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そう思ったら、思わず
「……実は、図星です。どうしたらいいでしょう?」
修太郎さんとのことを勘ぐられるよりはいいかな?と思って口早にそう言ってしまっていた。
それに対して、高橋さんは間髪いれずに「いつも通りでいいっしょ?」と言ってくださって。
その迷いのない答えに、思わず「え?」と聞き返したら、「だって酒の席でのことでしょ?」と言われて。
そうですね、と小さくうなずいたら「だったら無礼講だし相手も何も言ってきやしませんって。いつも通りおはようございまーす!って堂々と挨拶してやりゃーいいんですよ」とにやりと笑いかけていらっしゃる。
「有難うございます、そうします!」
高橋さんの笑顔に釣られて微笑みながら、私は下で偶然、彼と出会えたことに感謝した。
修太郎さんにも、変に気負わずいつも通りでいこう。
そう思えたから。
でも――。
「おはようございます」
高橋さんの後ろから、あまり目立たないように気をつけながら都市計画課のフロアに入る。公園緑地係に至るまでにある各係の横を、皆さんにご挨拶しながら通り抜けていると、そんな私の様子に気がついた修太郎さんが、一瞬あからさまに不機嫌そうなお顔をなさった。
林さんと森重さんは現場に出る支度のため、すでに地下にある車両置き場に向かわれたようで、うちの係には修太郎さんしか残っておられなかった。
ある意味、そういうのも含めていつも通りの朝の様子。
そう――。修太郎さんの、どこか剣呑とした雰囲気を除けば。
私は修太郎さんの刺々しい視線に戸惑いながら、「おはようございます」と挨拶をする。もしかするとスルーされてしまうかも?と覚悟していたけれど、「おはようございます」と返事はしてくださった。でも、やはり何かピリピリしていらして。
今日は手荷物が少なめだったので、ロッカーには向かわず机の引き出しに入れたらいいかな?と思っていた。でも現状が何となく気まずくて、「荷物、ロッカーに入れてきますっ」とつぶやいて、思わず逃げるように席を離れてしまった。
その背中に、修太郎さんの視線が痛いほど刺さっている気がして……。
(うー。私、何か修太郎さんを怒らせるようなこと、してしまったのでしょうか?)
思い当たる事象があるとすれば、高橋さんと共に北扉から入ったことくらい。
南扉から出て、女子更衣室へ向かいながら、私は気持ちがそわそわと落ちつかなかった。
***
中本さんが、『藤原』とテプラで名入れをしてくださっているロッカーに荷物を入れてから、そこにすがって大きくはぁーっと吐息を漏らした。
「――なぁに? 朝から盛大なため息なんてついて」
と、たまたま更衣室に入っていらした中本さんに、その嘆息を聞かれてしまう。
「あ、おはようございます」
私はロッカーから慌てて背中を離すと、中本さんに挨拶をする。
「おはよう」
それに答えながら、中本さんが私をじっと見つめていらっしゃる。
「藤原さん、今朝は高橋くんと一緒だったみたいだけど……前に言ってた許婚って、まさか彼じゃないわよね?」
言葉と一緒に刺すような視線を向けられて、私は思わずたじろぐ。
「ま、まさかっ。高橋さんとはたまたまエントランスで出会ってご一緒させていただいただけなのですっ」
慌ててそう返すと、「ふーん」と言われた。
「ねぇ、藤原さん。高橋くんって今は臨職してるけど……実際はどこぞのお金持ちのご子息だって知ってた?」
私を探るような目でじっと見つめながら、中本さんは「ほら、貴女と高橋くん、市の職員課からの雇いじゃないでしょう? えっと……そう、施設管理公社だっけ? 二人ともそこからの臨時職員さんなの。だから私、情報をつかむの遅れちゃったのよね」とつぶやかれる。
何でも、市の雇いの臨職さんと違って、施設管理公社からの臨職は、本採さんと一緒に庁舎から出て現場での仕事を補佐することも許されているんだとか。詳しいことはよくわからなかったけれど、扱いも施設管理公社から市への派遣という形になっいるそうで。
そういえば私、お給料日には他の臨職さんたちと違って、施設管理公社に給与明細を受け取りに行くことになっている。
中本さんのお話を信じるならば、高橋さんも私と同じ?
そこでふと、高橋さんが道路整備推進係の職員さんたちと一緒に現場に出て行かれるのを何度かお見かけしたことがあったことに思い至った。
コメント
2件
あああ、やはり修太郎さん、不機嫌やん💦
おお、月曜の朝の気まずさがめっちゃ伝わってきたわ…!修太郎さんの不機嫌オーラ、こっちまでヒヤッとする。そんな中で高橋さんの「いつも通りでいいっしょ?」がめちゃくちゃ頼もしくて、ホッとした。中本さんの探りも入ってきて、高橋さんの正体にちょっと興味湧いてきたな。続き気になる🔥
鷹槻れん

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