
リュカを信じよう
リュカの私への強い言葉
夫の浮気相手が明確になった事
重大な事が一度に押し寄せ
私の頭は混乱しきり
ただ一つだけ
強く自分に誓った
——リュカを信じよう
もう自分にも嘘をつかない
リュカにも隠さない
そうしようと誓った
それが
陰鬱で醜い自分だったとしても
リュカには正直であろう
「わかった……ありがとう、リュカ」
「でも……私、どうすれば良いか全くわからなくて」
自分の考えが
ひとしきり纏まっても尚
どうすれば良いのか皆目見当がつかない
それが
私の正直なところ
「大丈夫、なるようになるさ」
「人それぞれ考えも決断もあって、皆平等に時間は流れる」
「時間と共に状況も考えも変わるから、今全て決断できるものじゃないよ」
「ただね、瑠奈がどうしたいか。それが大事」
「人生は決断の連続だよ、進む方向だけは目を逸らさないで」
なんとも抽象的で
なんとも掴みどころのない言葉に聞こえた
でも
私は既婚者
それが現実
今全てがドラスティックに変貌を遂げるわけじゃない
それはなんとなく分かる
「わかった……リュカのこと……信じるね」
***
この週末
本当に色々な事があった
単調で
淡泊だった
これまでの自分の人生が
まるで嘘のように
良い事も
悪い事も
色々と
沢山
一気に押し寄せた週末だった
あまりにも色々な事があり過ぎて
頭の許容量を遥かに超えている
でも
方向性だけは明確になった
それでも
それだけに山の様に
膨大な困難と問題が待ち受けている
それもまた明確
一晩お世話になったリュカ宅から退去し
タクシーを拾ってもらい
タクシーで自宅へと戻る帰路
複雑な表情で
そんな事を考えながら
考え耽る
直近の難題は自宅と夫
夫に無理矢理抱かれたのが
金曜から土曜に変わる深夜
土曜の早朝に自宅を飛び出し
夫に連絡もせず
リュカ宅に外泊した
正直
夫と顔を合わせたくない
正直
苦痛に感じる
何を話せば良いのか
何を聞かれるのか
皆目見当がつかない
あの夜
純也は泥酔していた
私にした事を覚えているのかさえ怪しい
考えれば考えるほどに
話すべき事があり過ぎて
その
話すべき事が複雑過ぎて
その事を
話すのが苦痛過ぎて
正直
話したくない
逃げ出したい
嫌な事はスキップして
早く時間を再生して
早く未来へ辿り着きたい
でも
私は少し強くなれた気がする
悲観はすれど
進むべき方向だけは定まった
それが
芯となり
ブレない軸が通った気がする
そんな事を思案しつつも
時の流れは残酷で
やがてタクシーは
見慣れた景色へと
飛び慣れた現実へと
徐々に
確実に
帰還しつつある
「この辺りで大丈夫です」
停車したタクシーの運転手に
リュカから貰ったタクシーチケットを渡す
私はこれから
進むべき方向へ進むために
再び
現実と向き合う