創作小説
桃×赤
ある日の蒸し暑い夏の夜
祭りだからと騒ぐ人の声が
少し耳障りで目を細める
横を覗けば友達
本当は他に来たい人がいたけれども、
そんなこと言ったら可哀想なので言わない
花火大会だし好きな人と偶然会う
なーんて主人公みたいなことあったらいいのに
ぁーあ人生脇役つらーーー
「赤なんか顔怖いぞー?笑笑」
赤 「うるっさい、」
「ひー笑笑こわーー笑笑」
いつもは茶化してくれるとうれしいのに
今日はそれすらもうざったらしく思ってしまう
「間もなく開始致します」
「今しばらくお待ちください」
暑さを遮るような淡々と告げる声
声音とは裏腹に周りはさらにざわつく
横で盛り上がってる友達を横目に
早く帰りたいなーなんて
到底この場の雰囲気には合わないことを思う
桃 「あれ、赤じゃん」
赤 「ぇ、」
弾けるようなきれいな声が耳を突き刺す
この声を聞けただけでも
来た甲斐があるなんて思ってしまう
うれしさで頬が熱くなる
周りの熱気とこの感情で熱をだしそう
赤 「…..、一人なの?」
開口一番がこれで流石に自分でもドン引きする
もっと他にましなことあっただろ
と数秒前の自分を恨む
桃 「あーそれがさー」
桃 「急に友達がドタキャンしてきてさー?笑」
桃 「ひとり寂しくエンジョイしてた訳」
赤 「えーまじー?笑」
俺なら風邪引いても車に轢かれても
なにがなんでも絶対行くのに
、そのくらい行きたいのに
赤 「ぁの、さ、」
桃 「ん?」
見つめてくる目が愛おしくてたまらない
心臓の鼓動が速くなるのを自覚する
勇気をだせと自分を奮いあげる
赤 「、ぇ、っと」
赤 「花火、一緒に見ない?」
声を発したと同時に
上空で炎の美しい花が咲く
周りは歓声で包まれ
その場にいる全員が魅せられる
桃 「見て!!ほら超きれい!!」
手を引っ張られ、彼が指を指した方向を見る
正直花火よりもこの状況がやばい
主人公になった気分でいたたまれなくなる
今絶対すごい顔してる、
と自覚し、ちらっと横に目をやる
桃 「わぁ 、っ… 、」
花火に目を奪われてる彼
目は眩しいほどに輝いていて
花火に照らされてる横顔が麗しい
赤 「、きれい… 」
俺の声は花火の音で掻き消され
一発花火が上がる度に周りで歓声がわき
横にいる彼もその声の一端になる
その中でひとり彼に夢中になってる俺
本当に漫画の登場人物みたい
自惚れて浮かれて、
そして彼に魅せられて。
そんなことをしてたらあっという間に時間が経ってしまった。
でももし
桃 「ねー赤ー」
赤 「んー?」
桃 「りんご飴たべないー?」
赤 「たべる」
桃 「よし決まりいくぞ」
もし本当に物語の登場人物だとしたら
桃 「え、ちょっとまって」
桃 「ちょー並んでるんですけど!!?」
この主人公の恋人ポジがいいな
赤 「、なーんてね」
小さく呟いた俺の声は
騒がしい夜の中に呑まれ、
誰にも聞かれることなく散った。
赤 「まーそりゃこんなに人多いからね笑」
桃 「えーどうしようちがうとこいく?」
赤 「どこでもいいよー」
桃 「いや、やっぱりんご飴でしょ」
赤 「どっちなの笑笑」
もう埋まってるポジションを狙うほど
俺は馬鹿じゃない。
コメント
2件
んわ、すごい。。 書き方が上手すぎます。。 もう埋まってるってことは好きな人にはもう恋人がいるってことなんですかね、、一番辛い、、 解釈違かったらすみません!、