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「無限の恵方巻き」
新年が明けて間もないある夜、街外れのコンビニに奇妙な貼り紙が出現した。
「特別限定!無限に食べられる恵方巻き - 1本1,000円」
貼り紙を見た人々は冗談だと思いながらも、好奇心に負けて次々にコンビニを訪れた。そこで売られていたのは、普通の海苔巻きに見えるシンプルな恵方巻き。しかしその触感は妙に冷たく、重量感がある。何より「食べると願いが叶う」という言葉が、欲望を掻き立てた。
ある若い男性、タクヤも興味本位でそれを購入した。家に帰ると早速、恵方巻きを東北東の方角に向けて食べ始めた。一本食べ終わると、なぜか体が軽くなり、ずっと肩こりだった右肩が治った。驚きながらも、彼はもっと良いことが起こるのではと期待し、もう一本食べた。すると、足の古傷の痛みが消えた。
「すごい!本当に願いが叶うんだ!」
彼はどんどん食べ進めた。しかし、食べれば食べるほど、妙な違和感が募る。口の中に広がる味はだんだんと鉄のような後味を持ち、体が冷えていく感覚が強まる。そして何より奇妙だったのは、食べ終わったはずの恵方巻きが目の前に現れることだった。
「なんだこれ……?」
タクヤは不安を感じ、止めようとした。しかし、目の前の恵方巻きから何かに引き寄せられるように手が伸びる。止めたくても、手が勝手に動くのだ。
次の日、タクヤは部屋で発見された。彼の周りには無数の恵方巻きの残骸が散乱し、彼自身は細長い一本の海苔巻きのような姿に変わり果てていた。
それから数日後、再びあのコンビニに「無限に食べられる恵方巻き」の貼り紙が現れた。タクヤが食べた恵方巻きは、どこかの誰かがかつて同じように食べ、呪われた末に姿を変えたものだったのだ。そして今も新しい犠牲者を求めて、あの貼り紙は人々を誘い続けている。
「あなたも、無限の恵方巻きをいかがですか?」