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エルフィンストーン王国が長きに渡る領土争いを終え、隣国のアルトドルファー王国との調印式に至ったのは、三年前の初夏だった。
両国とも王都は国の中ほどにあり、領土争いの原因となったのは、それぞれの南端と北端にある川だ。
ただの川なら問題ないが、その川で砂金が採れると言えば両者とも譲れない。
十年以上続いたその争いは、エルフィンストーン王国の王女が嫁ぐ事により解決した。
和平の条件として、エルフィンストーン王国の関税を低くする事、その他にも色々とアルトドルファー王国に配慮する事を求められ、それに応じる形となった。
場合によってはもっと戦争が続いた可能性はある。
しかし川辺に住む民が両国にとっての悩みの種で、アルトドルファー王国から砂金を採るために使わされた者が、侵略行為ととった彼らによって攻撃される事件が続いた。
彼らは自らをエルフィンストーン王国の民と自称しているので、やられたからにはアルトドルファー王国も仕返しをしなければならない。
だがアルトドルファー王国は王位継承権争いで内乱が起こりかけ、王都がピリついているのに辺境の地に軍を派遣する訳にいかなかった。
川辺の民に軍が攻撃すれば、エルフィンストーン王国の軍が正式に応酬してくる。
そのやり取りが続いたあと、疲弊仕切ったアルトドルファー王国は、エルフィンストーン王国の姫を迎える事で争いの終止符を打った。
政略結婚をする事により、「貴国の大切な姫君を迎えるので、我が国には攻撃しないでほしい」という意思表示だ。
何より〝不死の軍団〟と呼ばれて恐れられる、〝死神元帥ギルフォード〟率いる強力な軍を敵に回すのは、もうこりごりだったからだ。
調印式は、エルフィンストーン王国の王都で行われた。
アルトドルファー王国の王族や貴族たちは貴賓として迎えられ、王都には両国の国旗が交互に掲げられている。
王宮の敷地内にある十月堂が調印式の場となり、両国の王侯貴族が身守るなか、国王たちがサインをする手はずとなっていた。
十月堂は、豊穣の女神を祭るための記念館だ。
円形になった建物のすり鉢状になったベンチに参列客が座り、中央のステージで両国の国王が挨拶を交わす。
そして立会人となる司教が、誓約書を読み上げようとした時――。
「アルトドルファー王国に栄光あれ!」
突如として男の大きな声がしたと思うと、ステージを取り囲んでいる騎士たちの間から、一人が剣を抜いて躍り出た。
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