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「何、アンタ、気持ち悪いんですけど」
精一杯の勇気を振り絞って南川は36号に言い放った。
「おやおや寒いのですか?随分と震えていらっしゃる。でも、大丈夫ですよ」36号が南川に笑い掛けた。
「直ぐに暖かくなりますから」
36号はしゃがみ込むと、立ち上がれないままの南川の顔を覗き込んだ。
「私、今から貴女のピアスを千切り取りますので、耳たぶが千切れる瞬間に「ひでぶ」と仰って下さい」
「は? アンタ何言ってんの?意味判んないんですけど」
「ひでぶ ですよ。いいですね」
36号は右腕を伸ばすと、南川の左耳たぶにあるピアスを2本の指で摘んだ。
「ちょ、触んないでっ、痛っいだだだ」
「痛いではなく、ひでぶです。お間違いなく」
南川が悲鳴を上げる。両手で36号の右腕を掴んで抵抗しながら、南川は根岸に懇願した。
「お願い。ネギっち助けて。この女を止め−−」
南川が言い終わる前に、彼女の耳元で鈍く湿った音がした。
ブヂッ。
焼けるような痛みが耳たぶを襲う。南川が泣き叫ぶ。
「いだあああぃ」耳たぶを押さえてうずくまる南川に、36号が平然と言い放つ。
「駄目ですよ。「ひでぶ」と言わなくては。これでは映えないじゃないですか。でも大丈夫ですよ」36号が冷たく笑う。「まだ右が残っていますから。さぁ、テイク2と参りましょう」
「あ、あの……36号さん……」
流石に見かねた根岸が36号に声を掛けた。
「ああ、根岸さん。どうですか、このピアス。戦利品として頂いておきますか?」
36号は血のついたピアスを手の平の上で転がしてみせると、根岸に笑って見せた。
「いや、それは……ちょっと……」
顔を引きつらせた根岸に、36号は納得して頷き返す。
「こんな安物、貰う価値もない、と?中々の鑑定眼ですね、根岸さん」ピアスを指先で弾いて捨てると、36号は南川に向き直った。
「さあ、テイク2と参りましょう。今度こそ「ひでぶ」と仰って下さいね♡」
「何で、何でレオナがこんな目に合うの?酷いよ、酷過ぎるよぉ」
泣きじゃくる南川の頭を、36号は増田にした時のように押さえつけた。36号の声音が変わる。
「何故、と仰る?何故か。答えは至極簡単。異教徒が我が信徒に無礼と暴力を働いた。これを誅さずして何が魔神か?何が七王か?」
36号の蛇のような瞳孔が、言葉とともに大きく広がる。
彼女の怒気に合わせて、雷鳴が激しく轟いた。