テラーノベル
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少しの間、路地裏に沈黙が流れた。私の涙が止まらないまま、佐野くんの胸に顔を埋めている。
彼の温もりが、優しく包み込んでくれる。
「佐野くん、ありがとう……!私、佐野くんのこと好き、愛してる。私、高橋さんとあったことがずっと忘れられなくて……。佐野くんと近づいたら、誰かを傷つけてしまうんだとか、佐野くんを悲しませたとか思っちゃって、佐野くんから離れようとしてた」
『先輩……気づかへんくてごめんなさい。』
佐野くんの声が、少し震えていた。
いつもドSで強気な彼が、こんなに優しくて弱々しい。
「佐野くんは悪くないよ。さすがに仕事場に戻ることはできない、辞めちゃったし。今の職場だってあるし……。だから、ごめんね。そっちには戻れないや」
『じゃあ、俺がこっちに来ます!』
「えっ?」
私は顔を上げて、佐野くんを見た。
彼の瞳は、真剣で輝いている。
『だって、ずっと先輩と居たいやもん。ずっと先輩のこと見てたい……』
「……」
胸が熱くなった。
『先輩だって、俺が居た方が嬉しいやろ?』
「そりゃそうだけど……。そんな簡単に辞めれないでしょ。佐野くん、あの会社に来てまだそんなに経ってないし……」
私がそう言うと、佐野くんは少し黙り込んだ。
黒髪の前髪が影を作って、考え込む表情。
少し沈黙が流れた後、佐野くんが顔を上げ、真剣な目で私を見つめた。
『先輩、待っててください!俺、今の仕事場で立派になってから、こっちに来ます!』
そう言って、佐野くんは私に抱きついた。
180cmの長身が、私をすっぽり包み込む。
そして、優しく唇を重ねてきた。
甘い、温かなキス。
『充電です!先輩、会えない間メールしてもええ?』
「うん、いいよ!待ってる!」
私は涙を拭いて、笑顔で答えた。
私と佐野くんは、また連絡先を交換した
佐野くんも、いつものワンコみたいな笑顔に戻っていた。
この約束が、私たちの新しい始まりになる。
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