テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
3,362
#⛄️
kaede🍁
89,992
篝火

9,000
kaede🍁
911
九人での活動も軌道に乗り始め、それぞれの個人仕事も増えていた。
特に阿部は。
クイズ番組への出演。
情報番組。
雑誌。
企業イベント。
「あべちゃん可愛い。」
「応援してます。」
街を歩けば、そんな声を掛けられることも珍しくなくなった。
そして最近は、男性ファンも急激に増えていた。
___________
その日は番組の収録だった。
休憩中。
男性スタッフが阿部へ話しかける。
「阿部さん。」
「今日も綺麗ですね。」
「ありがとうございます。」
阿部はいつも通り笑顔で返す。
その光景を少し離れた場所から目黒は見ていた。
胸の奥がざわつく。
(……嫌だ。)
理由は分かっている。
阿部は何も悪くない。
スタッフも仕事として接しているだけだ。
それなのに。
(見ないで。)
(そんなに笑わないで。)
(俺だけに笑ってよ。)
ドス黒い感情が、少しずつ心を染めていく。
___________
収録後。
マネージャーから新しい仕事の説明があった。
「阿部さん。」
「来月からクイズ番組のレギュラー候補が……」
その言葉を聞いた瞬間だった。
「……減らして。」
目黒が低い声で言った。
その場が静まり返る。
阿部が驚いて目黒を見る。
「めめ?」
目黒はマネージャーを見たまま続ける。
「あべちゃんの仕事。」
「少し減らしてください。」
「身体にも負担だし。」
「そんなに働かせなくても……」
「目黒。」
渡辺が静かに遮った。
その一言で目黒は我に返る。
「……。」
全員がこちらを見ていた。
阿部は困ったような表情をしている。
目黒は何も言えなくなった。
「……ごめん。」
それだけ言って楽屋を出た。
___________
帰り道。
目黒は一人で車を走らせていた。
ハンドルを握る手に力が入る。
(違う。)
(本当は身体が心配なんじゃない。)
(嫉妬だ。)
(あべちゃんを見られたくない。)
(俺だけの。)
その考えが浮かんだ瞬間、自分が怖くなった。
(このままじゃ。)
(いつか。)
(家で二人きりになった時。)
(仕事を辞めてって言うかもしれない。)
(外へ出るなって言うかもしれない。)
(酷いことを言ってしまうかもしれない。)
アクセルを踏む足が少し震える。
(そんな自分になりたくない。)
___________
翌日。
目黒は岩本を食事に誘った。
事情を聞いた岩本は最後まで黙って聞いていた。
話し終えると、静かに口を開く。
「よく相談してくれた。」
目黒は苦笑する。
「もう。」
「自分で止められそうになくて。」
「あべちゃんを傷つける前に。」
「誰かに止めてほしかった。」
岩本は腕を組み、少し考える。
「俺一人じゃなくて。」
「みんなにも聞いてもらおう。」
「え?」
目黒は驚く。
「でも。」
「恥ずかしい。」
「重いって思われる。」
岩本は笑った。
「今さらだろ。」
目黒は思わず吹き出す。
「……それもそうか。」
「みんな。」
「お前が阿部を大切にしてることは知ってる。」
「だから。」
「一人で抱え込むな。」
「恋人のことは恋人だけじゃ解決できない時もある。」
「仲間がいる。」
目黒はゆっくり頷いた。
「ありがとう。」
その日の夜。
岩本のメッセージがグループチャットに届く。
『明日仕事終わり、男だけで集まれる?』
『少し話したいことがある。』
数秒後。
佐久間から返信。
『男子会!? 行く!』
康二。
『俺も!』
ラウール。
『何かあった?』
宮舘。
『了解。』
目黒はスマートフォンを見つめ、小さく息を吐いた。
まだ怖い。
でも。
一人で抱え込むより、きっといい。
そう信じて、翌日の男子会へ向かう決意を固めた。
コメント
1件
読了しました。今回の話、すごく刺さりました……。目黒の「見ないで」「俺だけに笑ってよ」っていう独占欲の描写が生々しくて、自分でも怖がってるところに「仕事を辞めろって言うかも」って自覚してるのがまた切ない。岩本の「今さらだろ」って返し、めちゃくちゃグッときました。仲間がいるって、本当に強いなあ。この先の男子会、どうなるんだろう……。